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60.うさ姫騎士団 ~ケン視点~

「ねぇねぇ、ケン君。僕さ、『うさ姫騎士団』を作ろうと思うんだ。良かったら入らない?」


 仕事終わりに遊ぶ約束をしていた、ラゴウ兄弟の末っ子トレディチ君が、開口一番にそう言うので首を傾げる。


「それは何をするの?」


「お菊さんを守るの! この前、町でお菊さんを見掛けたんだけど、こっそり後をつけていく奴とか、じーって見ている奴がいっぱい居たんだ!」


「えっ⁉ 悪い奴等に狙われているって事?」


「断言は出来ないけど、怖い目で睨んでいる女性とかも居たんだよ。だから、何かある前にと思って」


 これは僕等だけでは危険かもしれない。誰に相談するのがいいだろうと考えていると、頭上から声が振って来る。


「お二人で深刻そうな顔をしてどうしたんですか?」

「あ、サポートウサギ君。ちょっと相談に乗って貰ってもいいかな?」

「はい、構いませんよ」


 事情を話すと腕組みして考えた後に、マハロさんに連絡を取り始める。


「――はい。一斉配信の許可を頂けないでしょうか? ありがとうございます」


 その後、立て続けにAIエイトさんと話し始める。


「――了解。お二人共、お待たせ致しました。マハロさんを筆頭に上層部の方々と、僕を含めて管理AIは全員が団員となります」


 錚々(そうそう)たるメンバーだな~。でも、お菊さんが安全ならいっか。


「あ、あの~、団長はどなたが?」

「勿論、言い出しっぺのトレディチ君ですよ」


 恐る恐る聞いたトレディチ君の顔が青くなっていく。背中を撫でてあげながら、一応確認してみる。


「久遠様も団員ですか?」

「はい、勿論。『トレディチ団長、期待する』というお言葉を頂きましたよ」


 頭が真っ白になったのか、フリーズしてしまったので、おんぶしてあげる。


「ケン副団長、団員ナンバーはどうします?」


 あー……、僕が副団長で決定なんだ。どうしようかな? 適当はさすがにまずいよね。そんな悩める僕の前に救い主が現れてくれた。


「おや、珍しい組み合わせですね」

「パール伯爵! 今、お時間ありますか?」

「はい。――ふむ。全員、名誉団員でいいのではないでしょうか」


 流石、話が早い。あっさりと問題を解決してくれた。


「ありがとうございます!」

「いえいえ。その代わりと言ってはなんですが、私も団員に入れて下さい」

「パール伯爵! 団長になって下さい!」


 フリーズが解けたトレディチ君が身を乗り出す。おっとっと、必死なのは分かるけど、落ちちゃうよ?


「久遠様のご指名なのですから、頑張って下さいね。私は団員ナンバー3の平団員です」


「えぇ~、そこをなんとか! サポートウサギ君でもいいよ」

「いえいえ、僕は名誉団員ですから」


 えっへん! という感じで誇らし気に胸を張っている。お菊さんの事が大好きだから嬉しいんだろうな。


「うぐぅ……。ケン君~」


 よしよしと背中をポンポンしてあげていると、Aチームの皆がやって来た。


「あれ? 町で遊ぶんじゃなかったの?」

「ナダさん、それがですね――」


 説明すると、サムさんとトニーさんが同時に右手を上げる。


「「団員ナンバー4!」」


「ちょっと、サム、真似しないでよ~」

「それはこっちの台詞ですぅ」

「じゃんけんしろ、じゃんけん」


 トッドさんが仲裁に入ると、必殺技でも出すように溜めてから勢い良く手を出し合っている。


「「あいこでしょ!」」


 このお二人がじゃんけんし始めると長いんだよな~。ずーっと「あいこでしょ!」が続くんだよね。


「トレディチ君、俺も入れてくれる?」

「いいですよ。団長にな――」

「それは断るよ」


 ナダさん、分かってるな~。速攻でお断りだ。


「イエーイ! サムさんがナンバー4だよ!」

「ちぇ~、負けちゃったよ」


 勝敗がついたようだ。トレディチ君もこのお二人に団長をとは言わない。うん、それが正解だよね。


「トッドさんはどうします?」

「俺も入るぞ。お菊を守ってやらないとな」


 じゃあ、年の順でと言うことで、ナダさんがナンバー7になった。


「バッジ作ろうよ。団員っぽいじゃん?」

「賛成~。さすが兄弟、分かってるねぇ」


 『やっぱ、ウサギでしょ』と言いながら、サムさんがサラサラとメモ帳に絵を描いていく。


「こんな感じでどうでしょ?」


 皆で覗き込むと、菊の花を抱いたウサギが描かれている。成程、花の中心にナンバーをいれるのか。相変わらず絵が上手だな~。


 皆も満足気に頷くと、サムさんがニカッと笑う。


「いよっし! パッソさんに頼めば作ってくれるかな?」

「僕、頼んで来ます」


 サポートウサギ君が紙を受け取って消えると、トッドさんが顎を撫でながら、トレディチ君を見る。


「代金はどうするんだ?」


「あっ、そうですよね。う~ん……、入団費にすればいいかな。他にもお金が掛かるだろうから毎月定額で集めて……」


 トレディチ君はマハロ商会の遊楽本店を任されているから、お金に関わる事を考えるのが得意だ。僕は体を動かす方が得意だから、トレディチ君の手足となって動こう。


「ただいま戻りました。ペッペ君とパッソさんも団員にしてくれるなら作ってくれるそうですよ」


「ありがとうございます! じゃあ、お値段の相談をしてこなくちゃ」


 なんか凄い勢いで団員が増えていってるな~。魅力的な人だから当然だよねと思いながら、ナダさんを見る。


「ケン、どうしたの?」


「今更なんですけど、良かったんですか? 好きな女性は独占したいものかなぁと思って」


「ああ、そういう事ね。お菊ちゃんの安全度がアップするんだから構わないよ。それに、お菊ちゃんに好意を持っている人たちが集まるから、一気に牽制しやすいでしょう。フフフ……」


