Half Dragon
なろうファンタジー企画小説です
企画参加もこれで2回目…
お世話になります
異世界――――
この世界には様々な人種がいる
半狼、 半魚、 半犬、 半猫……
その中でももっとも恐れられていた人種――
その名は………
半龍
「待てやぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 」
「待てと言われて待つアホがいるかぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 」
1人の少女が男を追っている
少女は半狼で、 名をアイラといった
一方逃げているこの男
ゴロウという名のこの男は普通の人だ
さっき近くの店で食い逃げをし、 警官であるアイラに追われているのだ
たらふく食べたためか、 ゴロウの足は速い
だが、 半狼であるアイラの足の方がはるかに速い
あっという間にゴロウは追いつかれた
そして、
「“狼爪”!!! 」
半狼は狼のような持久力、 速さ、 耳に加え
身体の一部、 爪、 牙が異様に固くなっている
彼女が繰り出した一閃はゴロウの背中を切り裂き、 ゴロウはバランスを崩し、 倒れる
「うぉっ!! 」
「よしっ!! 」
倒れたところに
『かかれぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!!! 』
『…………え? 』
“待機していた”警官たちが“一斉”に襲いかかった
『逮捕ぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉ!! 』
『えぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!?!? 』
“一斉”に襲いかかった警官たちに思わず突っ込みが揃うアイラとゴロウだった
「ふっ!! ざけんなぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 」
「もちつけ、 じゃなくておちつけ」
酒場――――
昼に起こった“奇跡的な”逮捕劇
アイラはこれにぶちギレていた
ココ、 ヴィリアンは非常に平和で警官たちも退屈していた
訓練は怠らないところがすばらしいが、 それでもヒマなものはヒマだ
そのため、 たかが食い逃げ、 スリ程度ですら全員が出動するという摩訶不思議な現象がおこっていた
平和といえば平和
退屈といえば退屈
アイラはこんな日々に退屈していた
「そもそもなんでワタシはココにいるんだろう…」
「そんなにイヤならこの街から出ていけば? 」
「うぅ…それもイヤだ……」
アイラと酒を飲み交わしながら話し合っている小柄な少女は彼女の親友リリス
彼女は普通の人間で、 人種学者だ
人種学者というのはそれぞれの人種の能力の差や、 特徴を調べる職業だ
無論、 それぞれの弱点を熟知しているためアイラは彼女に喧嘩で勝ったことがない
「もういい!! もう今日は呑むぞ!!! 」
「いや、 明日も仕事があるんじゃ…? 」
「気にすんな―――!! お代わりぃ!! 」
「へい!! 毎度!! 」
ちなみに彼女は閉店まで飲み続けた
「…ボクもう帰っていい…? 」
「ムリ!! 」
哀れ、 リリス
翌朝―――
「遅刻だぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 」
「知らないよ、 ボクは今日は休みだからゆっくりできるけど、 君は自業自得だろ」
「なんとかならないの!? 」
「ならない」
焦って走り出すアイラに呆れ果てるリリス
ちなみに、 リリスも走っている
「なんとかしてよ!! チビ!! 」
「たしか半狼の弱点は……」
「ゴメン。 私が全面的に悪かった。 」
アイラの悪口に本気で対応するリリス
そして、 謝るアイラ
弱い
と、
《…リ…! 聞こえ…か!? リリ…!! 》
「……あぁ!? 」
警官に支給されている安物の無線機から聞こえてきたのは警察署の署長の声
電波状況が悪いのか、 雑音がところどころ悪く、 聞き取りにくい
《……交差……暴れ……いる!! お前…来るな!!! 》
『…………
ちょっと待てぇ!?!? 』
警察の出番のはずなのに、 署長から下されたのは“待機”命令
これにはアイラだけではなくリリスも突っ込んだ
そのあまりの大きさに周りの人々が一斉に振り返るほど
「署長!? なんでですか!? 」
安物の無線機に怒鳴り散らすアイラ
普通は強敵だからなどの理由があるだろう
リリスは突っ込んだあとにそう連想した
だが、
《久……大手…んだ!! い…か! “絶対に”く……!! 》
通信終了
『………………』
しばし、 無言になる2人
とても聞き取りにくかったが、 おそらく
“久々の大手柄なんだ!! いいか! 絶対に来るな!! ”と言いたかったのだろう
「……アイラどうする? 」
肩をワナワナと振るわせるアイラに恐る恐る尋ねるリリス
「…………」
いまだ無言のアイラ
見れば握りしめた拳から血が流れている
触らぬ神になんとやら
リリスはいまだ身体を振るわせているアイラから6歩ほど離れる
爆発5秒前
4
3
2
1
「ふっざっけんなぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!
あぁんのぉおぉぉ……………!!
ツルッぱげぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!!!!!! 」
彼女の雄叫びはここ、 ヴィリアンに響きわたった
ひとしきり署長の暴言を叫びまくったあと、 リリスはアイラに恐る恐る聞いてみた
「………で? どうするのさ? 」
「無論! オムロン!! 交差点に行く!!! 」
「あ、 そう……」
リリスはもうなにも言わなかった
こういう状態の彼女にはもうなにを言ってもムダだからだ
走り出したアイラとは逆の方向へ、 リリスは駆け出した
ゼイゼイと息を切らせながら、 こんなことならもっと運動しとくべきだった、 と後悔しながらもリリスはある大きな建物へと入っていった
そこは彼女が勤める研究所だった
そこから様子を見ようと思ったのである
「あ! リリス助教授! 大変です!! 」
「どうしたの!? 危険性の高い薬品が流出した!? 」
助手の慌てた声にリリスの心も焦った
研究所には毒性や酸性の高い薬品も多い
それがたとえ1つでも流出すれば、 バイオハザードものになるものも少なくはない
「違うんです!! あれを! 」
「…………
…え……? 」
助手が指し示した窓の外、 交差点には次々と薙ぎ倒されていく屈強な警官たち
そして、 その中心にいた人種
額には鬼のような角
背中にはコウモリのような翼
そして、 左頬や左腕などところどころで変化している魚のようなウロコ
その姿を見たリリスは手を驚きと恐怖に振るわせながらその種族名を呟いた
「……………
半龍……!!! 」
「ど、 どうしますか!? 」
恐怖にパニックになる助手たち
「所長は!? 教授たちは!? 」
「全員休暇をとっています!! 」
「…………!! 」
そう、 それは
今この場で半龍にもっとも詳しい人物は
リリスということになる
「どうしますか!? 」
「………“アレ”を20g持ってきて」
「……ア、 “アレ”ですか!? 」
助手の慌てふためいた姿とは別に急に冷静さを取り戻したリリス
バタバタと駆けていく助手たちを背中で見送りながら交差点を見つめるリリス
そこに現れた人物―――
「………アイラ…!? 」
「助教授!! 持ってきました!! 」
驚くリリスに息を切らせながら近づいてきた助手
「ハイ! ライ麦パン20グr「ちがぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁう!!! 」え!? 大好物ですよね!? 」
助手のあまりのボケボケっぷりに、 思わず殴りそうになったリリスだった
アイラは目の前の光景を一瞬疑った
鍛え上げられた警官たちが全員倒れているのだ
「……ハゲ署長…!? 」
「…普通に署長でいいから…」
「……新手か」
声の主は謎の人種
半龍なのだが人種学者ではないアイラにはそんなことは分かるはずもない
「何者だ? お前……」
「俺か? 俺は……
半龍のガイガ様だぁ!! 」
「…………!! 」
ガイガの自己紹介に驚いたように目を開くアイラ
それに満足さたようにガイガか畳み掛ける
「ふん、 おじけついt「狼爪!! 」え…? 」
ガイガの戦闘体型が整う前にアイラは硬質化した爪で斬りかかる
半狼の爪は鋼の剣並みに硬い
だが、 その一閃はガイガのウロコが生えた腕に阻まれた
鋼同士がぶつかり合うような鋭い音が響く
「……なっ…!? 」
「フハハハハ! ムダムダムダァ!! 俺の身体はあらゆる攻撃を無効化するのだ!! 」
「くそぉ!! 狼牙!! 」
勢いよくかぶりついたがアイラの牙はウロコにとどくことなく、
ガイガの高笑いが響く
「……ムダだというのが分からんのかぁ!! 」
ガイガの拳がアイラのアゴに命中した
2、 3回転したあと受け身をとりつつ倒れこんだアイラは起き上がると同時に口から血を吐く
そこには折れた歯が混じっていた
「……くそっ…」
「フン、 これが半龍と他の下等種との違いだ」
口から血を滴れつつ意外にも気丈に立ち上がるアイラに対し、 それをハッタリだと思ったガイガは嘲笑う
だが、 アイラが立ち上がったのはハッタリでもなんでもない
半狼はシブトイ
半人種は普通の人間と比べて全体的な能力が高い
その中で半狼の耐久力は半龍に匹敵するとも言われている
だが、 半龍は伝説に近い存在だ
その差は開いているのはさっき見たとうりだ
「…しょせんは下等種……
俺の敵ではない!! 」
「…それはどうかな? 」
謎の声と共に、 赤い液体が入った試験管がガイガめがけて投げつけられる
その試験管はガイガにぶつかると、 一瞬で砕け、 赤い液体を撒き散らす
赤い液体はガイガのウロコを溶かしはじめる
苦痛に顔をしかめるガイガ
そう、 赤い液体の正体は“酸”だ
森羅万象、 あらゆる生命体の弱点である酸
いかに半龍の皮膚が堅固を誇ろうとも、 酸の化学反応の前にはただ体を溶かすのみ
だが、 半龍にはもっと別の弱点があるのだが……
アイラは酸を投げつけた人物を見据え、 その名を叫んだ
「リリス!! 」
「まったく…大丈夫? 」
呆れたようにアイラを心配するリリス
「しぶとさだけなら天下一品!! 」
「あっそ……」
「あ、 なに? その信じてない目は? あぁ? 」
「いや、 信じているけどさ………」
「待てぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえい!!!
