三下のステータス確認
「やっと、話せそうですね」
金髪の少女が呟く。
その瞬間、その声が全校生徒の耳にまで届く。
「どうなっていやがる」
石凪がポツリと呟くが答えるものはいない。
「今から話すことを心して聞いてください勇者様方」
その言葉を聞いて何人もの人が(主に男子)反応する。
勿論、石凪はそういうのとは無縁なので意味わからないと言った表情をしている。
故ノ河は黙ったまま腕を組んで耳を傾けている。
木葉生徒会長は真剣な面持ちで少女を見ている。
「おい、どういうことだよ!
ここは一体どこなんだよ!」
突然、ひとりの声が上がる。
最もな意見だが、俺の予想通りならその言葉は意味をなさない。
「えっと、ここはあなた達のいた世界とは別の世界です。
私達はこのままだと危険だと判断してあなた達を召喚させていただきました」
その言葉に更に困惑の色を見せる人は決して少なくない。
いきなりの非日常について行けないのだ。
「要するに、困ってるから助けてということか?」
「その解釈で間違いはありません」
突然、一人の男子生徒が現れた。
背は180弱、黒髪短髪で茶色い目をしているのが特徴的だ。
彼の名は須田 真斗
役割は『勇者』である。
かなり合理的に動くが自分の思った正義に一直線でよっぽどのことがない限り曲げることはない。
時々、感情が先走ることがある。
確か、生徒会副会長だったような気がする。
「なるほど、よしやろう…」
そう言って直後、須田の後ろから蹴りが飛んでくる。
ドンッ
と言った音が聞こえて須田は少し吹き飛ぶ。
「何勝手に決めてんだ。
少しは考えろよ」
そこには須田よりも背が低い男子が立っていた。
名前は進藤 軌瑠
役割は『英雄』の生徒会書記である。
「しかし、俺たちの欲しい情報はおそらくもう手に入らないぞ。
なら、ギブアンドテイクの関係を保とうと相手の話に乗るのも間違いではないだろう?」
「なら、最初からそう言え‼︎」
その姿を見て、少女は二人に近づく。
「すいません。
召喚しましたが、戻す方法がよくわかっていないのです。
ですので、ここでの暮らしなどはある程度は保証させていただきます」
その言葉にお互いに見合わせて周りを見る。
そこには渋々と言った感じにもういいよとジェスチャーをする人が何人かいた。
おそらく、この話に乗るのだろう。
よく異世界召喚ものでは単独行動する主人公がいるが、かなり難しいことである。
故に俺たちは今、怪しくても何でも頼る他無いのだ。
彼らの意見はそれを分かっての発言でもある。
「では、皆様のステータスを確認させていただきます」
少女がそう言うと共に数十人のローブを着た人達が現れる。
役割、性別共にバラバラである。
それが約五十人である。
全員が同じ水晶を持って定間隔で並ぶ。
「こちらの方々が持っている水晶に順番に触れてください」
少女がそう言うと近くにいた人たちが並び始める。
俺のように様子を見る奴や石凪のように訝しげに見る奴もいる。
そして、一人目である須田が触れた瞬間
ーーーーーーーーーー
須田 真斗 LV1
職業 勇者
MP489/489
str256
vit235
agi198
int130
men125
luk86
スキル
『剣技LV1』
『ステップLV1』
レアスキル
『体力増強LV1』
『筋力増強LV1』
『魔力操作改LV1』
『魔力増強LV1』
ユニークスキル
『天動魔法LV1』
『天動剣LV1』
『身体回復【微】LV1』
伝説スキル
『勇者LV1』
『勇者の剣LV1』
『勇者の魔法LV1』
ーーーーーーーーーー
と大々的に表示された。
「素晴らしいです‼︎
まさか、初めから伝説級スキルを三つも持っているなんて…。
これは近いうちに夢幻級も拝める日がくるかもしれません。
とりあえず、この水晶に触れた後なら『ステータスオープン』と唱えるだけで見ることが出来るようになります」
少女はひどく興奮していた。
おそらく、とてもすごいことなのだろう。
それから、他の奴らも(主に男子)俺こそはと触れていく。
進藤はまだ様子見状態だ。
俺は先程聞いたステータスオープンと唱えるが、当然出ない。
しかし、それとは別に目が痛む。
ドックン
と心臓の打つ音が聞こえる。
ー解析を実行しますー
何だそれ?
何の解析だ?
ー解析物の確認に失敗しましたー
更に目が痛くなる。
「どうしたんだ?」
この声は故ノ河か…。
俺は故ノ河を見る。
ー解析物の確認をしました。解析を開始しますー
故ノ河には悪いけど解析とやらをしてもらおう。
「悪い少しな…」
ー解析が完了しましたー
「大丈夫か?
