80.コン太
『今日はアキプ島に行かず、コザ湖に行くよ』というハデス君の言葉に従いやって来ました、コザ湖! 最低幅1m位はありそうなウネウネの木の根が湖を覆っていて、チラチラと下の水が日の光で輝いているのが見える。マングローブを大木にしたような木は、上へと伸びている枝もうねりながら交差し、蔦が巻き付いている。
「中央の島へ向かうから付いて来てね」
ハデス君は私の手を取ると、一階層と言われている木の根の上をスタスタ歩き始める。幾ら太いとは言え、丸みで滑りそうでヒヤヒヤしている私の歩みが遅いので、距離が開いて腕がピンと張る。
「ごめん、怖かったね。横抱きしていこうか?」
「クー?」
亀きっちゃんも甲羅を開けて乗って行く? と首を傾げている。
「こ、これぐらい歩けるよ。でも、手を離さないでね」
ヘタレで申し訳ないけど、怖いものは怖いのだ。
「勿論。じゃあ、ゆっくり行こうか」
うんうんと亀きっちゃんとタケちゃんも頷いてくれる。なんて良い子達……。
今回は最短ルートを行くので、二階層の高い木の上に行く必要がないから、ずっと根の上。根と言っても、5m位の高さはあるのよね。二階層に登ったら眩暈がしそう……。
そんな所でも敵はやって来る。名前は『エーガナ』と言って、シマエナガが三又の槍を持った姿で、ちょっと可愛い。あの槍さえなければ愛でるのに……。
そんなに強くないから、サクサク戦闘は終わるけど、アクションパックの人はこんな悪い足場の上に、氷魔法を使うモンスターが多いので、滑って湖にドボーンと落ちる人が時々いる。ひゃ~、ターン制で良かった~と心底思いました。
そうこうしながら隣の木に繋がっている木の根をテクテク行くと、三叉路のように根が別れている。
「今回は真ん中を行くからね。入ったら即、ボス戦になるけど覚悟はいいかな?」
ニッコリと笑うハデス君を思わず二度見する。前から思っていたけど、ハデス君、ドッキリ好きよね⁉ 驚いたけれど、もう来ちゃったんだしと、皆で顔を見合わせて頷き合う。
「よし。では、行って参れ!」
「了解!」
中央には角度によって水色にも見える白い毛を纏った狐さんが見える。走り寄って行くと、いつものように視界が透明感のある黄色、赤色の順に変わっていき、『CAUTION!』と警告が出る。よしっ、頑張るぞ~!
引掻き、噛み付きが主な攻撃で、雷・風・水の魔法攻撃も撃ってくる。成程、ハデス君が言っていたモンスターはこの子かと思っていたら、麻痺攻撃まで! タケちゃんがしばらく動けなくなってしまった。私は状態異常無効だから、他の子の分まで頑張らなくては。
麻痺は2ターンで解けてくれたし、大きなダメージになったと思われる魔法攻撃も頻度が少ないので、思ったよりも苦戦せずにHPを減らしていけている。すると、行動選択肢の中にテイムの文字が。
「えっ、ボスもテイム出来るの?」
驚いたけれど、ハデス君の目的を考えると、この子をテイムさせたかったんだよね? じゃあ、ここはテイム一択でしょう。
画面の中で黄色の光にグルグル巻きにされていく狐さん。あぁ、何度見ても罪悪感が刺激される光景だなぁ。
『テイム成功です。モンスターの名前を入力して下さい』
「あー、そうだ名前。うーん、狐、狐、コンコンコンコン、コーン、コン……吉だと亀吉ちゃんと被るから、えーと、そうだ、コン太! コン太で決定!」
戦闘終了合図の猫踏んじゃったが流れて元の場所に戻ると、目の前には白い毛に血が滲んだ狐さんが。慌てて回復薬を出し、バシャバシャかけていく。よしっ、傷は消えた!
