幼女大魔王の暇つぶしに付き合う黒執事は、今日も世界を制御(コントロール)する 〜日常コメディ〜
「なあ、セバス? 暇なのじゃ……」
「そうですか。では、ヴィヴィ様の代わりに処理している書類をお渡ししましょうか?」
セバスと呼ばれた青年の容姿で青い瞳を持つ悪魔は、長い髪をかき上げながら答える。それを聞いた幼女の容姿で紅い瞳をもつ大魔王と呼ばれる存在は、ツインテールの髪をブンブンと横に振りながら顔を青くして言い返す。
「そ、それはセバスの仕事じゃ! 余は遊びたいのじゃ! 」
「ヴィヴィ様は馬鹿ですか? 本来はヴィヴィ様がする仕事を執事の私がやっているのですよ?」
セバスが答えた瞬間、ヴィヴィの背中にある漆黒の翼が広がり、呼吸ができない程の威圧が城中に蔓延する。魔王の間の外ではバタバタと何かが倒れる音が聞こえてくるが、セバスは平然な様子で角をポリポリと掻きながら話し出す。
「遊べないからと怒り狂うのですか? ヴィヴィ様は1017歳ですよね? いい加減に大人になりませんか?」
「馬鹿って言った奴が馬鹿なのじゃ!」
ヴィヴィの目から涙が溢れる。翼が畳まれたことで威圧は収まったが、ヴィヴィは肩を震わせながら直立不動で手をギュッとしている。セバスは書類を読みながらヴィヴィに話しかける。
「仕方ありませんね……西方でゲームをしているようですよ? 陣取りゲームですが参加しますか?」
「本当か? ゲームに参加するのじゃ! セバスは優しいのじゃ! 今から行ってくる!」
ヴィヴィは再び漆黒の翼を広げ、ベランダから羽ばたいてゆく。セバスは眼鏡を指で正しながら周りに話しかけた。
「ヴィヴィ様が殺しすぎないように相手を守りなさい。相手が戦意を失くしたら直ぐに降伏宣言を促すのです。絶対の服従を誓わせなさい」
◇
セバスは隣でご機嫌に意味不明な踊りを踊っているヴィヴィを横目に報告書を読む。
「リザード族とオーク族が人間に騙されてお互いに戦う寸前でヴィヴィ様が介入。両陣営の族長が瞬殺され魔王軍に降伏と……」
その時、セバスに連絡用の蝙蝠が飛んでくる。セバスは報告書に天使軍団が陣を展開している内容を確認しながら、ため息をつく。そしてセバスはヴィヴィの傍に行き、話を切り出した。
「北方でお祭りをやっているみたいですよ。喧嘩祭りですがヴィヴィ様も参加しますか?」
「お祭り? 遊んできていいのか? セバスはとても優しいのじゃ!」
ヴィヴィは喜々として漆黒の翼を広げ飛び立っていった。セバスは紅茶をカップに入れると、それを飲み干し一言呟いた。
「今日も世界は平和ですね」