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76.歓迎会

 今日はトワイフルちゃんが一番乗りか。朝礼までモフモフを堪能しちゃおう。


「――以上だ。それと、今日はお菊の歓迎会をやるから、飲み屋に集合な」

「うっし! 飲むぞ~」

「超楽しみ~」

「そこの双子、気を引き締めろよ。怪我したら歓迎会は出られないからな」


「「は、はい!」」


 仲良くスキップしていたお兄さん達がピタッと動きを止めて、お互いの服を直し合い、兵士さんの行進のように足並みを合わせて歩き出す。さすが息が合っているなぁ、お見事。


「トワイフルは留守番だから、先に美味い物をやろう」

「ワフッ」


 マハロさんが袋から取り出したシュークリームを、トワイフルちゃんの口の中にポンと入れる。


「ほれ、もう一つ」

「ワウ」


 最後のシュークリームをマハロさんが出そうとすると、首を横に振って袋を銜え、私に差し出して来る。


「どうしたの?」

「ワフッ!」

「あげるって言ってるミュ」

「え?」

「はははっ、歓迎の印だってよ」

「ワフッ」

「トワイフルちゃん……ありがとうね」


 首に抱き付いて顔を埋める。皆と出会えたのはトワイフルちゃんがきっかけだ。勤め出してからも、気に掛けて優しくしてくれた。本当に感謝してます。



☆= ☆= ☆=



 ロイヤルハニーベアーちゃんにカヌレをあげて、とんぼ帰り。テイムした子も小さくなれば大丈夫だというので、亀きっちゃん達も一緒にお店へ。他のお客さんも居るかと思ったら、貸し切りになっていた。


「よし、全員揃ったから始めるぞ。お菊、前にも言ったが、改めて。預モンへようこそ」


『お菊ちゃん、来てくれてありがとう!』


 声を揃えて言ってくれた皆の笑顔が優しくて眩しくて。胸に広がる温かい感情を感じながら私も返す。


「私を受け入れてくれてありがとうございます。皆さん大好きです」

「うはっ、照れる!」


 サムさんが両手で顔を隠してしまった。そんな姿を見せられると、私もちょっと照れます。


「あはは、サム、耳真っ赤~。お菊ちゃん、俺も大好きだよ~」

「双子はちょっと黙ろうか」


「「うわっ、心狭っ!」」


「……はっはっは。何だって?」


 ナダさんが黒い笑顔でアイアンクロー。


「「いでっ⁉ いだだだっ!」」


 今日は歓迎会だからと、ケン君とトッドさんが宥めている。いつもの光景だな~。


「まったく騒がしい奴等だ。こんな感じの俺達だが、これからもよろしくな」


 マハロさんが私の頭をくしゃくしゃっと撫でてから、コップを渡してくれる。


「ほら、お前ら乾杯するぞ。――全員持ったか? よし、乾杯!」


 マハロさんの音頭に合わせて、全員でコップをコツンとぶつけ合う。


「――ゴク、ゴクッゴクッ。っはぁー! ビールうまーい!」

「良い飲みっぷりじゃん、兄弟。つまみも来たよ」


 さっきまで痛がっていたのに、相変わらず双子のお兄さんの回復力が凄いと思いながら、飲み物を注いであげる。


 サムさんは下戸だそうで、オレンジジュース。私とお揃いだ。


「お菊ちゃん、唐揚げも来たよ。これ好物だって言っていたよね?」

「はい! ――んーっ! サクサクジューシーです!」


 あぁ、素敵なお味……。ほっぺたを押さえて締まりなく笑ってしまう。


「ここにして正解だったな。この店の唐揚げが一番おすすめだ」


「あぁ、だからこの店にしたのか。いつもの店の方が、酒が豊富だから不思議に思っていたんだ」


 マハロさんがお店を選んでくれたんだよね。お酒好きなトッドさんには、ちょっと不満だったかな?


