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63.タケちゃんの好物

 21時にログインすると、ゲーム内は12時だった。皆、お昼に行っちゃったかな?


「おはようございまーす」

「お菊さん、おはようございます。あーっ、パンダさんだ!」


 厩舎に入ると、ケン君が喜色満面で駆け寄って来る。


「うわぁ、テクテクパンダのレアだ~。凄い凄い! お菊さんがテイムしたんですか?」


「そうなの。抱っこする?」

「はい! 名前はなんていうんですか?」


「僕、タケノコ。きーちゃんには『タケちゃん』って呼ばれているミュ。君はだぁれミュ?」


「わぁ、喋った! 僕はね、ケンっていうんだよ。お菊さんと一緒に働いているんだよ」


「そうなのミュ。ケンちゃん、よろしくミュ」

「うん!」


 全長は180cm位だけど、クッションサイズに縮んでいるので、ぬいぐるみを抱っこしているような感じだ。


「ふわぁ~、良い毛並みだね~。柔らかいけど、しっかりめかな」


 毛が短めで密集しているので、そう感じるのかも。赤い部分はちょっとしっとりめなんだよね。どっちの手触りも最高です!


「クー」


 亀きっちゃんが、チョンと鼻で靴をつっついてくる。もしかして、やきもちかな?


「ケン君、亀きっちゃんも撫でてあげてね」

「勿論ですよ。亀吉君、フカフカだね~」


 二匹を抱き上げて、頬擦りしてはニコニコしている。


「くすぐったいミュ」

「クー」


 そう聞いて閃く。もしかして、通訳出来ちゃうかも?


「タケちゃんは亀きっちゃんの言葉が分かる?」

「分かるミュ。お腹すいたーって言っているミュ。僕もお腹すいたミュ」


 そうだ、お昼だもんね。慌ててアイテムボックスを開く。亀きっちゃんにはレタスで、タケちゃんは当然タケノコでしょう。差し出すと、ちょっと残念そうに首をコテンと傾げる。


「タケノコもいいミュ。でも、一番好きなのは人参ミュ」

「えっ、人参⁉ 笹じゃないの?」


「笹も食べるけど、好きレベル普通ミュ。でも、人の町に来たミュ。テイムされた特権ミュ」


 タケちゃんが話せる子で良かった。思い込みは危険ね。


「ごめんね、今は持っていないの。お仕事が終わったら、一緒に買いに行こうね」


「ンミュ」


 頷いてくれて一安心だ。せめてもと、モン飯を出してみる。


「これもあるよ」

「初めてミュ。食べてみるミュ」


 味見して、ウンウン頷くと、勢い良く食べ始める。良かった、気に入ったみたい。厩舎の子達にも、ご飯あげないとね。


 モン飯はペレットのように円筒形をしていて、何種類もある。育成のSAを持っている所員さんが毎朝体調やステータスをチェックして、どれをあげるかが決められる。A厩舎ではトッドさんが担当だ。


 リストを見ながら計量して、お皿に入れていく。プレイヤーさんのテイムした子達は、体調が悪くない限りは種類も量も変わらない。注意しないといけないのは、育成する子だ。――えーと、この子はお肉多めね。


 預モンでは獣のお肉ではなく、大豆で作られたお肉もどきをあげている。人間も食べられるし、どんなものをあげているか知っておくといいと、試食させて貰ってびっくりした。言われなければ、全然分からない。弾力も味も赤身のお肉みたいだった。


 タケちゃんにあげたのは、お野菜で作られたものだ。ほうれん草や人参、かぼちゃを使っているのでカラフル。人参がちょびっとでごめんね。


 水は個々に自動給水器があるので、運ばなくていい。これがあるとないとじゃ大違いだと、双子のお兄さんが力説していた。前は、水運びは新人の仕事だったそうで、ヒーヒー言いながらやっていたそう。次の新人さんが来て、やっと解放されると思ったら自動化に。俺達、そんなのばっかりだよなと嘆く姿に、マハロさんが「すまんな」と苦笑していた。


 でも、トッドさんが言っていたんだよね。預モンは元々、国が管理運営していたけど、諸事情により民間で引き継ぐ事に。その頃から、不便がどんどん解消されていったと。今、私が楽に作業できるのは、マハロさんが所員さんの声を丁寧に拾い上げたからだ。マハロお父さんは優しく、偉大なのだ。


 パールさんの部屋隣の子にご飯をあげていると、とっても良い匂いがしてくる。クンクン匂いを嗅いでいると、カチャッと扉が開く。


「おや、お菊さん。こんにちは」

「こんにちは。ベーコンエッグの匂いだったんだ」


「はい。放牧場で食べようと思いまして。解放感があって気持ちが良いのですよ」


 柔らかな風が吹いていて、ポカポカしているもんね。トレイの上を見ると、紅茶とパンと果物も載っている。パールさんは自分で栄養管理していそう。強くて、お料理も上手、丸ごと洗浄も出来るだなんて!


