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『七行詩集』

七行詩 551.~560.

作者: s.h.n

『七行詩』


551.


男は短慮で 時々詩人で


愛と仕事さえあればいい


その全てを持った彼が


私が欲しいと言うのだけど


すぐに手に入れさせては駄目


蝶のように ひらりと躱し


追いかけることを 覚えさせねばならぬでしょう



552.


男は愚かで 時々真面目で


愛と根気さえあればいい


スープは弱火で焦らすのが


最後には楽しめるものだから


お支度しましょう だけど彼に知られては駄目


砂のように するりと抜けて


拾うことを 覚えさせねばならぬでしょう



553.


愛に生かされているのだと


貴方が来る度 そう思う


どんな喜びも 驚きも 貴方がくれるものだから


「もっと驚くと思った」と


貴方はつまらぬようだけど


私の喜びの深さも 貴方は知らないのでしょう


奇跡は生き続ける ふたりが二人でいる限り



554.


人に花束を送るとき


返礼は望まないように


瞳を閉じて祈るとき


私は貴方に 捧げ続けると決めました


この身も 心も 貴方の持ち物であるうちは


貴方の手の触れる距離にある


私はそれを 傍で待ち続けたいのです



555.


握った手が汗ばんでしまうのは


どう誤魔化したものだろうか


二つの熱を 結んだ手の中に閉じ込めるなら


それは当然のことなのに


光の街は 恋人たちを祝福し


一人も 独りではなくなる


冬にはあたたかな光景が いくつも見られるから



556.


肉体という容れ物は


想いの花を 活けるための花瓶であり


涙で満たし 心を一葉 浮かべれば


覗き込む先の 多様な姿は


万華鏡のように 二度と戻らぬものである


膨らみ 傷つき 色を変えては


その瞬間の 美しさを見せ続ける



557.


真冬の朝 震える体は


恋煩いと同じように


胸の中央を暖めようと


自らにしがみついては


そのまま強く 締め付けて


静かな空の薄明かりにも


逃がさず 繋ぎ止めようとする



558.


冬の寒さが 心の温度と同じなら


まるで 優しく寄り添ってくれるようで


誰かが編んだマフラーは


肌から温もりを逃がさず


涙はこんなに あたたかい


長い夜は すぐ傍にいてくれて


一人じゃないと 言われているような気がする



559.


あらゆる贅沢を尽くしたら


今日は一杯のコーヒーだけ


貴方の元気な顔を見れば


どんな言葉より 深い息づかいを感じる


他の何かで満たすことはせず


器が空なら 空のまま


貴方から 得られるすべてを迎え入れたい



560.


聖なる夜 遠くの人に 祈るには


灯りはいくつ 必要か


ロウソクは何本 必要か


母の傍で 一つの命をあたためて


家族を支える 木を飾り


揃って食卓を囲むのは


もう何度目のことなのだろう






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