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51.私が中心?

 家亀が私に最適な理由を知る為には大きくなる必要があるという事で、門を出て南の街道へとやって来た。ナダさん、教えて下さいな!


「ははっ、そんなに熱い目で見られると照れるな。答えは、『甲羅の中に乗れる』だよ。亀吉君、よろしく」


 ナダさんが声を掛けると、一つ頷いて甲羅の側面が開いていく。まるで、ウィングボディのトラックみたいだ。


「クー!」


 全開になったのか、亀きっちゃんが鳴いて私を見る。乗っていいよって事かな? 靴を脱いで、そっと足を付ける。


「お邪魔しまーす」


 最大の姿になった亀きっちゃんの甲羅の中は、三畳ほどの広さがある。中は平らな床になっていて、私がギリギリ立てるくらいの高さだ。


「わぁ、お部屋みたい! 中はフカフカしていないんだね」


 そう言うと、一瞬でフカフカに変わった。私が乗りやすいように硬くしてくれたのね。


 寝転がりたいという誘惑に負けて横になると、ハデス君も乗り込んで横になる。二人で目を閉じて幸せな感触を味わう。


「フカフカだね~」

「そうだね、癖になりそう。ふぁ~……」


 秒で眠りに就けそうな寝心地。起き上がりたくないな~。


「丸くなっちゃって、日向ぼっこしている猫みたいだね~。よーし、よーし」


 サムさんが私の頭を撫でている間に、隣からスースーと寝息が聞こえてくる。


「はやっ⁉ どんだけ寝心地いいのさ!」


 その声で、ハデス君の体がビクッと跳ねて目を覚ます。


「……まさか、人前で寝るとは思わなかったな。どれだけ気を許しているんだか」


 そう呟きながら、私に手を差し伸べてくれる。警戒心が強い子なのかな? と思いながら身を起こす。


「家亀の中に椅子や机なんかの家具も置けるけど、大きさを変える時はしまわないといけないのが、ちょっとマイナスポイントかな。中の物も自動調節して欲しいよね」


 流石にそれは無理という感じで、亀きっちゃんが首を横に振る。ですよね~。


「じゃあ、次はお菊ちゃんが乗った状態で攻撃するからね。亀吉君、甲羅を閉めてくれるかな」


「クー」


 甲羅が閉まっても中は暗くならず、自然光の差し込む部屋という感じだ。静かで落ち着くなぁと思いながら腰を下ろす。


「お菊ちゃん、いくよー」

「はーい」


 でも、いくら待っても何も起こらない。ナダさん、本当に攻撃したのかな?


「次、いくよー。亀吉君、硬化してくれるかな」

「クー」


 更に防御力を上げる硬化をしてからの攻撃。なんの衝撃もないので、亀きっちゃんのステータスを見てみる。


「ダメージは――ゼロ?」

「終わったよー。開けてくれるかな」

「クー」

「――どうだった? 揺れたりしたかな?」


「いいえ、全く。何もなさすぎて、本当に攻撃しているのかなと思っちゃいました」


「じゃあ、さっきと同じ攻撃をしてみせるから、外で見ているといいよ」


 エフェクトガンを使うのかと思ったら、ナダさんが棘鉄球の付いた棒を取り出して肩に担ぐ。


「ちょ、ちょっと待って下さい! それで殴るんですか⁉」

「うん。さっきもこれでやったよね?」

「クー」


 ウンウンと頷く亀きっちゃんは、「どうぞ」という感じでシッポを振ってみせている。……私の感覚の方がおかしいのかな?


「いくよ。辛いだろうけど、目を瞑らずに見ていてね」


 フルスイングで甲羅に叩き込まれる棘鉄球。思わずという感じで体が勝手に動きそうになると、サムさんとハデス君が私を止める。


「いやぁぁっ! やめて!」


 ボフッ! っとくぐもった音を立てて体にめり込む棘鉄球。


「あっ、あ……放して! 放してっ! 亀きっちゃん!」


 半狂乱になって腕を振り解こうとしていると、足元に棒を放り投げたナダさんが私を強く抱き締める。


「ごめん、ごめんね。でも、よく見て? 傷一つ付いていないから」


 涙でぼやけた目を拭うと、オロオロしながら私に駆け寄って来る亀きっちゃんの姿が飛び込んで来る。そして、「ほら、大丈夫だよ?」いうように、殴られた場所を私に見せてくれる。


