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86.着物ドレス作成

 鶴ちゃんが期限通りに作ってくれた着物生地を持って、リトモの防具屋さんへと向かう。


 ピッポーン! 『着物ドレスの条件をクリアしました。関連アイテムが解放されました』


 入った途端にアナウンスが流れた。これで簪とかも作って貰えるようになったのね。


「らっしゃい。良い物を持って来たじゃねぇか」

「はい! よろしくお願いします」

「おう、まかせとけ。頭から足先まで一式作るか?」

「はい」


 形や色などを説明し、細かいことを詰めていく。


「草履かブーツ、どちらにする?」

「そうですね……動きやすいブーツでお願いします。色は白がいいかな」

「おう。それでいこうぜ」


 そういえばと、煌来様に貰った三色真珠が使えないかなと取り出してみる。


「これって使えますか?」


「こりゃ良い物だな。こういうのを扱うなら、俺より嫁さんの方が得意だから、隣の店で頼んだ方がいい」


「そうなんですね。この後に頼んでみます」


 リトモさんの方で決める事は終わり、ブルネさんの方に向かう。色々とアドバイスして貰えて良い物が出来そうだ。


「こんにちは」

「はーい、いらっしゃい」

「あっ、タケノコ君達だ~」


 トトちゃんが走り寄って来て、タケちゃんに抱き付く。


「こら、トト。先に挨拶でしょうが」

「あっ、ごめんなさい! いらっしゃいませ、こんにちは」


 恥ずかしそうにしながら上目遣いで挨拶された。うぅ、可愛過ぎだよ~。思わず頭を撫でてしまった。


「今日はどうしたんだい?」

「これでアクセサリを作って欲しいんです」


 三色真珠を見せると、目がキラリと光る。


「良い物を持って来たね。作りたい物はもう決まっているのかい?」

「帯飾りをと思っているんですけど」

「それはいいね。簪はどういうデザインで作るんだい?」


「簪も真珠とラインストーンとかを使って作るんです。デザインは桜で統一しているんですよ」


「成程ね。じゃあ、帯飾りも桜の花がいいね」


 着物のデザインなども話し、金で作って貰う事にした。


「これなら一日あれば作れるけど、旦那の方とまとめて取りに来るかい?」

「はい、そうさせて下さい」


 リトモさんは一週間以内に作るって言っていたんだよね。見積もりは10,000タム位とのこと。思っていたより全然安い。アクセサリも金の部分の値段だけなので、安く済みそうだ。素材持ち込みだから、これぐらいで済むんだとお二人共が言っていた。





 遊楽の町に戻ると、以前作り方が分かったら教えて欲しいと言っていたプレイヤーさんを探す。えーと、女性の防具屋さんは確かこの辺に……居た!


 東の街道の方へ行く途中にある店へと向かう。地面にシートを敷いただけの簡易なお店だ。


「こんにちは」

「いらっしゃいませ~。あれ? この前、着物ドレスの事で来た子だよね?」


「あ、覚えていてくれたんですね。私、作り方が分かったのでお伝えしに来ました」


「ええーーーっ、ほ、本当⁉ 凄い! 凄いよ!」


 大きな声で叫ぶと、私の手を握ってピョンピョン飛び跳ねている。それにつられて、周りの店の女性プレイヤーさんも集まって来た。


「どうしたの、急に叫んで」


 ハッとした顔をした女性は、急に声を潜めて話し出す。


「そ、それがね! 着物ドレスの作り方が分かったんだって!」

「嘘っ⁉ マジで?」

「大マジ! この子が見つけてくれたんだって」


 輪になってひそひそ声で話していた人が一斉に私を見るので、たじろいでしまう。し、視線が痛い。


 輪に引き込まれると、皆が頭を寄せてくる。


「情報料はちゃんと払うから教えてくれる?」


 素材やお金、お店の商品などを皆さんが見せてくれる。


「え、えっと、普通に教えますけど」

「それは駄目! これはとっても重要な情報なんだから。何が欲しい?」


 断れる感じではないので、食材や調味料が欲しいと言うと、次々とアイテムボックスから取り出される。


「わっ、多過ぎですよ!」

「こんなもんじゃ足りないわよ。ちょっと待って、買って来る」


 そう言って、何人か走り出して行く。どうしよう、なんか大事になっちゃったよ。


「――お待たせ。はい、これ全部受け取って」


 譲渡申請されたリストを見て目を見開く。これ、何万タム分⁉


「こ、これは流石に受け取れませんよ」

「駄目よ。多く見えるかもしれないけど、ここに居る全員分だから」


 皆さんが一斉に頷いて、どうぞどうぞと手で示して来る。どの人も断ることを許さない目で見て来る。うぅ、分かりましたよ、受け取ります……。


「ありがとうございます……」

「ええ。じゃあ、早速教えてくれる?」


 尊き宮でセン様に会った所から初めて、必要なSAなどを話していく。


「成程ね。必要なSAは『日本の伝統』だった訳だ。1000SAPも必要だから、中々手を出せなかったんだよね」


「あちゃー、私、全然違う方から攻めてたわ」

「私も。染色とか織物とか色々取ったわよ」


 私が取るか悩んでいたものを既に取っていたのね。


「今日、生地を持って防具屋さんに行ったら、『着物ドレスの条件をクリアしました。関連アイテムが解放されました』ってアナウンスがあったんです。なので、防具屋さんの皆さんは、生地を作れた時点で、簪や草履などのレシピを手に入れられるんじゃないでしょうか」


