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55.さようなら、マンドラゴラちゃん

 今日でイベント『マンドラゴラのかくれんぼ』が終わりを迎える。もう気軽に会う事も出来ないんだなと寂しく思いながら、森へと向かう。


「来たよ~」

「ドラー!」


 最近では森に来ると、全員でお出迎えしてくれるまでに仲良くなった。


「今日は亀きっちゃんも一緒だよ。皆で遊ぼうね~」

「クー!」

「ドラー!」


 亀きっちゃんは隠れる方に回るようだ。マンドラゴラちゃんを一匹背中に乗せて歩いて行く。よーし、数えるよ!


「――もういいかーい?」

「ド~ラララ~」

「クー」


 ふふふ、亀きっちゃんも準備OKかな? 表示を見ると、『0/21』になっている。凄い! こんな事にも対応出来ちゃうのね。AIがやってくれているのかな?


「行くよ~」


 探し始めると、いつものごとく木に擬態している子が居る。うん、今日も潔く全身を晒しているね……。そうだ、今日はこの子を最後にしてみよう。気付いていませんよ~という顔で横を通ると、そーっと目で追って来る。ふふふ、可愛い~。


 順調に見付けていくけれど、亀きっちゃんが見当たらない。もっと遠くまで行ってしまったのだろうか?


「亀きっちゃん、どこかな~?」


 後ろを付いて来るマンドラゴラちゃん達も体を左右に揺らしながら、『ドララ~?』と真似をしてくれる。


 あっ、ピコピコ揺れるシッポ発見!


「亀きっちゃん、みーつけた!」

「ク~」


 見付かっちゃった~という感じで出て来る甲羅の影に、茶色い物が見え隠れしているような?


「んん?」


 上から覗き込むと、「しまった!」という感じで仰向いているマンドラゴラちゃんと目が合う。背中に乗って行った子かな?


「ふふふ、みーつけた」

「ドラー……」


 葉を萎れさせて落ち込んでいるので、亀きっちゃんの甲羅に乗せてあげる。


「今日はまだまだ遊べるから、頑張って隠れてね」

「ドラー!」


 途端に元気を取り戻したマンドラゴラちゃんがバンザイをしている。あー、危ない危ない、手を離したら落ちちゃうよ~。


 慌てる私をよそに、中々良いバランス感覚で乗っている。うーん、忘れがちだけど、この森で最強のモンスターだもんね。これくらい、へっちゃらか。


 見付けた20匹と共に、木に擬態している子の元に向かう。打ち合わせ通りに、皆で居ないな~という感じで周りをウロウロしてみる。


 あ~、嬉しそうにほくそ笑んでいる。葉っぱが小刻みに揺れ、三本の花はブンブン揺れている。どうしようかな? もう少しこのままにしてみようかな?


「居ないな~。どこに居るんだろうね~?」


 演技が下手くそでごめんなさい。でも、お互い様という事で気にしないでおこう。


「ドラ~?」

「クー?」


 皆も居ないねと顔を見合わせていると、更に揺れが激しくなり、大胆にもそろりそろりと横に動き始める。一回でいいから「隠れていませんから!」とツッコミたいなぁと思って目で追っていると、バチッと視線が合った。


「あ」

「ドラ⁉」


 声を上げたからもういいよね。捕まえちゃうぞ!


「みーつけた!」

「ド~ラ~」


 腰にあたる部分をガシッと掴むと、「やられた~」という感じでダラーンとする。ふふっ、良い反応するよね。


「これで全員だね。もう一回、かくれんぼしたい子は手を挙げて!」

「ドラー!」

「クー!」

「ふふふ、全員ね。今までで一番早く見付けちゃうからね!」

「ドラ⁉ ドララー!」


 お薬を私に渡すと、勇ましく駆けて行く。大変だ、本気にさせちゃったかな? でも、私も負けないんだからね!





 夕焼けで空が真っ赤になるまで遊び、一匹ずつ握手をする。


「今までありがとう、楽しかったよ。元気で過ごしてね」

「ドラ~。ドララ」


 私が森を出ても、入口の所でピョンピョン跳ねながら手を振ってくれている。はぁ、明日からは敵として会うんだもんね。でも、今は笑顔でお別れしよう。


「ありがとう、マンドラゴラちゃーん」


 私は何回も振り返って手を振りながら、その場を後にした。



☆= ☆= ☆=



 後日、運営さんからメールが届く。何だろうなと開くと――。


『イベント「マンドラゴラのかくれんぼ」が大変好評だった為、難易度を数段階設け、有料という形で復活させました。リッシュの森の入口に受付所がありますので、お楽しみ頂ければと思います』


 というものだった。やったー! またマンドラゴラちゃんに会えるのね! と急いで向かう。


「マンドラゴラちゃ~ん!」

「ド~ラ~!」


 そんな私を彼等はヘッドバンギングで迎えてくれた。ひゃあ、元気いっぱいね~。


「って、わぁっ⁉ 落ちてる、実が落ちてるよ! あーっ、綿毛まで!」


 慌てて止めると嬉しそうに笑いながら、地面に落ちた実や葉などをいじっている。何をしているんだろう? もっとよく見ようと身を乗り出すと、『見ちゃ駄目』という感じで腕をバッテンにされる。


「ん? 後ろを向くの? はーい、十数えるのね」


 かくれんぼを始める気になったのかなと思って、手で顔を覆って数える。


「もういいかーい?」

「ド~ラララ~」


 ふっふっふ、常連さんだから、声の調子で良いか悪いか分かっちゃうんだな、これが。


「さぁ、いくよ~。――っ!」


 泣きそうになった。だって、振り向いたそこには――。


『お・か・え・り』


 の文字が。ニコニコと私を見上げているマンドラゴラちゃん達の顔を見回し、私も笑顔でこう答える。


「ただいま!」、と。


 その日、私達は暗くなるまで遊び、一緒に居られる喜びを噛みしめたのだった。


すっかり仲良しになったお菊ちゃんとマンドラゴラちゃんです。

アイテムよりも会いたさに通うプレイヤーが続出です。


もう一話投稿できる、かも。


お読み頂きありがとうございました。

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