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84.工場見学

 着物の生地を作って貰うのに必要な素材は全て集まったし、その過程でレベルアップをして目標のLV20になる事が出来た。


 日本の伝統を開くと、鶴の雛ちゃん達が期待でキラキラした目で待っていた。


「お、お待たせ」

「集められたの⁉」

「うん、ばっちり」

「きゃっほーい‼ 初仕事だ~!」


 あまりの興奮振りに若干引いて見ていると、その興奮が他の子にも移って、画面中で雛達が飛び跳ねてダンス会場みたいになっている。


「おやおや、お祭り状態ですね」

「パールさん! これ何とか出来る?」

「もう少しすれば落ち着くでしょう。ぜーはー言い始めていますし」


 超冷静。確かに息切れし始めている子が居る。暫し待ちです。


「担当は僕だよ~。まず色は何がいーい?」

「どうしようかな。何色が似合いそう?」

「うーん、桃色か白とか?」

「目が若葉色ですから、その系統の色でも合いそうですよね」


 どっちもいいなと悩んでいると、先に図案選ぶ? と提案された。


「そうだね。桜がいいかなと思っているんだけど」

「ふんふん。形はどうするの?」


「上は振袖みたいにちょっと長めの袖で、下はミニスカートみたいに見える袴がいいな」


 タケちゃんに乗ったり、預モンで立ったり座ったり結構するから、スカートは向かないなぁと最近気付いたんだよね。私的には、ミニスカートみたいに見えるので十分に目的達成だ。また、別の機会にしようと思う。


「上下別タイプがいいんだね。下は臙脂色でちょっと刺繍を入れるか、シンプルに無地袴を作って、上だけ柄を入れるのが僕のお薦めかな~」


 派手過ぎないのがいいから、そうしようかな。


「上の色は生成りでお願い出来る?」

「了解! 四日掛かるけど大丈夫?」

「うん。急いでないから大丈夫だよ」

「じゃあ、早速作業に入るね~」


 素材を受け取ると、急いで走って画面外へ消えてしまった。気合が入っているなぁ。


「生地が出来たら防具屋へ持って行くのでしたか?」

「そう。草履とか髪飾りとか一式揃えるから、幾らかかるかドキドキだよ」

「新たな素材も必要かもしれませんね」

「あー、その可能性もあるよね。まだ道は長いかな?」


「そうかもしれませんね。ですが、最近装備を新しくされたばかりですから、そんなに急ぐ必要もありませんよ」


「それもそっか。のんびりいこう」

「はい」


 そうして、パールさんと話していると、後ろから声を掛けられる。


「あぁ、お菊、ここにいたか」

「あ、マハロさん。どうされたんですか?」

「時間が出来たから、モン飯の工場を案内しようかと思ってな」

「やったー! ありがとうございます」

「遠いから、お菊はタケノコに乗ってけ。俺はトワイフルに乗って行く」

「はーい、了解です」

「いってらっしゃい」


 パールさんに見送られて、厩舎や寮があるスペースを通り抜け、広大な畑を突っ切って行く。


「わぁ、トウモロコシにトマトにキャベツと色々ありますね」

「ああ。モン飯に使う材料は全てこの敷地内で作っているからな」

「大豆畑が特に広いですよね」


「そうだな。モン飯の主な原料だし、大豆ミート、味噌、醤油などを作るのにも使う。後は余ったら市場で販売したりもするな」


「へぇ、ここの作物が他のお店でも使われているかもしれないんですね」

「そうだな。NPCの間じゃ美味いと評判なんだぞ」


 作業中の皆さんに手を振ったりしながら進んで行く。巨大農機を華麗に操っている人もいて、タケちゃんが物珍しそうに立ち止まって眺めたりする。


「トワイフルちゃんは見慣れちゃった?」

「ワフン」

「よく往復しているからな」


 私の身長位のタイヤが付いたトラクターを親指で示しながら、マハロさんが教えてくれる。


「他にもトウモロコシの畝を通るだけで、もいでくれる機械もある。そうだ、大豆収穫を見ていくか」


 暫く駆けて行くと、一面大豆畑が広がっている。そこに、でーんとあった巨大コンバインに付いたローラーみたいなのが回ると、大豆が刈られて枝葉は粉砕されて後ろに残されていく。そして、トラックがやって来ると、アームが伸びて、豆が荷台にザーと注ぎ込まれる。