「ここは炭酸系のお酒がいっぱいあるみたいですよ。普段選ばないのを試してみるのもいいんじゃありませんか?」


「へぇ、面白そうじゃねぇか。どれが一番、唐揚げに合うか試してみるか」


 ナダさんの提案で、トッドさん達はメニュー表をじっくりと見ている。


「ケン君の好きなおつまみは何?」

「僕はチーズとか果物が好きです」

「そうなんだ。白ワインも頼む? ワインもいっぱいあるみたいだよ」


 ドライフルーツを齧るケン君が「ん?」と首を傾げる。


「これ、ブドウジュースなんです。僕、お酒は苦手で」

「あ、仲間だったんだ。じゃあ、美味しい食べ物をいっぱい頼もうね」

「はい!」

「これが食べたいミュ~」

「クー! クー!」

「僕はこれ」


 二匹とハデス君が争うようにメニューを指す。歓迎会の事を話したら、ハデス君も来たいと言うので、メンバーに加えて貰った。


「え、えっと、野菜スティック、シーザーサラダ、ポテトフライね。すみませーん」


 二匹は好物が入ったメニューをしっかり選んでいる。写真を舐めるように見ていたのは、その所為なのね。


「お菊、こっちは塩味の唐揚げだぞ」

「わーい、ありがとうございます」


 こんもりと盛られた天辺の唐揚げをパクリ。こっちは胸肉だね。塩麹を使っているのかな? 柔らかくて美味しい。


「どうだ、仕事は? きつい事があるなら言ってくれ。改善やフォローをするからな」


「んー、そうですね。今の所は特にないですよ。皆、可愛いです」


「そうか。だが、まだ体験していない事も多いからな。あったら、ちゃんと言うんだぞ。体を壊してまでやる事はないんだからな」


 マハロさんが優しい顔で頭を撫でてくれる。預モンは本当、良い職場だよね。こんなに気遣ってくれる人達が居るんだから。


 隣で頷きながら枝豆を食べているケン君に話を振ってみよう。もっと仲良くなりたいもんね。


「ケン君はお仕事で一番好きなのって何?」


「そうですね、ブラッシングでしょうか。フワッフワになっていくのが堪りません」


「分かる! 艶も増していくから、もうちょいってやっちゃうんだよね」

「そうなんです! やればやるほどに成果が返って来ますから」


「ははっ、お菊とケンもすっかり、モンスターの虜だな。預モンで働いていると、皆そうなる」


 だって、あれだけ可愛いければね。一日見ていても飽きないよ。


「マハロさんはどの作業が一番好きなんですか?」

「俺は育成かな。あと、モン飯が作られている所を見るのも好きだな」

「工場があるんでしたっけ?」

「ああ。そういえば、まだ見学に行ってなかったな。近々、連れていこう」


 遊楽の地下に預モンや工場があるそうだ。とても広いから、乗り物やモンスターに乗って移動するらしい。だから、行ってない所ばっかりなんだよね。


「マハロさん、俺達もお菊ちゃんと一緒に仕事がしたいでーす」


「そういや、双子とは一度も組んでいないな。テイムは行った事あるから、リリースを体験してもらうか。お菊もレベルアップしたし、推奨レベルが低いエリアなら大丈夫だろう」


「やったー! サム、乾杯しようよ」


「「イエーイ!」」


 私と一緒に行ける事を喜んでくれるなんて、嬉しい限りだ。色々体験して役に立てるようになりたい。


「トッドさんは調教と育成一筋なんですか?」


「いや、希望はそうだったんだがな、一通りやった事はあるぞ。俺は預モンの創設時からいるんだが、最初は人手が足りなくて何でもやってたな」


「へぇ~、ずっと専門でやっているんだと思ってました」


 ケン君も知らなかったようだ。聞くと何でも答えてくれる知識は、そうやって身に付けたんだね。


「俺のレベルが一番高かったから、強いモンスターをテイムする時は必ず行かされてたんだよ。しかも、調教も育成もだろ? ナダが来てくれてから随分楽になったわ」


「確かにあの頃はドタバタしてましたよね。トッドさん、引っ張りだこでいつ寝てるんだろうって思っていましたよ」


「寝てねぇよ。やっと寝られると思っても問題が起きて叩き起こされて、三徹とかしょっちゅうだったぜ。四徹した日にブツンとキレて、一番偉い奴に抗議して人を増やさせたんだよ。双子も大変だったろうが、あれでも大分改善させたんだぞ」


「うわぁ、俺らの時はまだましだったんだな」

「なぁ。寝る時間あったし」


 か、過酷……。ケン君と私は今の預モンで良かったねと頷き合う。


「だからよ、トップがマハロさんに変わって本当良かったぜ。前の奴はケチ臭くて文句ばっかりのひょろひょろ野郎だったからな」


 ぐいーっとお酒を飲み干したトッドさんのグラスに、マハロさんが苦笑しながらビールを注いであげている。


「すまんな。もっと早く手を差し伸べられていたら良かったんだが」


「いやいや、感謝してるぜ。お菊が来てくれてAチームも華やかになったし、今は大満足だ」


 「それは同意だ」と皆が頷いて、ジュースを注いだり料理をとってくれる。そんなふうに言ってくれるなんてと、ジーンとしていると、背中にのしっと何かが乗る。


「ひっくミュ……」

「タケちゃん? どうしたの?」

「きーちゃん、ひっく……タケノコ、踊りますミュ!」


 えっ、フラダンス⁉ 「ミュ~♪」と歌いながらご機嫌そうに踊っている。


「あー、ごめん。目を離した隙にお酒飲んじゃったみたい」

「あっ、俺の巨峰サワーが無くなってる!」


 面倒を見てくれていたハデス君が申し訳なさそうに言うと、トニーさんが声を上げる。


「タケちゃん⁉ お水飲もう、ね?」

「まだまだミュ~♪」


 腰をフリフリしながら逃げて行く。あ~、自由度に磨きが掛かっているよ~。


「いいじゃん、踊らしときなよ。上手いし」

「そうだな。害がある訳じゃないし、その内に寝るだろ」


 サムさんとマハロさんがそう言うならと見守っていると、トニーさんが踊るタケちゃんに、貝殻の首飾りを付けて、頭に花を載せる。


「いい感じじゃない?」

「あはは、可愛い。トニーの頭にも花つけてあげるよ」

「うっし、踊るか。――えぇ? 腰、難しいんだけど。タケちゃん、すげぇ」


 そんな二人を眺めたり、美味しい料理をお腹いっぱい食べて、話して。皆との距離が更に縮まった心に残る歓迎会だった。また、皆で来たいな。


マハロさんの言葉通り、トニーの足に抱き付いた状態で、タケちゃん寝落ちです。


お読み頂きありがとうございました。

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