三下、主人公に置いてかれる
休日が忙しくて執筆が全く出来なかった(言い訳)。
これからも頑張ります!
不定期更新は変わらないけど…
「おはよう」
俺は食堂に来てみるとみんな一様に覇気が無い。
それは当たり前だ。
今まで考えてこなかった死というものに直面してしまったのだから。
俺自身、死というものの覚悟は出来ていた。
いや、正確には知っていたから何とかなった。
その昔、『見せしめの被害者』という役割があった。
俺は馬鹿だからその人が気になり付いてくると、銀行強盗が起きて逃げる際に人質を取り、その際の見せしめとしてその人を殺した。
幼かった俺は今でも鮮明に血の匂いから傷の箇所などを覚えている。
そんな経緯もあり、覚悟は出来ていた。
しかし、現実とは違うもので、やはり、死を見ると覚悟したつもりが正気が保てなかった。
まぁ、そのおかげで闇死神を退かれた訳なんだが…。
「ん〜、あぁ落ちこぼれの威堂君か…」
一人の男子生徒が呟く。
俺はそれほどにまで有名になっていたらしい。
なぜか、丹逢の機嫌が悪くなっているのは気のせいだよな?
『どうした?』
「え?あっ!
念話ですか…
それで何がどうしたんですか?」
俺が念話で話しかけると一瞬戸惑った反応を見せる。
途中で思い至り手を叩いた時は普通に可愛いと思った。
まぁ、今はどうだっていいか…
『いや、不機嫌そうに見えたから…。
気のせいならそれでいい』
「あぁ、いや、ちょっと威堂さんが落ちこぼれと言われたことに腹が立ってしまい…」
『そういうことか…。
別にあいつらの言ってることは間違いではない。
かと言ってお前の意見も間違いでもない。
ステータスとかこの世界のルールに従うなら俺は最弱だ。
けど、総合的に見た場合は俺は上位陣に入るな』
「凄い自信ですね」
『あくまでこれからの話だ。
今は俺が一番から四番くらいだろう』
「更に上がった‼︎」
意外といい反応するな。
でも、これは冗談で言っている訳ではない。
俺自身はありとあらゆる戦い方からくる強さでまともに戦えているだけだ。
前回の闇死神戦で倒すことは出来ないが、まともにやり合う相手の最大ステータスは大体1000〜1500位だと分かっている。
これはあいつらにすぐに追い越されることは無いと思うが、そう遠くないうちに俺は最弱になるのだろう。
『一度切るからな…。
何かあったらジェスチャーくれ』
「私の場合は幽霊なのでジェスチャーじゃなくてもいいのでは?」
そんことを言う丹逢を軽く無視して、『念話の魔眼』を切る。
「どうした?」
男子生徒は心配そうに俺を見る。
「いや、なんでもない。
それでみんなあんな感じなのか?」
俺は、飯を食べ終えて突っ伏した人を見て言う。
みんな、何か話す訳でもなくただ、ぼーっとしている。
「一部の例外やショックが俺達より多いやつを除いてはここで全員何をする訳でもなくいるんだよ。
まぁ、俺もその一人な訳だけど…。
部屋にいても一人の分、鬱になりやすいからな…」
男子生徒の言葉を聞いて、やっぱりかと思う。
ある程度は予想していたけど、まさかほぼ全員とは…。
俺は昼食を貰い、いつもの訓練所に行く。
そこには須田、進藤、木葉、清水、藍川がいた。
須田、進藤、清水が1対1対1で戦っていた。
木葉と藍川でお互いに相談をしている雰囲気だった。
流石に戦闘中に割り込むほど図々しく無いので木葉のところに行く。
「あれ?威堂君?
