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70.初めてのお給料

 五月十日。待ちに待ったお給料日です!


 マハロさんが朝礼で順番にお給料袋を渡していく。皆の顔がふにゃっと緩んで、最後に貰う私のテンションも急上昇だ。


「ほい、お疲れ。お菊、良く頑張ったな」

「ありがとうございます!」


 お給料袋を抱き締めて喜んでいると、マハロさんがつられたように笑いながら頭を撫でてくれる。


「慣れて来たようだから、トッドの仕事も少しずつ見てみるか?」

「はい。あ、でもSA取らないと駄目ですよね」


「いや、他の仕事も見て進みたい道を決めればいいさ。焦らずに行こうな。よし! 皆、今日もよろしく」


 厩舎に入った私とケン君は隅っこで金額を確認。ドキドキ、幾らかな?



 ――54,750タム。


 うん、私良くやった!


「――ん? ケン君、明細にSAPが載ってるよ」


「あ、そうか。お菊さんはお給料を貰うの初めてで知りませんよね。NPCに雇われて働くと、一時間毎に3SAP貰えるんですよ」


「30分だと貰えないの?」

「いえ、半分貰えますよ。小数点以下は最後に四捨五入されます」


 そんな仕組みがあるんだと感心してアイテムボックスに仕舞う。来月も頑張ろう!



☆= ☆= ☆=



「お菊ちゃ~ん」


 仕事終わりにサムさんに呼び止められる。その後ろでトニーさんが思いっきりにやけている。何か面白い事があったのかしら?


「クッキーありがとうね。とっても美味しかったよ。あのさ、ハンカチ洗ったんだけど血が完全に落ちないから、新しいのプレゼントしたいんだ。一緒に選んでくれないかな?」


 血は落ちにくいもんね。それよりも気になるのはサムさんの視線の位置。


「お口に合って良かったです。あの、私のおでこ、テカってますか?」

「はい? いやいや、綺麗なお肌だよ。是非とも触、な、なんでもない!」


 今度は手をモジモジとさせながら俯いてしまった。なんだか、いつものサムさんらしくない。


「ごめんね~。兄弟、プレゼント買いに女性をお店に誘うなんて初めてだからさ~、緊張してんの」


「そうだったんですか。良かったら、カフェにも行きませんか? お世話になってばかりなので、ご馳走させて下さい。お給料貰ったので奮発しますよ!」


「あ、えっと、いいの? 凄く嬉しいよ……」

「良かったね~。デート楽しんで来てよ、サム」

「デ、デート⁉」


 慌てふためくサムさんの肩に、ポンと手が載せられる。


「へぇ、デート、ねぇ。いいなぁ、楽しそうだね。俺も一緒にいいかな?」

「ナ、ナナナナナダさん⁉」


 サムさんが凄く動揺しているけど、またナダさんにちょっかい出して怒らせちゃったのかな? 真っ青な顔のサムさんと、目が笑っていないナダさんの頭を同時にナデナデ。落ち着いて話し合いましょう。


「「お菊ちゃん?」」


 どちらも不思議そうな表情に変わる。効果があるようなので、もう少し撫でておこう。よしよし。――うん、良い表情になってきた。


 そこへ、預けていた亀きっちゃん達と共に、パールさんがトコトコとやって来る。三匹で歩く姿が可愛過ぎる! これを見た二人も心が癒されているに違いない。


「ナダさん、今日はマハロさんの代理で会議に出てくれと言われていませんでしたか?」


「あ、そうだった。パール伯爵、代わりに行って来てよ」


「私が行っても意味がありませんよ。グズグズしているとセイラさんに絡まれますよ」


「あー、もう、面倒臭いな。お菊ちゃん、今度一緒にお出掛けしてね」

「はい。いってらっしゃい」

「行ってきます」


 ニッコリ笑って去って行く。ご機嫌になったようで何よりです。


「サムさん、行きましょう?」

「あ、うん」


「サム、デートならちゃんとエスコートしないとね~。ほら、手を組むか繋ぐかして」


 トニーさんに急かされたサムさんが、真っ赤になりながら手を彷徨わせている。そんなに私と手を繋ぐのは嫌なのかな……。


「誤解を招いているじゃありませんか。さっさとなさい」

「痛ったぁぁぁ⁉」


 焦れたパールさんが杖でサムさんの脛を叩くと、跳ね上がった手が差し出していた私の手に載ったので握ってみる。


「お、お菊ちゃん⁉」

「やっぱり嫌――」

「全然嫌じゃないから! これでお願いします!」

「はい」


 パールさんとトニーさんに見送られて町へと向かう。歩き方もぎこちないけど大丈夫かな? 私相手にそんなに緊張しなくてもいいのに。雑貨屋さんに着く頃には目を合わせてくれるといいなぁ。





