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三下、はじめての死を見る

100pv達成!

読んで頂きありがとうございます。

「団長さん‼︎」


 俺は叫ぶ。

 闇死神ダークリーパーは団長さんから腕を抜き俺を見る。

 寒気が走る。

 俺の本能が全力て逃げろと警報を鳴らしてくる。

 しかし、それを理性で抑え込む。

 少し全力を出さないと逃げられる訳が無い。

 俺は戦うために剣を引き抜く。

 瞬間だった。

 闇死神ダークリーパーが俺の剣を弾き飛ばす。

 俺はそれに怯まずに拳打する。


『我流』奥技『獅子殺し』


 俺の一撃を闇死神は左腕で防御をしてくる。

 しかし、それは悪手だ。

 角度、位置の全てが完璧な『獅子殺し』。


 バキッ


 という音が鳴る。

 闇死神ダークリーパーの黒い装甲の一部を砕く。

 思った以上に入りが悪かったらしい。

 俺の右拳の骨も砕けていると思う。

 しかし、今の一撃で闇死神ダークリーパーは距離を取る。

 その間に剣と団長さんを回収する。


「回復班!

 団長さんの回復を頼む」


 回復系の魔法を持っている人達が団長さんの傷を治そうと魔法を使うが、一向に治らない。


「ど、どうして…」


 回復班の一人が呟く。

 最上級などいろいろと唱えるが全てが無駄に終わる。


「仕方ない、ちょっと貸してみろ」


 俺は団長さんを見る。


 ー解析を開始しますー


 ータイプ、ステータスからタイプ、異常の解析に変えますー


 ー解析完了しました、不治の呪いが掛かっているようですー


「解呪ができるやつはいるか?」


「はい、私ができます」


 俺はおずおずと手を上げた少女に呪いのことなどを教えて前に出る。

 どうやら、故ノ河達が食い止めていたらしく闇死神ダークリーパーは故ノ河達と戦っていた。

 しかし、俺を見た瞬間に動きを変えて向かってくる。

 どうやら、俺を警戒しているらしい。

 俺は剣を抜いて構える。


 カンッ


 と闇死神ダークリーパーの腕と俺の剣がぶつかり合う。

 ステータスの関係上、真正面から受けるのは得策では無い。

 俺はゆっくりと闇死神ダークリーパーの腕を流して、バランスを崩した所で剣で叩きつける。


「大丈夫か?」


 故ノ河達に俺は問いかける。


「いや、威堂…それはこっちの…」


 俺は本能的に跳ぶ。


 ガリガリガリガリ


 と削れる音が聞こえる。

 迷宮の壁が削られていた。

 闇死神ダークリーパーは立ち上がっており、右腕に鎌を携えていた。


「後藤、闇死神ダークリーパーの特徴を…」


 ズドンッ


 俺が闇死神ダークリーパーの特徴を伝えて欲しいとお願いしようとした瞬間、地が割れる。

 闇死神ダークリーパーが鎌を地面に叩きつけたのだ。


「後藤!

 掴まれ!」


 落ちそうになる後藤に俺は手を伸ばす。

 しかし、その手は惜しくも届かずに後藤は落ちていく。


「後藤‼︎」


「威堂!俺のことはいい!

 後ろだ!」


 俺は悔しさで拳を握る。

 俺はステップを刻んで闇死神ダークリーパーの鎌を避ける。


 俺は故ノ河達に目配せをする。

 それが分かったのか清水以外は頷く。

 藍川が団長さんの治療が終わっているか確認する。

 俺は極力その場から動かずに闇死神ダークリーパーの攻撃を避け続ける。


 故ノ河達は横槍を入れる隙を伺う。

 こっちとしては、さっさと入れて欲しい。

 鎌の攻撃はリーチが高く更には剣で防ごうとしても当たる可能性があるから厄介だ。


『我流』奥技『身体落とし』


 スッと俺は身体を落として鎌を避ける。

 そして、相手の懐に入りゆっくりと腕を掴み上手くバランスを崩させる。

 そして、そのまま闇死神ダークリーパーを地面に叩きつける。


「今だ!

 逃げるぞ!」


 進藤の一言に全員が走り出す。

 後衛とまだ平静を保っている何人かと藍川が先導して進み、俺と故ノ河、進藤、須田、木葉で殿をする。

 団長さんは中衛の方々が運んでいる。

 闇死神ダークリーパーはどうやらまだ来てないようだ。


 ガリガリガリガリ


 今か今かと警戒していると最前列から迷宮の壁が削られる音が聞こえた。

 その直後に聞こえてくる何人かの悲鳴や絶叫で俺は急ぎ始める。


「何だよ、それ…」


 それは誰が言ったのか分からない。

 ひょっとしたら自分かもしれない。

 そう、確実な絶望がそこにはあった。

 先導していた人が藍川とその他数人を除いて約14名の死体があったのだ。

 俺の目の前が真っ白になる。

 何も考えられない。

 俺は運命を変えることが出来ないのか?

