死
俺の名前は神代桔梗。東京都港区にある科沢高校の生徒だ。
今日も部活を終えて、家に帰るバスに乗っているところだ。
いつもと何一つ変わらない日常。これが明日も明後日も続いて行くと、俺は信じきっていた。
「──運転手さん?」
運転手さんは寝ていた。それはもう日向ぼっこする猫みたいに気持ち良さそうに。
当然これには俺もパニックに陥るわけで、揺すって起こそうとしたが、意味をなさず、トラックの荷台にバスは直撃した。
俺は、運転手さんと一緒に、圧死した。
‥‥‥
‥‥
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『意識がある。死んでない?』
目覚めたときはそんな希望を抱いたりもしたが、すぐに希望は摘み取られた。誰もが俺に気づかない。しかも俺を貫通して歩いていく人もいる。
「はい現場の小泉です。見ての通り、トラックに衝突したバスの前方が潰れています。今は乗車していた人たちの救出作業が行われています。救出された人の話によると、潰れた前方には眠っていた運転手を起こそうとした高校生がいたとのことです。死傷者は運転手とその少年の2人です」
『おい、夢だよな?俺、死んでないよな?』
しかし俺は死んでいた。その事実は変わらなかった。
『──とりあえず、帰るか』
俺は歩いて家に帰ることにした。
‥‥‥
‥‥
‥
「嘘、これって桔梗が乗っていたバスよね?」
家に帰るとさっきのニュースが流れていた。さすがに死んだという事実は受けとめられた。今俺は、いつ成仏とか転生とかするんだろう?って考えている。
『ごめん母さん。その死んだ少年って俺だ』
聞こえるはずもないが、一応謝っておく。母さんの悲しみは俺では計り知れない。
「父さんに連絡しないと!」
母さんは父さんの勤めている会社に電話をかけた。
俺は親への罪悪感で見ていることが出来ず、部屋へと逃げ込んだ。