「パールさん、お嫁さんに来ない?」


「「な、なんですとぉぉぉ⁉」」


 ダダダッという音がガッシャンガッシャンになって、背後から急接近してくる。


「お菊ちゃん、なに早まったこと言ってるの!」

「トニーさんも大反対だよ!」


 サムさんは右足に。トニーさんは左足にバケツがはまっている。この音だったんだ。


「お二人共、バケツ返して下さいよぉ」


 ケン君が困り顔で走って来る。


「「はまって抜けない!」」


「ケン、俺が首を持っててやるから、引っ張れ」


 お昼から戻って来たトッドさんが、お二人の首に腕を巻き付ける。


「はい! うんしょー」


「「ぐぇぇぇっ、今、それどころじゃ、も、もげる!」」


「お式はいつにしましょうか?」


 一瞥しただけで、何も無かったかのように会話が繋がれた。パールさん、すっごく、にこやか……。


「え、えっと、ご飯冷めちゃうから、また後で」

「そうですね。埃っぽくなってきたので行って来ます。ではまた」


 何が起きても冷静で優雅なパールさんを見送る。なんだか、平和な気がしてきた。





 お昼にぐったりしていた双子のお兄さんは、仕事終わりには元気いっぱいになっていた。超回復みたいなSAでもあるのかしら?


「きーちゃん、お仕事終わったミュ?」

「うん、終わったよ。人参を買いに行こうね」

「ンミュ♪」


 マハロさんにもタケちゃんを紹介したかったけど、お休みなんだよね。残念。


「お菊ちゃん、今日もハデス様と待ち合わせ?」

「いいえ。LV10になるまで、三人で頑張っておいでって言われているんです」

「そっか。テクテクパンダの説明はして貰った?」

「どういう攻撃をしてくるかは聞きましたよ」


「うーん、補足説明した方が良い感じかな? っていうか、ハデス様、そのつもりだよな、これ」


 苦笑したナダさんが、ステータスを見せてと言うので、すぐに表示する。



+++++ +++++ +++++ +++++ +++++

タケノコ

LV3

HP:580 MP:20

攻撃力:20 魔力:20

防御力:20 魔法防御:10

スピード:38 命中:104

回避:3 運:7

_____________________


SA:


・土魔法LV1 ・物理カウンター攻撃LV1(固有) ・鞍LV1

+++++ +++++ +++++ +++++ +++++



「テクテクパンダはね、レベルを上げてもMPが低めなんだ。物理攻撃を頑張って貰う感じかな」


「カウンターもしちゃうのミュ」


 前足を挙げてみせるタケちゃんの頭を、ナダさんが微笑みながら撫でる。


「そうだね。SAに『固有』って表示されているでしょう。これはね、通常取得できるカウンターより強力なんだ。最高レベルに到達すると、通常は70%のところ、固有は100%でカウンター攻撃が行われるんだ」


「全部やり返しちゃうミュ~」


 レアモンスターって、思っていたよりずっと凄いのね。褒めて褒めてという感じで見上げてくるので、私も撫でてあげる。


「後はね、背に乗る事が出来る。最高時速は40km超えと言われていて、普段は人間のマラソンぐらいの速さで移動する事が多いね」


 名前通りにテクテク歩く姿しか見ていないし、のほほんとした顔をしているんだよね。イメージ湧かないなぁ。


「短めの毛だから、トワイフルちゃんみたいに掴まれないですよね。速度が上がったら転がり落ちちゃいそう」


「この子は鞍が装備できるから大丈夫だよ。俺がいつも行っている防具屋を紹介してあげるね」


「お高いですか?」

「レベルが低い内は、そうでもないよ。見るだけでも行ってみる?」

「はい、お願いします」


 体に装備する物って事は、防御力が上がるんだよね? タケちゃんが少しでも痛くないように、出来れば買ってあげたい。


お読み頂きありがとうございました。

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