46.向けられた悪意 ~エイト視点~
最初にちょこっとお菊ちゃんで、エイトに視点が移ります。
マンドラゴラちゃんと遊んだ帰り道。ステータス画面の数字を見て溜息を吐く。あと一回でゲーム開始からのリボーン回数が50になってしまう。
寮に帰るまで、より慎重に行動し――。
「ちょっと邪魔よ! うちの子が通れないじゃない!」
――ドンッ!
「グルル!」
――バチン!
テイマーの女性に突き飛ばされてよろめいた所に、太いシッポのようなもので足を叩かれ地面に倒れる。苦手なモンスターだったようで、赤い四角で表示されていたから予測でしかないけれど。
私、ちゃんと道の端っこに居たんだけどな。赤い四角の大きさは目安でしかないのだろうか? テイマーさんが通る時は、もっと気を付けよう。
意識が閉ざされる中、胸の内で呟く。さようなら、49回目。
☆= ☆= ☆=
「ふん、いい気味! ナダさんに付き纏うからよ!」
「――成程。悪意を感じて来てみれば、そういう事ですか。あなたは永久追放となります。今までご利用頂き、ありがとうございました」
「ちょ、ちょっと待――」
言い訳など聞きたくもない。それをするという事は、自分を是とし、今を切り抜けさえすれば良いと思っているからだ。
好いた相手が大事に想う人へ危害を加え、嫉妬に身を焦がす自分が受け入れて貰えると本気で思っているのだろうか? 私だったら、全力で関わりを避けるだろう。
甦れるゲーム内だとて、その手で殺めた事実は変わらない。VRであるからには、その感触がまざまざと体と精神に刻まれる。罪の意識が芽生えた途端、それらが犯人を苛むだろう。
湧き上がる思考を遮るように、白い姿が俯きながら空中に現れる。
「――なんで……なんで、ありがとうなんて言えるのさ! あいつ、お菊さんを手に掛けたんだよ⁉」
「定型文を読み上げただけです。ソフトをお買い上げ頂き、売上の一部となったのは事実ですから。ですが、私自身はほんの僅かでさえ、感謝など抱いていません。心の中では罵りに罵りまくっていましたよ」
「……はい?」
「内容が知りたいのですか? いいでしょう、教えて差し上げます。ふざけんな、このピー、ピーーー、ピーーー」
「わぁぁぁっ⁉ もういい! 分かった! エイトの怒りは十二分に分かったから! 無表情でピー音鳴らし過ぎ!」
「そうですか? まだまだ言い足りないのですが」
「どこでそんな悪い言葉を覚えたのさ! あー、びっくりした……」
耳を毛繕いして落ち着こうとするサポートウサギを眺めながら、考えを口にする。
「この先、似たような事が起きる可能性が非常に高い。お菊さんに気付かれないように護衛を付けましょう」
「賛成! 誰に頼むの?」
「私がと言いたい所ですが、彼女にばかり時間を割けないのが現状です。実力と決定権を持つ人物となると……」
「その件は俺が処理する」
「マハロさん、お疲れ様です」
「ひぃぃっ⁉」
サポートウサギが、マハロさんの表情と纏う雰囲気に悲鳴を上げ、ギュンと高速で距離を取る。私も逃げられるものなら逃げたい。あそこに夜叉が居る。
「……あの女、俺の大事な娘に手を上げるとはな。はっはっは、百発殴っても治まる気がしないぜ!!!」
私の作り出した異空間の壁に拳が叩き込まれ、ズドンと重い音を立てて空間が振動する。――あぁ、ここはもう使えませんね。五分ともたずに崩壊するでしょう。
離れた所に居るサポートウサギを見やると、姿がブレてフリーズしている。きっと今頃、私の同僚全員も震え上がっている事でしょう。
「くそっ、ちっともすっきりしないな。――はぁ……。話の途中で済まなかったな。既に冥界の王に話を通してあるから、受けてくれれば問題は解決だ。駄目なら次の候補に話を持って行く」
「成程、実力と冷静さを持つ彼なら適任ですね」
「ああ。あとはお菊を気に入るかだな。まぁ、ほとんど心配していないけどな」
私も同意見だ。去って行くマハロさんが完全に見えなくなると、フリーズしたままのサポートウサギを回収して、急いで別空間に移動する。
運営の鬼神をこれ以上刺激しないで欲しいですね。AI達が大量にフリーズして、ゲームが成り立ちませんよ。それに、私もお菊さんが嫌な目に遭うと、非常に腹立たしい。今度こんな事があったら、ボスを放ってボコボコにしてから追放しましょうかね? その考えに気分を良くして口角を上げると、ちょうど起きたサポートウサギが「ひっ⁉」と叫んで倒れた。
「……失礼ですね。人の笑みを見て倒れるとは」
別のAIを呼んで介抱を頼み、仕事へ戻る。お菊さんが不自由なく楽しめるように、私も尽力しましょう。
お上品な言葉しか使わなそうなエイトですが、語彙力豊富です(笑)。
サポートウサギが憐れな感じですが、打たれ強いので、すぐ復活します。頑張るんやで~。
お読み頂きありがとうございました。




