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71.イベント『お花を渡してアイスを食べよう!』

 5/11~5/12の土日はイベント『お花を渡してアイスを食べよう!』が行われる。


 手順はカゴのアイコンがある花売りNPCを探して、カーネーションを貰う。次に頭上に赤いカーネーションの花のアイコンがある女性NPCに花を渡す。すると、アイスの引き換え補助券(イベントの間だけ有効)が貰えるらしい。


 カーネーションってことは、母の日みたいなものかな? 花のアイコンが出ている女性NPCは三十代以上に見える人ばかりだもんね。


「5枚集めると一個交換出来るんだって。参加店舗には棒アイスのアイコンが出ているらしいから一緒に探そうね」


「ミュー!」

「クー!」


 目をキラーンと光らせた二匹が「エイエイオー」と腕を振り上げている。


「亀吉君たち気合入ってるね。何があるの?」

「アイス食べるミュ~」

「クー!」

「えっ、アイス⁉ 僕も行きたいです!」

「僕も!」


 ケン君と待ち合わせしていたのか、トレディチ君もやって来て、はいはい! と手を挙げる。


「二人共、アイスが好きなの?」


 勢い良くコクコク頷く姿が可愛らしい。ふふふ、よっぽど好きなのね。


「じゃあ一緒に行こうか。NPCも参加出来るといいね」

「気を付けて行って来い」

「お土産持って来ますね~」


 トッドさんに見送られて町へ向かう。どんな味があるか楽しみだな~。





「あ、花売りさん居ましたよ!」


 見付けたケン君が走り寄って人数分の花を受け取っている。どうやらこのイベントはNPCも参加出来るようだ。


「あっちにも居るミュ~」

「クー」


 止める間もなく、全員バラバラに花売りさんに向かって行く。どうしよう、はぐれちゃう。誰から迎えに行こうと慌てていると、フッと影が体を覆う。


「お姉さん、一人なの? 俺達とイベント参加しない?」

「いえ、連れが居ますから」

「えー、どこに? 君を置いていっちゃう奴なんて放っておきなよ」

「すぐ戻って来るので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「固いな~。もっと楽しもう、ぐはっ⁉」


 手首を掴もうとした男性が尻餅をついている。えっ、何が起きたの?


「お菊さん、一人にしてごめんね」

「おい、ガキ、ふざけんなよ!」


 返事をしようとしたら、尻餅をついた人がトレディチ君の襟首を掴む。やめてと手を伸ばそうとしたら、いつの間にか居たケン君が私を庇うように前に出る。


「ふーん、お兄さん馬鹿なんだね」

「なんだとっ、調子にのんなよ、クソガキが!」


 心底馬鹿にしたような顔で言ったトレディチ君に男性が殴り掛かる。


「ほら、すぐ暴力に走る。賢い選択じゃないね」

「なんで当たらないんだよ⁉」


 襟首を掴んでいた手を難なく外し、スイスイと拳を避けながら、トレディチ君が挙手する。


「GMさーん、お願いしまーす」

「畏まりました」


 黒いスーツとサングラスを装着した人達が、男性達を連れて消える。一瞬の出来事にパチパチと瞬きをしていると、二匹と二人が次々と私に抱き付いて来る。


「ごめんね、お菊さん。一人にして」

「すみません。アイスで頭がいっぱいなってしまって……」

「わーん(涙)、きーちゃん、無事で良かったミュ~」

「クー……」


 うっ、苦しい。でも、それだけ心配してくれたんだよね。


「皆、大丈夫だよ。助けてくれてありがとうね。うぎゅ⁉」


 更にムギュッとされて私が呻くと、慌てて解放される。トレディチ君、怪力なのね。骨がミシッと恐ろしい音を立てたよ……。


「ご、ごめんなさい! 僕、いっぱい補助券集めて来るから、ここに居てね!」


 トレディチ君が二匹を抱えて走って行く。ぽかーんとしていたケン君と私は苦笑して、お店の壁に寄り掛かる。


「トレディチ君って足も速いんだね」

「はい。ラゴウ兄弟は全員用心棒も兼ねた店番なんですよ」

「へぇ、そうなんだ。ケン君も同じくらい強いの?」


「僕はまだまだです。進みたい道に合わせて能力を上げていかなくちゃいけないんですけど、まだ迷いが消えなくて。マハロさんに相談したら、ゆっくり全体的に上げていけばいいって言ってくれたので、戦闘力はあまりないんです」


「そうなんだ。ケン君て、モンスターのお世話を楽しそうにやっているよね。モンスターもケン君のこと大好きで、素敵な関係だなぁって、いつも思うんだ」


 ケン君が返事をせずに私をじーっと見つめてくる。分かったようなこと言うなって怒ってしまったのだろうか?