 嫌だ、そんなの嫌だ。

 そんな思考の中でも理不尽に闇死神ダークリーパーの鎌は近くでへたり込んでいた琴吹に向く。


「やめろ、やめろ!

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ‼︎」


 俺はもう何も考えられない。

 だから、俺は自分のできる全てを出した。


 シュッ


 俺は斬る。

 闇死神ダークリーパーの腕が斬り飛ばされて燃える。


 ーこれより自動解析を行いますー


 ー大量の情報に備えて下さいー


 それと同時に大量の情報が入る。


 ー解析結果より個体名『闇死神ダークリーパー』が腕の再生が行われますー


 ー解析結果より現在倒れている役割『第一犠牲者』の死亡を確認、助けられる確率ゼロー


 ー解析結果より炎での再生効果の無効は失敗ー


 ・

 ・

 ・

 ・


 ーこれより、精神安定と思考整理を開始しますー


 俺は落ち着き始める。

 俺には三つの夢幻ファンタズムスキルがある。

 その中の一つが『精神・思考・整理・安定』である。

 これは、『身体解放』と同じ分類で自分の精神の安定などの為だけにあるスキルでレベルなんて無いのだ。

 まぁ、要するに俺の補助系スキルということだ。

 もう一つは…。

 今はそれどころでは無いか…。


「故ノ河!

 俺が隙を作る、そこを狙え!」


 俺は走り出す。

 闇死神ダークリーパーは腕を再生させて、俺と対峙する。


『我流』番外『氷一閃』


 突きを俺は繰り出す。

 それを闇死神ダークリーパーは掴もうとする。

 そして、闇死神ダークリーパーは剣を掴む。

 その直後、闇死神ダークリーパーの腕が凍り始める。

 肩口に刺さり、剣を振るう。

 腕を斬り、そして、切り口から氷結する。

 これで、再生し難くなると願いたい。

 俺は懐に入った状態で続けて攻撃を行う。


『我流』技『斬り上げ(笑)』


 思いっきり闇死神ダークリーパーの腹に剣を叩きつける。

 腕の骨にヒビが入るような痛みが走る。


「ウォォォ!」


 闇死神ダークリーパーが吹き飛ぶ。

 その瞬間、周りが光り始める。

 精霊魔法の発動前に起きる現象だ。

 俺はフラフラになりながらその場から離れる。


炎檻フレイムケージ


 炎の檻が闇死神ダークリーパーを閉じ込める。

 そこに三人が向かう。

 檻の一部に穴ができ、故ノ河、須田、進藤が入る。


「『限界突破』『火事場の馬鹿力』」


 故ノ河がスキルを使い、攻撃力、速度といったものを上げる。

 袈裟斬りを放つ。

 綺麗に斬ることに成功する。

 しかし、このままじゃ再生する。


「『勇者の剣』『ライトニングブレード』」


「『剣召喚』『天雷剣』」


 須田と進藤はお互いに雷を纏い闇死神ダークリーパーの残った四肢を切断する。


「全員、檻から出て」


 木葉がそう叫び、三人はそれぞれ退散する。

 三人が退散したことを確認すると少しずつ檻は小さくなり、闇死神ダークリーパーを燃やす。


 そして、炎は収まり残ったのは焦げた跡だった。

 俺は安心して息を吐く瞬間だった。


 ー自動解析より報告、個体名『闇死神ダークリーパー』は僅かながら生きていますー


 俺は警戒して、焦げ跡を見る。

 その瞬間、闇死神ダークリーパーの顔がとんでもない勢いで向かってくる。

 まだ、終わっていないか…。


『我流』抜刀『剣線』


 砕ける、しかし、まだ足りない。

 闇死神はまだ生きている。

 俺は追撃をしようと構えた直後。


 ダンッ


 再び、寒気が走る。

 絶対的な威圧感…。

 これは目の前にいる闇死神ダークリーパーが放っているものではない。

 その後ろにある、空間の亀裂から見える闇死神ダークリーパーのものだ…。

 ゆっくりと顔だけになった闇死神ダークリーパーは亀裂の中に入って、亀裂と共に消えていく…。

 俺達はそれを眺めることしか出来なかった。


「終わったのか?」


 誰が呟いたのか分からない。

 でも、ここに確実なことが一つある。

 俺達は生き残ったのだ。


 ************


 その後、団長さんがやっと目覚めて状況を説明する。

 団長さんに話すと少しな間黙ってから、悲しそうな表情を浮かべた。

 しかし、すぐに表情を元に戻して俺達を先導して戻って行った。


 俺は部屋の中でずっと考えていた。

 この運命は変えることが出来たのか?