目が充血しているが…」
「マジか…」
ー解析結果を表示しますー
さてと、鬼が出るか蛇が出るか…。
ーーーーーーーーーー
故ノ河 淳也 LV1
職業 光剣士
MP871/871
str234
vit11
agi148
int200
men10
luk48
スキル
『剣技LV1』
『光魔法LV1』
レアスキル
『限界突破LV1』
ユニークスキル
『火事場の馬鹿力LV1』
ーーーーーーーーーー
「は?」
「ど、どうした?」
「いや、何でも…。
お前ってステータス確認に行ったかなと思って…」
「いや、興味はあるが少し不安でね…」
とりあえず、取り繕うことは出来た。
一体、どういうことだ?
これは故ノ河のステータスなのか?
「淳也、何やってるんだ?
って、お前…」
一人の男子がこちらに来る。
そして、俺を見た途端に敵意を露わにする。
こいつは故ノ河の友人である清水 加田
役割は『友人(主)』である。
俺は肩を竦めてその場を立ち去る。
後ろから引き止める声が聞こえるが、無視する。
「君はそれでいいの?」
すぐ近くから木葉生徒会長が現れて聞いてきた。
「いきなり話しかけないで下さい。
ビックリします」
「ごめん、それで本当にいいの?」
「何をですか?」
「君、人生を損しているよ」
真っ直ぐだ。
彼女はとても真っ直ぐで綺麗で正しい言葉を放つ。
それは俺にとって弾丸だった。
もっと、いい未来を作れるはずという彼女の遠回しのメッセージなのだろう。
「今更やり直せないんですよ。
けど、このまま終わらせるつもりは無いです。
だから、気にしないでください」
それでも、彼女の目は和らがなかった。
どうやら、本気で心配してくれるようだ。
とりあえず、俺としては居心地が悪いのでステータスの確認に行く。
「待って‼︎」
彼女のそんな一言を俺は後ろから聞きながら歩き出す。
俺は人の運命が見えるに等しい。
それは絶対不変で行われる。
多少のイレギュラー程度でどうにかなるものではない。
けど、俺はもう屈さないと決めている。
これ以上聞いていても俺には意味が無い。
先程交わした約束を思い出しながら俺は自重気味に笑う。
そうしていくうちに俺の番になる。
俺は水晶に手を触れる。
俺は考える。
きっと、あの時の選択は後悔しないだろう。
たとえ、このステータスがどんなに低かろうとも俺は絶対に変えてみせる。
自分の人生は規定された道筋を辿るものでは無い。
水晶は光出す。
時間がかなり掛かりやがて表示される。
後悔はしない。
俺は新しい道を作る。
どんなものが来ても俺は受け入れてみせる。
俺は自分のステータスを見た…。
ーーーーーーーーーー
威堂 天津 LV1
職業 なし
MP0/0
str34
vit23
agi38
int146
men125
luk150
スキル
なし
ーーーーーーーーーー
誰もが呆気に取られる。
そのスタータの低さに…
そして、スキル無しという事実に…
嘲笑が聞こえる。
これは石凪の声だ。
最高じゃないか。
これを機にあいつらと絶縁出来る。
「ふはは…」
少しだけ笑いが溢れてしまった。
誰もが冷めた目で見ている。
嘲笑、軽蔑などの目が突き刺さる。
それでいいと思う。
だって、これは面白すぎるだろ。
スタートはここからだ俺の運命改革は…
************
「それで、話をするのはいいのだが…」
「「「何でこいつが」」」
故ノ河、須田、進藤が同時に言葉を発する。
木葉生徒会長を指差して…。
「あれ?
私がいたらダメだった?」
「いや、いいと思いますよ。
ただ、驚いているように見えるのでというか、故ノ河と木葉生徒会長って面識あったんですね」
「あはは、一応小中高とあの三人とは同じだからね」
なるほど、類は友を呼ぶとはこういうことか…。
俺も一人だけいたような気がするけどいいか。
「そういえば威堂、一つ質問したいことがある。
お前は時折、俺達の何かを知っているよな?」
故ノ河が今までにないくらいの真剣な面持ちで話す。
「例えば、石凪の件もそうだ。
お前、最初見た時避けようとしていたことを覚えている」
意外とこの人達は鋭いな。
「ほら、あいつら顔が怖いじゃん?
だから、避けようとしていたんだよ」
とりあえず、取り繕う。
「にしても、他の顔が怖い人達は積極的に関わっていたな」
「他にも、うちの会計の子にこんなこと言ったんだっけ?
