20 一日目 夜の襲撃
襲撃は真夜中に行われる。『人狼』の二人が生き残っている場合は、両者が話し合って、午後十一時までに襲撃するプレイヤーをゲームマスターに報告する決まりになっている。監禁されているので直接会うことはできないが、パソコンでの通話が可能だ。
また、『人狼』の一人が昼の会議で追放されていた場合は独断での指名となる。一人であっても報告する期限は変わらない。
襲撃を希望する『市民』が『騎士』によって阻止される場合があるが、翌日の会議が開かれるまで結果を知ることはできない。それはルール・ブックに記載されているので、すべてのプレイヤーが自然なリアクションをすることが可能である。
同じ時間、『占い師』はプレイヤーの中から一人を指名すると、その日の内にゲームマスターから正体を教えてもらえることになっている。今回は『裏切り者』が存在しないため、敵、味方をハッキリと知ることができる。
また、すでに昼の会議で『占い師』が追放されたとしても、別のプレイヤーに能力が引き継がれることはない。よって市民チームは『占い師』不在のまま最後まで戦わなければならないというわけだ。
同じ時間、『騎士』は『人狼』の襲撃を予想して、自分以外のプレイヤーの中から一人だけ守ることができる。今回は『霊媒師』が存在しないため、守るのは『占い師』が最善手だが、『人狼』を守ることがあるので簡単ではない。
また、すでに昼の会議で『騎士』が追放されていた場合、市民チームはノーガードで襲撃を受けることになる。カミングアウトするメリットのない役職なので、ゲーム中に『騎士』が暴かれるのは極めて稀であり、最後まで判らないまま終えるのがほとんどだ。
* * *
「思ってたのと違うな」
ラブホテルのスタッフルームで監視カメラの映像を見ながら、椅子に座り、足をテーブルの上に投げ出しながら、初日の感想を語る狼男二人の姿があった。否定的な評価を下す黒狼男に対して、白狼男は肯定的に捉える。
「前回よりはマシだろう」
「まあな」
二人にとってリアル人狼ゲームは初めてではなかった。
「前回のは、そもそも『人狼ゲーム』じゃなかった」
「あれじゃあ『村長ゲーム』だもんな」
前回の反省を活かして今回のゲームが行われたようである。
「今回集めた奴らは、ちゃんと吊ってくれるから最高だよ」
「サイテーの、サイコーな」
「ハハッ」
「命が軽い軽い」
二人とも表情は真顔だが、声の感じは上機嫌であった。
「人選はベストだったわけだ」
「それは認める」
「あとは会議の内容か?」
「俺はゲームの駆け引きが見たいんだよ」
主催者二人以外に観客は存在しない。
「最初はどうかと思ったが、最後は『人狼ゲーム』っぽくなかったか?」
「明日どうなるかだな」
「楽しませてくれるといいんだが」
「みんな人殺しなんだから本領を発揮してもらいたいもんだ」
こうして初日の夜が明けるのだった。