 強いなぁ。ナダさんの上を行く人って居るんだろうか? 鼻をヒクッとさせながら聞いていたパール伯爵が、トレディチ君を見る。


「お菊さん自身には伝えないんですか?」


「はい。こっそり守る方が恰好良いかなぁと思って。それに、お菊さんは遠慮深い人ですから」


 サムさんとトニーさんは必殺技を考えようぜと言って盛り上がっている。だけど、懸念事項がある。


「サポートウサギ君、相手への攻撃ってどこまで許されるの?」

「マニュアル通りですよ。我を忘れてもストッパーが働くので大丈夫です」


 そっか。じゃあ、殴っても、のしちゃっても大丈夫だな。この世界では、相手の身体変化や脳内物質の分泌量などをデータ化し、それを基にNPCは対応する。表面上は取り繕えていても、邪な想いを隠す事など出来ない。


 弱そうに見える老人や子供のNPCでも、対応する時は能力が解放されるので、問題無く悪者退治が出来る。


 その後も着々と増えていく団員。預モンでは多くのNPCが働いているので、お菊さんはNPCの知り合いが多い。尊き宮で仲良くなったという人も顔が広いので、団員にはならずとも、遊楽の町ぐるみで見守っているような感じだ。



☆= ☆= ☆=



 ギルドまで一緒に来たお菊さんとは一旦別れる。用事を早々に終わらせ、待ち合わせしている八百屋へ、トワイフル君と一緒に向かう。


「おっ、あの子じゃないか⁉ リボーンしまくる可愛いウサギ獣人って。噂通り超可愛いじゃん! ――ねぇ、君、俺達とお茶しない?」


「いいでしょう? 行こうよ」

「え、あの、どなたでしょうか?」


 手首を掴まれ、肩を馴れ馴れしく抱かれそうになって、身を竦めるお菊さん。急いで駆け寄ろうとしていると、声を掛けたプレイヤーの肩を、八百屋のおじさんがグッと掴む。


「おぅ、兄ちゃん、嫌がってるじゃねぇか」

「なんだよ、あんた。邪魔すんなよ」

「そうだ、すっこんでろ、ハゲぇおわぁぁ⁉」


 笑顔でビキッと青筋を浮かべたおじさんが一本背負いをし、もう一人は走り寄ったトワイフル君に咥えられて、空高くに放り投げられている。


「ぎゃーーーっ⁉」


 屋根に落っこちると、高所恐怖症だったらしく気絶している。もう一人も巨大化した怒れる亀吉君に踏まれて、青い顔で震えている。


 暴言に加えて殴り掛かろうとしたから、向こうが悪い。八百屋のおばちゃんが、さっさとGMコールしている。


 やって来た黒いスーツにサングラスの係の人が一礼すると、回収してあっという間に姿を消す。相変わらず仕事が早いな。


「お菊さん、大丈夫ですか?」

「ケン君!」


 怖かったのか、僕の手をギュッと握ってくる。「もう大丈夫ですよ」と声を掛けながら、周りに目を走らせる。情報屋をしているプレイヤーや、『ウサ☆ドル親衛隊』というプレイヤーのみで構成された、お菊さんのファンクラブの人が居たので、一気に情報が拡散されるだろう。これが抑止力になればいいんだけど。


 あ、最近よく見掛けるウインダムという男性プレイヤーも居る。この人、ファンクラブの人じゃないけど、お菊さんにちょっかいを出そうとする人を退けたり、ピンチだとよく陰から助けてくれるんだよね。


 トワイフル君と亀吉君に頬擦りをされて落ち着いたのか、手を握る力が弱くなった。日常に戻れる会話をしてあげよう。


「お菊さん、レタス買えました?」


「あ、そうだった。おじさん、さっきはありがとうございました。レタスを五つ下さい」


「いいってことよ。――ケン、帰り道、離れるんじゃねぇぞ」

「はい」


 こっそり言葉を交わし、お菊さんにはトワイフル君に乗って貰う。トワイフル君がノリノリで歯を剥き出して唸ってみせているので、プレイヤーは誰も近付いて来ない。


「トワイフルちゃん、機嫌が悪いの?」

「ワフ? クーン♡」

「あれ? 良いの? んん?」


 不思議そうにしているお菊さんが可愛らしい。仲良しになったお菊さんが、ずっとこの世界に来てくれるように、不届き者は皆で成敗するのだ!


「よーし、エイエイオー!」

「ワオーン!」

「クー!」

「オ、オー?」


 訳が分からないなりに一緒にやってくれる。ははは、やっぱり優しくて、ほんわかしてて大好きだ。


お菊ちゃんの知らぬ間に、ファンが急増中です。

上層部も興味を持っていたので、面白がって団員になっています。


今日の連続投稿はこれで終了です。

お読み頂きありがとうございました!

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