 それとも俺が不注意だったのか…。

 分からない。

 何が運命を変えるだ!

 これじゃ、変えたところで後味が悪すぎる。

 俺はこれ以上誰かに死んでほしくない。

 どうすればいいのか、必死に考える。

 どうすれば、運命を変えることが出来たのか…、そしてこれからの運命を変える方法を…。

 このままだと、絶対に『第二犠牲者』は死ぬ。

 どうやったら止められる?

 変えることを出来るのは視ることができる俺だけだ。

 …

 ……

 ………


「外の空気でも吸おうかな?」


 俺は暗い夜の中を歩き回る。

 巡回の兵士と会った時にどう言い訳しようか考えたが、どうやら団長さんから話が通っているようで見逃してくれた。


「ここに来るのは初めてだな…」


 城の中庭に俺はいた。

 そこは静かで誰もいなかった。

 いや、一人いる?

 それは透けていて、いるのか分からなかった。

 しかし、その人の顔を見て納得する。


「なにやってんだ?丹逢…」


「あれ、今呼ばれたような?」


 丹逢とはバッチリ目が合っている。

 しかし、何か納得いかないように俺を見る。


「威堂さん、私に対していっているのですか?」


 俺は頷く。


「ほかに誰がいるんだ?」


「そ、そうですか。

 なら、私はひょっとして…」


 俺は丹逢が何を考えているか分かる。

 しかし、俺は今から彼女に対して酷いことを言わなくてはならない。

 俺の責任でもあるのに…。


「すまない」


「どうしたんですか?」


「少し希望を持たせてしまって…。

 お前は死んでいるよ、間違い無く」


 俺は言う、酷いことだと思う。

 少しでも希望を持ったところで事実を突きつけるのは…。


「そう…ですよね」


 俺は顔を伏せる。


「あ、いえ威堂さんが気に病む必要は無いです」


「でも…」


「いいんです、例え威堂さんが私が死ぬと分かっていたとしてもです」


「どうして…」


 俺は驚愕する。

 丹逢が俺が死ぬことを知っていたことを言ったから。


「やっぱりそうでしたか…。

 理由は簡単です。

 迷宮に入る前の忠告と目、そして直感です」


 俺は笑ってしまう。

 まさか、そんなことでバレるとは思わなかった。

 何故かさっきまで悩んでいた俺がバカみたいだった。


「何で、笑うのですか?」


「いや、一人で悩んでいた自分が馬鹿みたいだと…。

 泣きたいのは俺たちだけじゃない、あんたらの方がよっぽど泣きたいんじゃないのか?」


「そうですね。

 当事者ですから…泣きたいですよ」


 彼女の瞳が潤んでいる。

 しかし、それを何とか止めて俺を見る。


「あなたは何で私を見ることができるのですか?

 ちょっと聞いてみたいです」


 気を紛らわせるように俺に聞いてくる。

 俺はここで答えるべきだろう。

 けど、俺はそんな救いをしたくない。

 これは何処かでこれから先の悲劇を食い止める鍵になる。

 そんな気がする。


「その前に聞かせてくれ」


「何ですか?」


「あんたには心残りがあるのだろう?」


 丹逢はびっくりしたような表情をして頷く。


「あんたはどうしたいんだ?」


 丹逢は涙を零す。

 実際には物質としてないが、それは本物の涙だった。


「紗香ちゃんが心配なんです。

 あの子は昔から私のことばかりでした。

 でも、あの子は私が死んでどうするかが心配なんです。

 多分、あの子は…」


「自殺するだろうな…」


 丹逢は頷く。

 より、泣き出した。

 嗚咽を漏らしながら言葉を続ける。


「でも…私はあの……子に死んで……欲しくないんです」


「そうか、なら聞き届けよう。

 その運命を…変えてやる。

 だから、ここで俺は宣言してやる」


 俺の眼の色が金色に変わる。


 俺の三つ目の夢幻ファンタズムスキル『夢幻の魔眼』が発動する。


 ー確率の魔眼を実行しますー


 ー対象は運命ー


 ー運命の改変率は0.00001%ですー


 やはり、この結果だ。

 だけど、この運命は変えてやる。

 そう、確率上なんて実際関係ない。


「魔眼使い、威堂 天津がその運命に抗って変えてやる!」


 俺は手を差し出す。

 彼女に勇気と希望を与えるように…。

 俺は抗い続ける、下らない運命に…。

ここからが威堂のターンですね。

読んで頂きありがとうございます。

面白いと思って頂けたなら幸いです。

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