「僕、厩舎に居る時、楽しそうに見えますか?」

「うん」

「とっても?」

「うん、とっても」

「そうですか……」


 俯いてしまったケン君は普段の明るさが消えて、とても大人びて見える。言葉を掛けようか迷っていると、ケン君が先に顔を上げ、私の手を握る。


「ずっと迷っていたんです。でも、お菊さんの目に映る僕の姿を聞いて決心がつきました。僕はずっと厩舎でモンスターのお世話をしたいです」


「うん! ケン君がそう決めたのなら、応援するよ!」

「はい!」

「ケン君! おめでとう!」

「うわっ⁉」


 アイスの補助券を握り締めて戻って来たトレディチ君が、ケン君に飛びつく。


「ずっと悩んでたもんね、うぅっ、よかったよぉぉぉ~」

「そんなに泣かないでよ。うんうん、ありがとうね、心配してくれて」


 良かったと何度も言うトレディチ君は、親身に相談にのってくれていたらしい。


「良いお友達だね」

「はい。僕もトレディチ君を大事にします」


 笑い泣きしているので、亀きっちゃん達が「悲しいの? 嬉しいの?」と悩んだ末、何かを閃いたようだ。


「美味しいもの食べたら、笑顔いっぱいミュ!」

「クー、クー!」


 亀きっちゃんがトレディチ君の襟首を銜えて、ベリッとケン君から剥がし、タケちゃんの背に乗せると、アイスを貰いに勢い良く走り去る。


「うわぁぁぁっ⁉」

「ミュ~♪」

「クー♪」


「「……」」


 顔を見合わせた私達は、満足気な顔をして小さい姿に戻った亀きっちゃんを抱っこして後を追う。そうじゃないかなぁと薄々感じてはいたけど、うちの子達は、どうやらフリーダムのようです。


 追い付くと、タケちゃんがズボッと水色の棒アイスをトレディチ君の口に押し込んでいるところだった。あぁ、なんてことを……。


「タ、タケちゃん、お口が切れちゃったらどうするの」


「大丈夫ですよ、お菊さん。トレディチ君は拳を口に入れる特技をいつも見せてくれますから」


「僕も見せて貰ったミュ~」

「ひょうっふ。ふぁいひょうふ! (そうです。大丈夫!)」


 サムズアップされて胸を撫で下ろす。でも、注意はしておかなきゃね。


「口が切れたり喉に詰まらせると危ないから、もうしちゃ駄目よ。約束出来るかな?」


「輝石でナダちゃんがしてくれたみたいに、『あーん』したらいいミュ?」


 ナ、ナダちゃん……。ケン君達も引き攣った笑顔で固まっている。取り敢えず、今はスルーしておこう。


「え、えっと、相手も受け入れてくれたらいいよ。でも、勢い良く入れちゃ駄目だよ」


「分かったミュ。きーちゃんは何味のアイスがいいミュ? 『あーん』してあげるのミュ~」


「ふふっ、ありがとうね。どんな味があるか見て回ろうか」

「ンミュ♪」


 回る途中に手順をこなして補助券を増やしながら、アイスを楽しむ。かき氷、シャーベット、ケーキアイスなど種類豊富で目移りしてしまう。露店だけかと思ったら、喫茶店やレストランでもアイコンが出ている。全種類制覇は難しそうだ。





 二日目は、パールさんや甘い物好きなハデス君にもあげようと張り切って補助券を集めていると、トントンと肩を叩かれる。振り返ると、輝石でナダさんとの事に巻き込んでしまった男性が立っていた。


「あ、この前の! あの時はすみませんでした」


「いや、気にしないでいいよ。良かったらさ、これいる? 集めたはいいけど、俺一人じゃこんなに食べられないって気付いてさ」


「頂いちゃっていいんですか? お仲間で分けた方が……」

「ああ、俺はソロだから、あげる奴が居ないんだよ」


 この前、巻き込んだ上にタダで貰うなんて申し訳ないな。


「あの、クッキーしかないんですけど、これと交換でもいいですか?」


「気にしなくてもいいのに。あっ、じゃあさ、良かったら俺とパーティー組んでくれない? テイムした子は二匹? 一枠空いてるかな?」


 空いているけど、よく知らない人だし、私と組むと損しちゃうよね。


「俺からパーティー組みたいって言ったんだから、経験値の事とかは気にしなくていいよ。そうだ、まだ自己紹介してなかったよな。俺はウインダム。最近そこそこ名前が知られてると思うんだけど、知ってる?」


 頷いて失礼にならない程度に観察してみる。声は健二君に似ているけど、ちょっと低めで、歳は20代半ば位かな。茶髪で背が高く、程良く筋肉のついた、狐顔のちょっとやんちゃそうな青年だ。町で噂話をよく聞く、最前線で攻略している人だよね?


「私はお菊と言います。あの、推奨レベル50のエリアに到達している方ですよね? 私はまだLV10にもなっていないんです。えっと、寄生でしたっけ? それになっちゃいませんか?」


「俺、今57だからギリでいけると思うよ。えっと、俺じゃ嫌かな?」


 悲し気な顔をされて狼狽えてしまう。どうしようと悩んでいると、背後から誰かが抱き付いてきた。


「わっ⁉ あ、ハデス君」

「お菊、こんにちは。……不安なんでしょう? 僕がついて行ってあげる」


 耳元で囁かれ、優しく微笑まれた事で力が抜ける。『お願いしてもいい?』と目でお伺いすると、更に笑みを深くして頷いてくれる。


「あの、彼は私のお師匠様なのでパーティーに参加はしないんですけど、一緒にいいですか?」


「あ、うん。どのエリアでも行けるけど、どうする? 目当てのモンスターとか居るかな?」


「お菊、せっかくだから、ロイヤルハニーベアーを探しに行こうよ」

「えっ、私、瞬殺されちゃうよ!」


「僕が居るんだから、そんな事させないよ。それに、お菊を誘う自信があるなら、そこの彼もそこそこ強いんでしょう。ねぇ?」


「あ、ああ。ちゃんと守るから安心してよ」


 では、お言葉に甘えてしまおう。券をそれぞれが好きなアイスと交換したら出発だ。楽しみだな~。

可愛い二匹はフリーダム。のびのびと育ってます。


お読み頂きありがとうございました。

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