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13.『預モン』にようこそ

 お昼を食べる為にVRスーツを一旦脱ぐ。長い時間を過ごしたように感じるけど、まだお昼。なんだか得をした気分だ。


 おにぎりを作って齧り付いていると、健二君からメールが来た。――うん、タラコ美味しい。



『姉ちゃん、無事にゲームは始められたか? 困っている事があったら、遠慮なく聞いてくれよな』



 ありがたいなぁと思いながら、スマホを操作して返信する。私もこれぐらいは出来るのです! と胸を張りたい所だけど、健二君に懇切丁寧に教えて貰いました。機械って難しいよね……。



『健二君のお蔭でちゃんと始められたよ。ありがとう!


 でもね、設定を変える時とかに、なんの感触も無い空中を指でタッチするのが、ちょっと苦手。思っている距離感と違うっていうか……。そこじゃないよって所によく触っちゃうの。慣れるしかないのかな?』



 送信っと。二つ目のおにぎりを食べ始めた所で返信が来た。――うん、昆布も安定の美味しさだ。



『無事に始められたのなら良かったよ。


 タッチ操作については、やっぱり慣れかな。でもさ、姉ちゃんが選んだターン制のパックだと良い物が付いてるんだよ。


 ステータス→設定→操作の順にタッチして、『コントローラー』を選択してくれ。そうしたら、アイテムボックスの中にあるから、取り出して使うといい。再度しまう事も出来るからな。


 Aボタン・・・ステータスオープン

 Bボタン・・・決定

 Cボタン・・・キャンセル


 このボタン三つと十字キー、スティックが主に使うやつかな。詳しい事はサポートウサギに聞くといいよ。


 それじゃあ楽しんでくれよな。俺も詳しく聞かせて貰うのを楽しみにしているからさ。またな』



 やっぱり健二君って凄いなぁ。プレイしていないのに、私よりも圧倒的に詳しい。向こうに行ったらすぐに試してみようっと。



☆= ☆= ☆=



 ご飯を食べ終え、食後の休憩もしっかりして再度ログインする。


「――へぇ、始まりの鐘じゃなくてログアウトした場所に戻って来るんだ」


 感心していると、ノックの音が響く。


「お菊、居るか?」

「はーい」


 マハロさんだ! と扉を勢い良く開ける。


「おっと、元気いっぱいだな。だが、ちゃんと確認してから開けたか?」


 スッと目を逸らすと、全然痛くないチョップがウサギ耳の間に落とされる。


「今度から気を付けるように。さて、詳しい話と案内をするからな。だが、その前に――。お菊、『(アズ)モン』にようこそ」


 握手の為に差し出された手を私は満面の笑みで握り返した。



☆= ☆= ☆=



 モンスター預かり所。略して『預モン』。今日から私はここで働く事になる。


「テイマーが連れ歩けるのは最大三体。それを超えてテイムすると、最大五体までを預モンに預けられる。俺達はそんなモンスター達の面倒を見るのが仕事だな」


 女子寮を出て、テクテクと巨大な建物が並ぶ一角へと向かう。時々出会う人に会釈しながら、マハロさんの指さす方向へと目を向ける。


「女子寮の前にあるのが管理センターで、男子寮の前のは倉庫。そして、その後ろにあるどでかい建物が厩舎だ。今の所はAからZまである。テイマーが増えたら、横の余っている土地に増設していく予定だ」


 広大な更地が広がっている。だけど、たった二十人で百体だもんね。これだけで足りるのかな? 私の疑問が分かったのか、マハロさんが指を三本立てる。


「預モンは『浮雲支部』、『波浪支部』、『森羅本部』の三つから成る。森羅本部は遊楽で今居る所だな。施設の中では最大規模だ。他二つは小さな支部でほとんど機能していない。テイマーが増えたら本格始動していく予定だ」


 頷きたい所だけど、幾つものハテナマークを飛ばしてしまう。森羅とかって国の名前? それに、遊楽にこんな広い場所があったかな? 地図に載ってなかったと思うんだけど……。


 マハロさんは私の反応を楽しそうに眺めながら、A厩舎の前で止まる。


「お菊が所属するAチームの奴らを連れて来るから、その間にヘルプで調べてみろ。預モンの事は詳しく載っていないから、それは俺が後で教えてやる」


「了解です、所長!」


 調子に乗って敬礼してみせる。現実だとやるのを躊躇っちゃうけど、ゲーム内でくらい遠慮せずに自分を出してみたいのだ。


「ははは、マハロでいいって。お菊は会長や所長を間違えそうだからな」

「うっ、よくお分かりで……」


 マハロ商会に居る時に、うっかり所長って言ってしまうに決まっている。呼び名は統一。これ大事。


「よし。良い子で待ってろよ」


 私の頭をわしゃわしゃ撫でて行ってしまった。何だかトワイフルちゃんの扱いと似ている気が……。ちょっと微妙な気分だけど、親し気な仕草が嬉しいのも事実で。緩む頬を押さえながらヘルプを開く。


「ええと、どれを見ればいいのかな……。『時告げの鐘について』でいいのかな?」


 取り敢えず、これをポチッと。



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VRMMORPG『時告げの鐘』では、時告げの鐘が鳴っている間だけ世界を移動する事が出来ます(現実時間で1時間毎、3分間)。移動出来る世界は『浮雲』、『波浪』、『森羅』の三つです。三つの世界の頂点に立つのは、竜神『久遠くおん』。


+++++ +++++ +++++ +++++ +++++



 へぇ、さっき言っていたのは世界の名前だったんだ。鐘が鳴っている間だけって事は、それ以外の時は行けないって事かな?


 次々湧いてくる疑問は後で調べよう。まずは世界についてだよね。



+++++ +++++ +++++ +++++ +++++


浮雲ウキグモ・・・空中にある世界。一つの大きな大陸ではなく、ある程度の大きさの島が五つ、雲上に散らばっている。時告げの鐘が空の島にある。


空中を移動する手段(乗り物や生物など)が発達している。


天使『清白スズシロ』が治めている。主な住人も天使。


空に関する素材が採れる。


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波浪ハロウ・・・水上都市・陽揺ヨウユと海底都市・静佇セイチョで一つの世界。移動は超高速水中エレベーターや転移陣、生物など。


五つの島からなる水上都市は橋で繋がっているので、徒歩で移動可能。リゾート島・時忘トキワスレに行くには入島料がかかる。モンスターが居るエリアには船か生物で向かう。


人魚『煌来コウキ』が治めている。主な住人も人魚(二足に変化する事が可能)。


海に関する素材が採れる。


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森羅シンラ・・・様々な種族が住む五つの都市がある世界。人々は街道・転移陣を使って移動している。


魔人『夜深ヤシン』が治めている。


大地に関する素材が採れる。


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 天使や人魚だって! ファンタジーな世界に来たって強く感じるよね。今からお話するのが楽しみで仕方ない。


 マハロさんは遊楽があるのは森羅だって言っていたから、魔人が治めているって事だよね。『魔』なんて文字が入っているから、何だか勝手に悪いイメージを抱いてしまうけど、実際の所はどうなのだろうか? 町は平和そうに見えたけどなぁ。


預モンに就職したお菊ちゃん。ロイヤルハニーベアーの事しか頭にないので、時告げの事はよく知らずにゲームしています。ヘルプじゃなく僕に聞いて! とサポウサちゃんが思っていそうですね~。


お読み頂きありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、お菊は、ラノベさえ読まない『文盲』系?なのかな それとも、一般の雑誌以外は新聞だけの真面目一直線なのかな? うーん 基礎知識無しのファンタジー系ゲームは、難しいよね~ …
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