「――本当だ。怪我してない……」


 ほっとして体から力が抜ける。


「おっと。ね? 大丈夫だったでしょう?」


 体を支えてくれたナダさんが優しく笑い、親指で涙を拭ってくれる。


「はい。亀きっちゃん、痛くないの?」

「クー」


 何度も頷く姿を見て、本当に大丈夫なんだと大きく息を吐く。


「あのね、亀きっちゃんが傷付くなら、私を乗せてくれなくていいよ」


 その途端、頬を膨らませて目を吊り上げる。


「クー! クゥッ! クークー、クー!」


 何を言っているかは分からないけど、凄く怒られているのは分かった。


「でも……」

「クー!」


 でもじゃない! という感じで地面を踏み、甲羅を開いてみせる亀きっちゃん。


「お菊を守ることが、この子の喜びだよ。否定しては存在意義がないね」


 ハデス君の言葉に全員が頷く。分かっていないのは私だけ?


「だって、痛い思いなんて少ない方がいいでしょう?」

「クー、クー、クゥ」


「ふんふん、成程。サムさんが推理しますに、『大事な主様が傷付く姿を見る方が、ずっとずっと辛いよ』って事じゃないかな。どう? 合ってる?」


「クー♪」


 正解の様だ。でも、私だって同じ気持ちだよ。その考えを見透かしたかのように、ナダさんが視線を合わせて来る。


「いいかい? お菊ちゃんの最大の仕事はリボーンしない事だよ。お菊ちゃんが居なくなると、一緒にパーティーを組んでいる子は途方にくれる事になる。中心はしっかり立っていないと駄目なんだよ」


「私が中心?」


「そう。言い方は悪いけど、この子が倒れても他の子が応援に来れる。でもね、お菊ちゃんの代わりは居ないんだ。君さえ生きていれば、起死回生の一手を打つ事も逃げる事も出来る。お菊ちゃんの存在こそが、パーティー最大の武器なんだよ」


 私が武器……。例えステータスが一番低くても、沢山の選択肢を握っていれば、守る事も勝利に導く事も出来る? 全てを良きことに変えられる力が私にもあるの?


「適材適所だよね。戦闘で起きる全ての事に対して、パーティー全員で力を合わせて立ち向かうのさ!」


 そう言って、サムさんが戦隊ヒーローのように腕を斜めに上げてポージングする。亀きっちゃんも真似したいようだけど、上手く出来ないみたいだ。手足の長さが足りないのかな? もしょもしょ動くさまも可愛い!


「今見たように、この子は防御力が高いんだけど、攻撃力は低いんだ。だから、次は攻撃力がある子をテイムするといいね」


 ハデス君の補足説明に首を傾げる。高そうな子なら目の前に居るよね?


「ハデス君、家亀を一撃で倒していたでしょう。攻撃力高そうだよね? ステータスを見せて貰ってもいい?」


「いいよ」


 ワクワクしながら見てみると、LV99で後は全部『???』になっていた。ステータス画面が壊れちゃったのかな?


「ねぇ、ハデス君。はてなになっちゃってるよ」


「やっぱり見えないか。僕はちょっと特殊だから許してね。それに、僕はあまり戦闘に参加しない方が良いと思っているんだ。お菊達自身で経験を積み上げて欲しいからね」


 そっか。最高レベルに達しているハデス君に、寄り掛かってちゃ駄目だよね。テイムした子と一緒に頑張るのだ!


「分かった。ハデス君はお師匠様みたいな感じなのね。そうと決まればレベル上げだね、亀きっちゃん!」


 やる気十分に鳴く亀きっちゃんを抱き上げる。どのエリアに行こうかな?


「こういう時、あっさり引く人間って少ないから、お菊の良さが際立つよね」

「そうですね。お菊ちゃんは最高の女性ですよ」

「ナダさん、ベタ惚れですね~」

「悪いか。サム、手出ししたら分かっているだろうな?」


「ひぃっ、なんて凶悪な面構え⁉ トニー、早く帰って来てー! 独りじゃ立ち向かえないよ~~~!」


 サムさんが叫んでいる。またナダさんにちょっかいを出したのかな? じゃれ合うのが好きよね。


 マップを開くと、亀きっちゃんがキヨ滝を鼻でタッチする。ふふふ、了解。明日の仕事終わりは、キヨ滝へゴー!


家亀は中に乗れるのでした~。

皆様の予想は当たりましたでしょうか? って、バレバレですかね(〃´∪`〃)ゞ


お読みいただきありがとうございました。

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