「いいわねぇ。それを楽しみにSAP集め頑張るわ!」

「私も。レベル上げ頑張らなくちゃ」


 レベルが上がる度にSAPが貰えるもんね。後は依頼を受けるとかして、地道に稼ぐしかないよね。


「お菊ちゃんはどんなデザインにしたの?」

「私は桜柄で、下はミニスカートに見える袴にしました」


「あっ、それいいわね。戦闘とか作業するにはズボンタイプの方が動きやすいものね」


「そうなんですよね。皆さんはどういう感じにするんですか?」


 ミニスカート、ひざ丈、袴と好みが別れる。ミニスカートで大丈夫なのかと尋ねたら、スカートの中は見えないように、システム上でなっているから平気なのだと教えられてびっくり。


「そうじゃなきゃ、アクション出来ないじゃない? お菊ちゃんも今度作る時はミニスカートにしてみたら?」


 それならと頷く。気にしていた問題が解決した。プレイヤーさんと色々と話すの大事よね。


 その後も少しお話をしてから別れる。鶴ちゃん達が言っていた図柄を探しに行こうと思っていたのだ。取り敢えず、本屋さんかな?


「いらっしゃいませ」

「こんにちは」


 店員さんに挨拶して図柄を探す。画集などがあるコーナーへと行くと、『着物の図柄1』というのを発見した。開くと、『松竹梅』、『毬』、『組紐』、『御所車』などが載っている。鶴ちゃん達が見せてくれた以外の図柄が沢山載っているので、これでいいかな。値段は2000タムか。思っていたよりは安くて良かった。


「これを下さい」

「はい、かしこまりました」


 受け取って、尊き宮の境内にある椅子に座り、『日本の伝統』を開く。


「鶴ちゃん、新しい図柄だよ」

「ひゃっほーい!」


 歓声を上げながら鶴ちゃん達が集まって来る。相変わらずテンションが高い。


「わーい、これで新しい物が作れる。お菊ちゃん、ありがとう~」

「どういたしまして」

「これ、お礼」


 黄緑色のとんぼ玉の簪を貰ってしまった。わぁ、綺麗。


「また図柄を見付けたら買って来てね」

「任せて」

「いいね、よろしく」


 急に後ろから声が聞こえて振り向くと、センちゃんが立っていた。


「あっ、親分!」

「親分、お久し振りです!」

「久し振り。頑張っているようだね」

「はい!」


 微笑ましい会話を見守っていると、センちゃんがくるっと振り向く。な、何かを期待している目をしている。な、なんだろう?


「こんにちは、お菊」

「こ、こんにちは、センちゃん」


 そう言うと嬉しそうに何度も頷く。どうやら、『ちゃん』呼びで正解だったらしい。前にキヨちゃんと同じように接して欲しいって言っていたものね。


「図柄を見た? これ、色々と意味があるんだよ」

「え、そうなの?」

「そう。例えば、『桜』は五穀豊穣や新しい門出を祝うっていう意味がある」


 へぇ。知らずに選んでいたけど、新しい門出だなんて、このゲームを始めた私にはぴったりじゃない?


「『組紐』は魔除け。『亀甲文様』は長寿。『橘』は子孫繁栄とかね。そういうのを知って選ぶのも、また楽しいと思わない?」


「うん、いいと思う。センちゃんはどの柄が好きなの?」


「僕は『青海波』っていう、無限に広がる波を現す扇状の同心円の図柄だね。未来永劫に平穏で幸せな暮らしが続くようにって願いが込められているんだよ。皆がそうであるようにという僕の願いとも合致している」


「綺麗なだけじゃなく、素敵な願いが込められているんだね」


 さすが御眷属。人々の事を考えているのね。


「図柄は本屋だけじゃなく、骨董屋や図書館とかの施設にもあるから探してみて。僕はそろそろ行くよ。またね、弟子達、お菊」


「うん。またね、センちゃん」

「親分、お待ちしてまーす」


 鶴ちゃん達が小さな手羽根を振っていて可愛い。一方、センちゃんは大きな翼をバッサンバッサン振っていて豪快だ。


 この後、久遠様をお参りしたら、またセンちゃんの事で声を掛けられて、びっくりした。自分の御眷属のこともよく見ているのね。因みに、久遠様の好きな図柄は『七宝亀甲』で、絶える事のない永遠の連鎖と拡大を意味するらしい。難しくて首を傾げたら、「人間関係が円満にいくようにという事だ」と説明してくれた。勉強になります。


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