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32.頭痛 ~マハロ(内藤)視点~

 忘れていた仕事を一個片付けに預モンへ戻ると、『相談したい事があります』と机にメモが置いてある。急用のようなのでナダに話を聞きに行くと、リミッターがおかしいと訴えられた。――ふむ。一番詳しい常盤に話を聞きに行くか。


「常盤、今いいか?」

「あら、内藤さん、お疲れ様です。大丈夫ですよ。どうしたんですか?」


「ナダから相談を受けてな。リミッターが有り得ない速さで解放されて、今LV6なんだと。バグだと思うか?」


「ええーーーっ、LV6⁉ 恋人レベルじゃない!」


 思いっきり叫んだな。びっくりしている周りの奴等に片手拝みしておく。


「す、すみません。お騒がせしました」


 ぺこぺこと頭を下げる常盤と共に会議室へ向かう。


「――それで、ナダ君自身は思い当たる原因があるって言っていましたか?」

「ああ。お菊と会うたびにポロポロ外れるんだと」

「お菊ちゃんですか……。ちょっとナダ君の記録映像を見てもいいですか?」

「ああ」


 早回しで確認し終えると、頭痛でもするのか、おでこに手を当てている。


「……原因分かりました」

「そうか。やっぱりお菊か?」

「はい。この短期間でリミッター解放条件を次から次へと達成しています」

「どれがそうなんだ?」


 聞くと映像を巻き戻して止める。トワイフルを庇った時か。


「まず、ここです。『ドキッ! 不意の身体接触! 意識し始める瞬間』です」

「……は? 何だ、それ?」


「だから、解放条件ですよ。あとはこれ。『赤面で上目遣い。俺の忍耐試してる?』とか」


 ……頭痛がする。何だ、そのキャッチコピー的なやつ。


「それ考えたの常盤か?」

「勿論! あとは――」

「いや、もう十分だ。乙女ゲームのノリにおっさんはついていけない」


「もう、おっさんとか言っちゃって~。兎に角ですね、バグじゃなくてお菊ちゃんの偉業です。この子ってナダ君の為に居る様な子ですよ。最強ヒロインで間違いなしです!」


 嬉しそうに言われてもな。お菊に恋愛感情が芽生えていない段階でグイグイ行ったら、避けられるんじゃないのか? 俺やトワイフルの影に隠れている姿がありありと思い浮かぶ。


「リミッターって元に戻るんだったか?」


「いいえ、その人物によって解放されたものは戻りません。でも、抑える必要があるのかしら? リミッターの解放って喜ばしい事でしょう?」


「普通はな。序盤で一気に開放されて、相手の感情が全く伴っていない場合は、お互いに傷付くだけだろう」


「うーん……。じゃあ、こうしたらどうでしょう? 相手の様子を見て、ナダ君自身が段階的に操作するんです。リミッター替わりになるアイテムを急遽作って貰います」


「そうだな。そうしてくれるか」



☆= ☆= ☆=



 溜まっていた仕事を片付けて食堂で休憩を取っていると、イベント進行を担当しているスタッフがやって来る。


「内藤さん、お疲れ様です。LV5以上のプレイヤーが80%超えたんで、進めちゃっていいですか?」


「ああ。何時からやる?」


「16時55分に開始します。17時からサーバーに負荷かかるんで、不具合があっても大丈夫なように担当者に声掛けてあります」


「了解。緊急メンテする羽目にならないといいんだがな」


「そうですね。βテストの時に試して大丈夫だったんで、いけると思いますけど、念の為って事で」


 頷いて茶を飲み干す。さてと、もう一仕事するか。



☆= ☆= ☆=



 区切りが付いた所で顔を上げ、壁の時計を見る。もうそろそろ開始か。お菊、びっくりして腰抜かさないといいが。小さく笑いながら、キーボードを叩こうとした手がふと止まる。


 ――待てよ。まずいんじゃないか? あの子、17時頃に大体ログアウトしているよな。気付いた俺は慌てて、時告げの世界へ向かう。頼む、間に合ってくれ!


リミッターがおかしい訳じゃありませんでした~。最強ヒロイン、お菊。凄いですね(笑)。


お読み頂きありがとうございました。

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