今日は部屋から出ないと思ったよ」
木葉が驚いたように声を上げる。
「威堂、今日は何をしに来たのですか?」
藍川は前ほどでは無いが警戒している。
ジーッと俺を睨んでおり、少し居心地が悪い。
「木葉にお願いがある」
「私に?」
俺は頷く。
適任は木葉か故ノ河しかいない。
「それで何?」
「木葉さん、そんなに信用しても…」
藍川は少し怪しんだが、俺の顔を見て言葉を止める。
「この前、話た人のメンタルケアなどを頼みたい。
少しでも自殺を防ぐために…」
「なるほど、自殺の可能性か…。
たしかに私くらいしか適任がいないかな?」
どうやら、すぐに納得したようだ。
しかし、藍川がなんの話か首を捻る。
「えっと、何の話をしてるのですか?」
「あ、そっか知らないのか…」
木葉は俺の方を向いて言っていいのか言外に聞いてくる。
「言っていいよ」
俺がそう言うと木葉は笑顔になり話し出す。
ここはこれでいいだろう。
丹逢はさっき、『紗香ちゃんの様子を見てきます』と言ってどこかに行ってしまった。
俺は次の行き先を軽く伝えて、歩き出す。
「やっぱりな…」
俺は歩きながら物思いにふける。
丹逢以外にも沢山幽霊がいるが、その殆どが存在が希薄で、元の姿すらわからない。
食堂の方でもあの時死んだ生徒を見たが、丹逢ほどハッキリしていない。
それでも意思はあるようでただ彷徨っているようには見えない。
俺はそんなことを考えながら、城の外に出る。
そして、俺は森に入りある開けた場所に出た。
「こんにちは」
「おう、イドウか…。
今日は遅いな」
「威堂か、こんにちは。
お前も訓練か?」
そこには団長さんと故ノ河がいた。
やはり、故ノ河はここで団長さんと訓練をしていたようだ。
「丁度いい、イドウはコノガの相手をしてやれ」
「わかりました」
俺は返事をして、練習用の剣を片手に故ノ河の前に立つ。
「よろしく」
故ノ河は礼節を重んじるのか、挨拶をする。
「ああ、よろしく」
俺はそれに答えて、観察を行う。
今までとは違う強者の雰囲気が故ノ河から漂う。
俺は少し気になり、『解析の魔眼』を使用する。
ーーーーーーーーーー
故ノ河 淳也 LV10
職業 光剣士
MP17650/17650
str5320
vit430
agi3890
int4000
men260
luk480
スキル
『剣技LV4』
『光魔法LV3』
レアスキル
『限界突破LV5』
『光速LV3』
ユニークスキル
『火事場の馬鹿力LV8』
『絶対領域LV3』
伝説スキル
『不屈LV2』
『光纒LV4』
『雷纒LV3』
夢幻スキル
『覚醒LV1』
『超回復LV1』
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強すぎるだろ?
つーか、この人、伝説どころか、夢幻スキルまであるとか…。
昨日の魔眼の反動がまだ残っているけど、全力でやる必要がある。
俺は『霊視の魔眼』の機能を一時的に停止させる。
余った演算分を別の魔眼に使う。
『達人の魔眼』『飛脚の魔眼』『予測の魔眼』
かなりの負担である。
しかし、昨日に比べたら負担は少ない。
『達人の魔眼』は動体視力を上げる効果を持っている。
『飛脚の魔眼』は脚力を上げる(最早魔眼とは何か)。
『予測の魔眼』は経験から相手の行う攻撃を予測をしてくれる。
これで勝てるかすら怪しい。
「はじめ‼︎」
その合図と共に俺は地面と平行に跳ぶ。
『我流』奥技『翔剣』
俺は地面を踏みしめて下から斬りあげる。
それを簡単に避けられる。
しかし、これは予想通りだ。
『我流』奥技番い『衝剣』
俺は全力で縦回転をして、落ちる。
ズドンッ
大きく地面をえぐり俺は着地する。
無駄な動きが多い技だが、初見殺しにはかなり使える。
やはり、故ノ河は距離を取った。
『我流』奥技『逆手斬り』
剣を逆手に持ち、体を全力で捻って剣を振るう。
カンッ
故ノ河の剣を弾く。
どうやら、俺が対処できないと思っていたようで驚いている。
俺は捻った体を戻して返し斬りを行う。
その行動は失敗だった。
圧倒的な身体能力の差があるのを忘れていた。
軽々と避けて、俺に一撃を叩きつける。
俺の視界はひっくり返る。
ドサッ
俺は意識を手放した。
************
「大丈夫か?」
これは…夢?