「これなんかどう? 菊の刺繍だよ」

「わぁ、綺麗ですね。お着物の柄みたいです」

「きーちゃん、これが良いと思うミュ」

「クー、クー」

「どっちも可愛いね」


 パンダと亀柄をそれぞれ勧めてくれる。どっちかだけにしたら泣いちゃいそうだから、一枚は自分で買えばいいか。サムさんに相談しようとしたら、バチンとウィンクされる。


「買って来るね~」

「あ、サムさん⁉」


 どちらも持って行ってしまうので慌てて追い掛けようとしたけれど、先程からチラチラと私達を見ていた女の子達に囲まれてしまう。


「可愛いね~。撫でてもいいかな?」

「ちょっとだけミュよ」

「クー」

「えっ、私もですか⁉」


 女の子達は私の耳も目当てだったようで、キャーキャー言いながら順番に撫でていく。ひゃ~、くすぐったいよ~。


「お待たせ。大丈夫?」


 女の子達が居なくなったタイミングでサムさんが帰って来て、疲れてよれっとしている私達の毛を整えてくれる。


「女の子のパワーは凄いねぇ。はい、ハンカチ」

「ありがとうございます。一枚は私に払わせて下さい」


「だーめ。俺が予定していたのより安かったからさ、もっと買ってもいいくらいだよ。靴下でも買う?」


「いえいえ、ハンカチだけで十分です。ありがとうございます」

「そう?」


 ニカッと笑って私の頭を撫でてくれるサムさん。優しい目と目が合って嬉しくなる。


「ふふっ、いつも通りのサムさんになって良かったです」


「だって緊張してたんだもーん。でもさぁ、お菊ちゃんの色々な表情を見逃す方が損だって気付いたんだよね~。これからは意地でも見るつもりだよ!」


「もう、面白がってますね? じゃあ、私も見放題でいいですよね。お互い変な表情をしても庇い合いましょう」


「オッケー。俺達、顔が正直だもんね~」


 うっ、ダメージが……。本当の事だけど頷きたくない。やっぱり仮面を探そうかな……。


 その後、マハロさんと出会った時に行った、始まりの鐘の側にあるカフェでお茶をする。クリームたっぷりのシフォンケーキ美味しい!


「まだ時間あるならレベル上げ行こうよ。パーティーは組めないけど、探すの手伝うからさ」


 誰とでも組めるけど、レベル差が50あると寄生だと判定されやすいそうだ。預モンの人達――、特にA・B厩舎の人達は捕獲もするので、レベルが高い。私はいつになったら組んで貰えるのやらという状態だ。


「はい、お願いします」

「サムちゃん、抱っこしてミュ~」

「クー」

「任せなさい。ほら、おいで~」





 ご機嫌な皆と一緒の火噴きエミュー退治は、私がLV8になった所で終了だ。頑張ったご褒美に高い高いをねだった二匹のついでに、何故か私もされてしまう。恥ずかしかったけど意外と楽しい。


「私もしてあげたいです」

「えぇっ⁉ 俺、結構体重あるから潰れちゃうよ。気持ちだけ貰っとくね」


 それを聞いていたタケちゃんが大きくなり、サムさんをグイーンと持ち上げる。


「おわっ⁉」

「ミュ~ン♪」

「あははは、すげぇ! これ楽しいね~」

「そうなのミュ。ぐるんぐるんミュ~」

「あ~れ~」


 帰り道はサムさんがタケちゃんに乗りたいというので、私は亀きっちゃんの中に乗せて貰う。あ~、フカフカ。居心地の良さに負けた私はすっかり寝てしまい、サムさんに起こされる羽目になった。人を駄目にするフカフカ、恐ろしい……。


待ちに待ったお給料日! お金の心配が要らなくなって、ウキウキのお菊ちゃんです。


お読み頂きありがとうございました。



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