「うわぁ、速い」

「だろう。これぐらいじゃないと間に合わん。人手も大量に必要になるしな」

「この辺もマハロさんが改善した事ですか」

「そうだな。皆、ヒーヒー言っていたからな」


 マハロさんの優しさがあちこちにあるのが預モンなのね。ほのぼのとした気持ちになりながら、タケちゃんの背に揺られて、モン飯の工場に着いた。


「中を見学するから作業服を着てくれな」

「はい」


 頭まですっぽり覆われたツナギを着てマスクをして、風を浴びてから工場の中に入って行く。


「モン飯は何種類もあるが、共通の生地があるんだ」


 ここでも巨大な攪拌機がゴウンゴウン言いながら生地を混ぜている。


「この後に野菜とか肉バージョンの材料を加えて更に混ぜていく」


 カボチャや人参のカラフルな粉が加えられて色が変わっていく。オレンジ色が綺麗。


「均一に混ざったら、これをペレット状にしていく」


 ひき肉を作る機械みたいなのがあり、生地が絞り出され、回転する刃が一定間隔で裁断していく。絞り口を変えれば色々な形状に変えられるらしい。


 ペレットを器に平らにならし、熱風の出る乾燥機に入れて冷ませば完成だそうだ。


「冷めたのを一粒食べてみろ」

「――お野菜のはほんのり甘いですね」

「だろ。大豆肉の方は旨味エキスとかを更に加えているから、かなり本物の肉に近い」


 そっちは前に食べた事があるけど、言われなければお肉としか思えないものだった。ただ、味付けが薄いので、人間には物足りない感じがする。


「こっちは袋詰め作業だな。これが倉庫にうず高く積まれているわけだ」


 いつも入る度に見上げて、ぽかーんと口が開いちゃうんだよね。


「預モンを見ているとゲームっていうより、私達の世界を思い出します」


「お菊の世界と似ている訳か。まぁ、こっちでは大体手作業だから、珍しいわな。だから、地下に造られた訳でもあるんだが」


 確かに現代的過ぎて、世界観が壊れそうだもんね。


「まっ、働いている人間が使いやすくて楽なのが一番だから、これで良しだ」


 うんうんと頷き、再びタケちゃん達に乗って厩舎の方に戻って行く。


「お帰りなさい。大きい工場だったでしょう」

「うん、凄かったよ。そう言えば、パールさんはモン飯を普段食べていないよね」

「私には少し味気なく感じましてね。料理も好きですから手作りしているんですよ」


「そうなんだよな。モン飯は八割位受け入れられて、パール伯爵みたいなのが一定数居るんだ。だから、調味料類や野菜などを少量、店に置いている」


 そっか。皆が食べてくれる訳じゃないんだ。今のところ、うちの子達は全員モン飯でも問題ないんだよね。


「主食は菓子が良いとか、フルーツや本物の肉じゃなきゃ嫌だなんていうモンスターが後の二割だな」


 そうなると、ご飯代が凄い事になりそう。そう言えば、ロイヤルハニーベアーちゃんはカヌレが好きだから、二割の方の可能性があるよね。私の懐事情は大丈夫かしら?


「ウェットフードを作るかって話も出たんだが、後の二割は好みが多岐に渡りすぎていてな。結局、やめた」


「モン飯が好物っていう子も居るんですか?」

「いや、普通どまりだな。モン飯が好物だったら、テイムが簡単過ぎるからな」


 あー、そうだよね。やっぱり、そんなに簡単に好物は見付からないようにしてあるか。


「おっと、もうこんな時間か。今度は別の場所を詳しく案内してやるからな。お疲れ」


「はい、お疲れ様でした」


 見学出来て楽しかったな。今度はトレーニング施設を詳しく見てみたいな。


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