お前、生徒会を目指していたんじゃないのか?って」
少しずつ、詰みに入る。
しかし、俺は言う気なんてさらさらない。
「残念だけど、いえないな。
理由は簡単だ。
知ってもつまらないからだ」
「そんなことお前が決めることじゃない筈だ」
故ノ河は何かを探るように言葉を放つ。
たしかに個人によって違うな。
「それもそうだ。
けど俺は言わない」
須田と進藤はイライラしながら俺に反論しようとしてくる。
しかし、木葉生徒会長がその前に切り出す。
「わかった、これ以上は問わない。
でも、何か話しておきたいことがあるから話に応じた。
違う?」
俺は頷く。
どうやら、木葉生徒会長はついでにと思って聞いただけみたいだ。
他三人はそれがメインだったみたいだが…。
「木葉生徒会長は?」
「私としてはいいかな…。
本題が今のだったし」
「なら、まず聞かせてください。
あなた達は人の死を許容できますか?」
その瞬間、全員が息を飲む。
「あんたらは俺とは違って選ばれたと言ってもいいレベルに強い」
俺はそっと残り二人の解析を行う。
ー対象の二つの解析を開始しますー
ー完了しましたー
ー表示しますー
ーーーーーーーーーー
進藤 軌瑠 LV1
職業 英雄
MP175/175
str234
vit145
agi201
int121
men98
luk68
スキル
『武技LV1』
『鑑定LV1』
レアスキル
『縮地LV1』
『金剛力LV1』
ユニークスキル
『武器召喚LV1』
『武天LV1』
伝説スキル
『英雄LV1』
ーーーーーーーーーー
木葉 瑠花 LV1
職業 精霊剣士
MP942/942
str63
vit23
agi238
int425
men134
luk75
スキル
『剣技LV1』
『魔力感知LV1』
レアスキル
『精霊魔法LV1』
ユニークスキル
『精霊召喚LV1』
『精霊契約LV1』
伝説スキル
『精霊化LV1』
ーーーーーーーーーー
やはり、何度見ても強いな。
故ノ河以外、伝説スキル持ちだ。
少女はホクホク顔になっていた。
その後、俺と後もう一人だけ部屋に案内されてこの四人含む残り全員(俺とその一人以外の全校生徒)別の場所でなんらかの説明を受けたらしいけど…。
「何を聞きたいんだ?」
「てっきり、さっき聞いた話を聞くのかと思った」
故ノ河と木葉生徒会長は首を傾げる。
他二人は黙って耳を傾けている。
「それも聞きたいけど、俺は別のことを聞きたいんだ。
さっきとは別の質問をする」
俺は一拍置く。
「お前らは死ぬと分かっていて、人を助けるか?
もし、あんた達の身の回りの人間が死ぬ可能性があるなら、迷わずに助けられるか?」
「意味がわからない、そんなもの当たり前だろ」
須田がさも当然のごとく言う。
「それがほぼ不可能でもか?」
「何を言ってんだ。
助ける助けないは状況じゃない、気の持ちようだ」
全く、こいつは…。
他三人も頷いている。
「てことは、あんたらは人の死は許容できないでいいんだな?」
全員が頷く。
「安心した。
石凪のような意見にならなくて…。
俺も許容出来ない。
だから、あんたらに注意してほしい人物について話すよ」
俺は木葉生徒会長を除いた死ぬ可能性が高い運命を持つ人の名前を挙げていく。
あまりの規則性のない名前を挙げられていくことに首をひねりながら聞いてくれる。
その後、何とか全員の名前を覚えてもらい召喚された直後に四人が何を聞いたのか聞いた。
概ね予想通りで拍子抜け感があった。
あの少女は王女で王様と謁見して助けてくれと頼まれた。
俺達は魔王などの討伐を命じられた。
そして、俺のような奴は置いとくだけ置いて置くらしい。
後から覚醒する可能性があるからと、教えておくようにとも言われたらしい。
まぁ、正直言ってもう覚醒してるのだけど、黙っておこう。
そうして、俺達五人の同盟?ができた。
******王女******
私は今悩んでいた。
今回の鑑定水晶を使って勇者達のステータスを見たが、二人ほど例外がいた。
しかし、鑑定水晶は伝説までしか鑑定すること出来ない。
要するに夢幻の確認は出来ないのだ。
私は彼らが夢幻を持つ可能性を考えたが、それを知るためには国宝の叡智の水晶を使わなければならない。
しかし、それは厳重に保管されており、可能性が低いのに使ったとあらば損失が出ることだってあるのだ。
「はぁ」
私としては彼らが夢幻持ちであることを祈るばかりである。
世界を救ってもらうためにも…。
後書きでストーリーに自分は口出ししない(キリッ)(大嘘)
しかし、威堂のステータスが特別低いかと言われると自分の中では悩みますね。
因みに王との面会は面倒いのでブッチしました。
スキルなどに出た『レア』などのこの話内の序列
低位→通常より低く表示されない(なら何故今書いた?)
通常→一般的なもの
希少→持ってる人がほぼいない
ユニーク→ほんとうに持ってる人いるの?
伝説→あるかさえ分からない
夢幻→寝言は寝て言え
創世→妄想も大概にしろ
神代→ププッ(笑っ)
ていう感じですね。
分からないって?大丈夫です自分でもわかりません(最後の方は)。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたなら幸いです。