俺を忘れるなぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 」
2人の会話に割り込む、 ガイガ
さっきから忘れられていたのだ
さっきの叫び声に2人の反応
『あ、 いたの』
冷酷すぎる
「貴様らぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!
殺す!! ぶっ殺す!! 」
「殺す? あなたには私を殺すことなど……
決してできない」
リリスに突進するガイガ
リリスは懐から1本の試験管を取り出すとガイガに投げつける
「ふん! そんなものが喰らうでm「思ってる!! 」!? 」
避けようとするガイガ
だが、 リリスは懐からあるものを取り出した
「行け!! “ヴァンリング”!! 」
流れ出たのは金色のチャクラム―――
昔々、 古代文明があった
古代文明に暮らす彼らは圧倒的な軍事力を持っていた
そして、 人の精神に反応して動く特殊な金属があった
リリスが取り出したのもその一種だ
金色のチャクラムは美しい流線を描きながらガイガに、 いや、 試験管目掛けて突撃する
そして、 叩き割る
ヴァンリングはガイガに1つも当たることなく、 再びリリスの元に戻っていく
そして、 ガイガは
試験管の中身―――半透明な液体のほとんどをその身に浴びていた
対して異変は起こらないようだ
今は
「…ふ、 ふははははははははは!!
こんな液体など通用しない!! 」
「3……
2……
1……」
「ん? なにを…!! 」
ガイガの足が凍りつく
腕も
手も
腰も
さっき液体がかかったところが凍りついていく
「き…きさま…!! …なにを…!? 」
ガイガの口から白い息がもれる
そんなガイガの姿を見て、 満足そうに言い返すリリス
「半龍の最大の弱点……それは…
寒さに弱いこと」
「……寒さ!? 」
アイラが聞き返す
リリスは肩をすくめながら答えた
「森羅万象さまざまなモノには必ず弱点がある
犬の弱点がカカオのように」
ちなみに豆知識だが、 犬はチョコレートを食べると死ぬ
チョコレートの中に含まれているカカオが犬にとって有毒だからだ
「そして、 半龍の弱点は寒さ
さっき投げたのは瞬間冷却剤、 強力なね」
「…ふ! ふざけるなぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!! 」
叫び、 暴れるガイガだが、 少しずつその身体は凍りついていく
アイラはしっかりとした足取りで、 ガイガの前に立つと拳を握りしめる
「……お前の…敗けだぁ!!! 」
顎への一撃
その一撃の威力は地面に凍りついてくっついたはずのガイガの身体を浮かすほど強力だった
そのままダウン
ガイガは完全に目を回していて、 しばらく起きそうにない
アイラは懐から手錠を取り出すと、 ガイガの手にかける
「…え〜と…とりあえず“公務執行妨害・傷害罪”の現行犯で逮捕する! 」
カシャンと乾いた音が響いた
エアポート―――
そこではちょうど魔石の1種、 飛行石を利用した空飛ぶ船……飛行船は大量の風をおこしながら着陸した
次々と飛行船から降りていく乗客たち
その中にメガネをかけた長身の男性がいた
エアポートにいたリリスはその人物を見つけると走りだし、 飛び付く
「あなた!! 」
「ただいま…リリス!! 」
イチャイチャイチャイチャ
「………あの〜」
リリスとともにエアポートに来ていたアイラがリリスに尋ねた
「な〜に〜? 」
「そちらは? …もう大体分かるけど…」
「旦那♪」
「そう、 かr…って、 えぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!?!?
だ、 旦那ぁ!?!?!? 」
「あ、 妻がお世話になりました」
「つ、 妻ぁ!?!? 」
“あんぐり”という擬音の代表に推薦したくなるほど呆然としているアイラに対してまたイチャイチャしだすバカ夫婦
「リ、 リリス!? 結婚してたの!? 」
「してないって言った? 」
……………
あのあと、 ガイガは警察に無事、 連行されていった
アイラはその活躍が認められ、 今から中央に研修に行くことになる
……実際は研修に行くはずだった奴が、 今回の事件で全治5ヶ月の重傷を負ったためなのだが…
リリスも“実は今日、 会いたい人が帰ってくる”と言うので、 ついてきたのだ
相変わらずイチャイチャしているバカ夫婦とは出来る限り他人のふりをしながら、 アイラは自分が乗る飛行船を待った
側には必要最低限なモノがつまったトランクケースがある
「…また、 戻ってこれるよな…」
「あれ? 出ていきたいって言ってなかった? 」
「うっ……」
リリスがアイラの揚げ足をとってからかう
なにげにしっかり夫に抱きついている
と、
《8番ポートに中央行き、 飛行船が―――》
「お、 じゃあな」
「うん、 じゃあね」
2人は手を振り合い、 逆方向へと歩き出す
2度と会えないかもしれない
やがては忘れられていくかもしれない
けど、
焦ることはない
2人の“未来”はまだ始まったばかりなのだから
〜Fin〜
他のなろうファンタジー企画小説や俺の連載小説“神様と私”もよろしくお願いします。




