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最終話 私たちの町・繋ぐ

○高校(数ヶ月後)


   まだ雪が残る3月の函館。

   小さな桜の蕾に唯一春の気配。

   体育館から生徒達の歌声が聞こえる。


○同・体育館


   卒業式が行われている。

   卒業生の中にいる詩歌と茜。目にはうっすらと涙。

   そして一華。一華の目も潤んでいる。


○函館山・漁火公園


バイトの声「函館名物、塩辛バーガーいかがっすかー。新メニューもありまーす」


   バイトしているのは知らない誰か。


   展望台のベンチに座っている一華。

   ぼーっと一人で景色を眺めている。


蒼志「一華ぁー」

一華「(振り返る)」

蒼志「ほい。卒業祝い」


   私服姿の蒼志。買って来たクレープを差し出す。


一華「ありがとー(笑)」


   大きな口を開け、いざ食べようとして思わず止まる。


一華「(周りを警戒)」

蒼志「どうした?」

一華「ううん(首を降る)」


   鳴らないサイレン。安心してクレープに齧り付く。


一華「…………」


   ニコニコしていた一華の顔が急に歪む。


一華「なにコレ……?」

蒼志「ああ、コレな。俺が最後に考えた新メニュー。どうだ?うめえだろ?」


   バッと売店を見る一華。

   『今度は絶対騙しません!新メニュー・塩辛クレープ!』の文字。


   チューっとストローに吸い付いてジュースを飲む一華。


蒼志「あれ?何かマズかった?」

一華「そーし!!!」


   やいのやいのとやりあって。


   あっという間に塩辛クレープをたいらげる蒼志。

   立ち上がって柵にもたれ掛かる。


蒼志「あれから本当に出なくなったんだな」

一華「うん」


   しみじみと町を眺めている蒼志。


一華「そういえば知ってる?あの土偶さん」

蒼志「ああ。新しい観光名所になってるってな」


    ×     ×     ×


   五稜郭。土偶の前にたくさんの観光客がいる。


    ×     ×     ×


一華「怪獣もさ、あんなに暴れたのに、ほとんど壊されたトコなかったんだって」

蒼志「啄三さんやみんなのおかげだ。本当すげえよ、あの人達」


    ×     ×     ×


   漁港を訪れる退院後の蒼志。

   啄三や漁師達から荒い歓迎を受ける。


    ×     ×     ×


一華「でもさ、あの時よく気づいたよね?」

蒼志「ん?」

一華「ほら、ビームしろって言い出した時」

蒼志「ああ。元から能力受け継ぐ方法はあるって話だったからな。それで気づいたんだ。土偶が反応しないのは一番大切な物が欠けてたからだって。器だけじゃダメだった。最後のパーツが必要なんだって」

一華「……」

蒼志「それが人の心だった。覚悟を持った人間の、その心が必要だったんだ」

一華「けどさ、それなら壁画にも残しといて欲しかったよね?」

蒼志「まーな。けど残すっつってもどうやって残すんだって話だけどな」

一華「?」

蒼志「だって、心は描けねーだろ?それに言われてやっても意味ねえよ。自分で気づかねえとさ」

一華「そっか。そうだね」

蒼志「俺もさ、あの時の一華を見て、それに気づかされたんだ」


    ×     ×     ×


   怪獣と対峙する一華の背中 (フラッシュ)