「あのね、お菊、狐の顔を見て」
「ん?」
ハデス君の申し訳なさそうな声に顔を上げると、傷は治ったものの、狐さんが物凄ぉぉぉく渋い顔をしていたのだった。ど、どうしたの⁉
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コン太
LV15
HP:6680 MP:198
攻撃力:51 魔力:51
防御力:51 魔法防御:51
スピード:82 命中:125
回避:41 運:41
_____________________
装備:
勾玉のピアス(水魔法無効)
_____________________
SA:
・雷魔法LV1 ・風魔法LV1 ・水魔法LV1
・麻痺攻撃LV1 ・毒攻撃LV1
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「ナダさん、コン太ちゃんです」
お菊ちゃんが新たなモンスターをテイムしてきた。最近ハデス様の丸投げが当たり前になってきてないか? まぁ、お菊ちゃんの役に立てるからいいけどね。
モンスター名は天狐で、体長はシッポまで含めると2m30cm位あり、右耳には勾玉の青いピアスをしている。オールラウンダーで攻撃力が高く、MPも多い。雷・風・水魔法、状態異常が得意。手の平サイズのチビ狐を大量に呼び出して使役する事も出来、おまけに空を駆ける事が出来る。狐型のモンスターの中では王のような存在だ。そんな俺が『コン太』。有り得ないだろうと目が語っている。
お菊ちゃんに説明してあげている間にも、ジト目で見つめ、不機嫌そうにシッポをビタンビタンと地面に叩き付けている。
「コン太ちゃん、お腹空いたミュ?」
「あっ、だから機嫌が悪いのね。好物は何?」
「……」
そっぽを向いて視線を向けもしない。これは一度調教した方がいいかな。ボスをテイムすると、こういう事がよくある。上級モンスターは気位が高い者が多いからな。テイム100だからといって、テイム後の状態が必ず良好とはいかないか。
「コンちゃんは狐さんだから、やっぱり油揚げかな? それともお肉とか?」
「……」
「コンちゃんて瞳が黄金色で綺麗だよね。毛もサラサラだし。ブラッシング楽しみだな」
「……」
お菊ちゃんは無視されている事に気付いているだろうに、優しい顔で普通に話し掛けている。どちらかというと、亀吉君が気付いて不機嫌になってきている。
「クー! クー!」
お菊ちゃんの様子を見ながら宥めていると、タケノコ君が人参片手に向かっていき、ズボッと天狐の口に突っ込む。
「美味しいミュよ~。イライラも飛んで行っちゃうのミュ」
「わっ、タケちゃん、喉に詰まったら危ないよ。コンちゃん、大丈夫?」
目を白黒させている天狐の口から、慌てて人参を抜き取り、背中を撫でてあげている。
「……何、優しくしてんだよ。無視したのに」
「あ、君も喋れる子だったんだね」
「いいから答えろ」
「普通にしているだけだよ。優しいと思うのなら、コンちゃんが優しい子だからだよ」
「俺は優しくなんかない! あと、コンちゃんとか言うな。変な名前付けやがって!」
「ごめんね。私のネーミングセンスがないばかりに……」
「そ、そこまで落ち込まなくても」
ははぁ、大体性格が掴めて来たぞ。ツンデレだな、この天狐。そうと分かったら、生温い目で見守ってしまう。
「ナダさん、付け直す事って出来ますか?」
「いや、一度付けると無理なんだよ。この前みたいに他の人に渡る時は変えられるんだけどね」
「そうですか。うぅ、ごめんねぇ」
お菊ちゃんが涙目で謝ると、物凄く狼狽えて視線があちこちに飛んでいる。
「い、いい。分かった。しょうがないからコン太で許してやる」
「あ、ありがとう、コンちゃ~ん」
お菊ちゃんが抱き付くと、更にあたふたしだすので、噴き出さないように必死だ。
「せめてコン太と呼べ」
「コンちゃんはコンちゃんミュ」
「うんうん。私もそう思う」
「俺がちゃんなんてガラかよ!」
「え~、可愛いよね~」
「ミュ~」
「くっそ~、この天然共め!」
「ぶふっ」
やばい、噴き出した。この後も何を言っても、のらりくらりと躱されて負け続け、『コンちゃん』呼びが確定していた。亀吉君が満足気に「クフン」と鼻をならす姿が可愛かった。
新たなモフモフは狐さんでした~。コン太ちゃん(笑)