確か、この人は兄だったような…。
「大丈夫だよ、兄さん」
そこには幼い自分が写っていた。
そこで改めて夢だと思う。
「お前は聡明な子だ。
すぐに力の使い方に気付くから大丈夫だと思うけど、このことはあまり言ってはいけないよ。
悪い人が利用しようとするからね」
そう、年の離れた兄は俺に対して注意していた。
俺は昔、小1の頃に運命についてうっかり言ってしまったのだ。
その後、兄は俺を心配していつもいつも、俺に対して能力について注意する。
「兄さんは凄いよね!
どんなものだって見えちゃうんだから‼︎」
「そうだね、僕の力は使いやすい。
けどね、見たくないものも見えちゃうんだ」
兄の能力は一族では『詠み』と呼ばれていた。
これは俺とは違う意味で運命などを見ることができたのだ。
死期、物探し、幽霊や無念などの全てを見えた。
俺の上位の能力と言うべきだろう。
しかし、俺は知っていた。
本当の本質は違う能力だと…。
兄の能力は『詠み』ではなく確か…
************
俺は目を開ける。
そこには丹逢の姿が飛び込んできた。
「あ、起きましたね。
大丈夫ですか?」
「ああ」
誰かがいたら大変なので、何気ない返事をする。
「おぉ、やっと起きたか!
イドウ、どこか痛いところとかは無いか?」
「いえ、特には…」
俺は団長さんの質問に答えて周りを見る。
どうやら、場所は移動していないようだ。
『念話の魔眼』を使用しようとするが眼に痛みが走り、使えなかった。
どうやら、反動のようでR0、要するにリスクゼロの魔眼の使用しか出来ないみたいだ。
「だ、大丈夫か…?」
故ノ河は申し訳なさそうに俺を見る。
どうやら、自分の所為だと思い酷く心配してるようだ。
「大丈夫だよ、故ノ河。
俺は生きてるし、別にそれでどうにかなったって俺はお前を恨む権利は無いよ。
事故なんだし」
「それでも…」
「いいんだ」
言い返す故ノ河を俺は制止する。
俺は立ち上がり、早々と立ち去る。
少し離れたところで丹逢が話しかけてくる。
「どうしたんですか?
不機嫌そうですけど…」
「そうか…俺は不機嫌なのか…」
「気づいてなかったんですか?
口調は変わってませんけど、言い方がキツくなっていましたよ」
俺は丹逢に言われて俺は気づいた。
丹逢の言い方は好きだ。
言い方がキツくなく、棘もないから。
「ありがとな」
「急にどうしたんですか?
とりあえず、機嫌が直ってよかった。
それで、どうして機嫌が悪かったんですか?」
丹逢は申し訳なさそうに聞いてくる。
どうやら、聞かれて俺が不快にならないか心配だったのだろう。
「いや、懐かしい夢を見てな…。
少し感慨にふけていたのかもしれないな」
「なんか意外ですね」
「そうだな、俺もそう思う」
俺はあの時のことを思い出す度に怒りが湧く。
この理不尽な運命に対して…。
「んじゃ、戻るか…。
琴吹の様子も聞きたいしな」
「はい、戻ったら話しますね」
丹逢は真剣な表情になって言う。
俺は再度決意する。
「絶対に変えてやる!
運命を!」
死人は戻らない。
でも、生きた者は立ち上がらなければならない。
何度でも…。
倒れることなら慣れている。
『三下』として倒れ続けたのだから。
だから、今度こそ失敗しない。
今度こそ誰も不幸にしない為に…。
変えてみせる!
「はい、よろしくお願いします!」
丹逢が頭を下げる。
どうやら、独り言が丹逢に対して言ったように聞こえたようだ。
「ああ、絶対にこれ以上の後悔はさせない‼︎」
少しだけ、威堂の過去に触れています。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたなら幸いです。
これからも精進します。