    ×     ×     ×


一華「でも、何で私じゃダメだったのかな?」


   少し蒼志の目が鋭くなる。


蒼志「あの方法考えたのはビームだせる奴じゃねえ。それを見てた違う誰かだ。頼り切りになってたのを、どうにかしようって考えた別の誰か。だから一華じゃダメだったんだ」

一華「そっか。そういう事だったんだ……」

蒼志「昔はみんなで倒してた。みんなでやれば完全に倒せる。けど一人でも何とかなる。で、いつの間にか本当に一人だけになっちまった」

一華「……」

蒼志「何でそうなったかはわかんねえ。けど、それじゃダメだって、どうにかしようって思って、あの方法考えて壁画にして残したんだと思う」


   少し遠い目をして話す蒼志。

   一華も黙って聞いている。


蒼志「これは俺の想像なんだけどさ、それが(ひかり)家の祖先なんじゃねえかな?」

一華「ウソ?(驚き)」

蒼志「どうにかしようってあの方法考えて、能力受け継いで。それで壁画にして残した。けど、そっから代わりになろうとする奴は現れなかった……」

一華「……」

蒼志「お前の祖先は格好いい人だったと思うぜ」

一華「(少し微笑む)」

蒼志「でもようやくだ。この町が導いてくれた」


   町を眺める蒼志。そして一華を見る。


蒼志「待たせちまったな」

一華「……」


   嬉しいような寂しいような。

   そんな複雑な心情が一華の表情に漂っている。


蒼志「けど本当なら俺に能力移ってる筈なんだけどな。あれ以来ビームもでねえし……」


   自分の手を見ている蒼志。


蒼志「あの時だってさ、土偶に能力行ってるから、それで一華のビームも弱まってる筈だからさ。だから大丈夫だと思ったんだけどな」

一華「……」


    ×     ×     ×


   橋の上で蒼志を抱えたまま大泣きしてる一華。

   啄三達が駆け寄って来て必死に蒼志に呼びかける。


    ×     ×     ×


   思い出して少し目が潤んでいる一華。


蒼志「やっぱ俺じゃダメだったのかな……」

一華「(目元を拭って)そんな事ない。だって出せたじゃん?ビーム。それは、そーしにちゃんと心があったからでしょ?あれが最後だから、もう出る必要がないだけだよ」

蒼志「そっか。そうだな」

一華「それに、あの時ほとんど休んでなかったでしょ?なのにビームなんて受けるから……」

蒼志「まあ……(気まずい)」

一華「もう、あんな無茶な事しないで」

蒼志「……おう。わかった」


   ちょっとしんみり。


   話題を変えようと、少し声のトーンを上げて話す蒼志。


蒼志「そういや今月だろ?引っ越すの」

一華「うん」

蒼志「楽しみか札幌?」

一華「まーね」


   蒼志が提げているバッグに『北大』と書かれた冊子が見える。


一華「そーしも、ようやくだね?」

蒼志「俺は別に…」

一華「(笑ってる)」

蒼志「けど、本当ようやくだ。ようやくこの町から解放されんだな」

一華「うん」


   一華も立ち上がる。そして町を見る。


一華「でも、帰って来るよ」

蒼志「?」

一華「私が守ってきた町だもん。これからも私が守る」

蒼志「(微笑む)」

一華「って言っても、さすがにもう一人じゃ無理だけどねー」

蒼志「だな」


   2人して笑う。

   一華は体を正すと蒼志の方を向く。


一華「蒼志」

蒼志「ん?」

一華「ありがとう」


   しっかりと頭を下げる一華。


蒼志「バカ。礼言うのはこっちだよ」

一華「(笑ってる)」


   照れ合う2人。


   そして、


蒼志「じゃあ、行くか」


   手を差し出す蒼志。


一華「え?なに?」

蒼志「だって、もうビームでねーんだろ?」

一華「そうだけど…」

蒼志「いいから」


   一華の手を握る蒼志。照れて嫌がっている一華。

   冬服のコートの袖から手首に巻いたリボンが見える。


   歩いて行く2人の背景に見える函館の町。

   穏やかな空と町並。




   しっかりと繋がれた手。




    ——— おわり ———




   (大団円のエンドロールへ…)


これにて完結です。


映画として意識して書いた事、また小説の文体に不慣れな為、シナリオ形式での記載となりました。

読みにくさもあったかと思いますが、ご了承下さい。


ラストについてですが、本当に映画にするのなら最後は一華と蒼志だけでなく、町の人を絡めた大団円で締めくくりたいと思っています。


最後になりましたが、最後まで読んで頂いた方、チラ見して頂いた方、

小説投稿サイトにシナリオをぶっ込むという愚行にも関わらず、お読み頂けた事は感謝でしかありません。

よければご感想など頂けると嬉しいです。


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!

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