三下が召喚されました
俺こと威堂 天津は世界が嫌いだ。
世界には人にその時その時に役割がある。
俺はそれを見ることが出来る。
どんな風に見ることができるかと言うと例えばある人間が主人公と出たとしよう。
そうすると漫画やラノベの主人公のような人生を送る。
ライバルがいたり、トラブルに巻き込まれて乗り越えたり、中にはハーレムを作った奴もいた。
そう、俺はその人の未来をある意味で見ることが出来るのだ。
しかし、そんな俺は何が見えるかと言うと…。
『三下』だった。
確かに、中学の頃の『当て馬』に比べたらマシかもしれない。
確かに、小学校の頃の『ボッチ』に比べればマシなのかもしれない。
でも、『三下』って…。
無いわ。
まぁ、今現在俺が何をしてるかな戻るか…。
「おい、人にぶつかっておいてその言い草はないだろ」
「別に、そもそもあなたが私と同じ方向に避けたのがいけなじゃないですか」
俺は今一人の女子生徒に猛抗議をしていた。
最初はお互いにぶつかりそうになったから避ける為にお互いに横に避けたのがいけなかった。
お互いに同じ方向に避けてしまい、ぶつかったのだ。
俺は咄嗟に謝ったのだが、彼女から出た言葉は『あなたのせいで怪我でもしたらどうするのですか?』だった。
彼女自身はとても可愛い。
名は藍川 霞といい黒髪でキリッとしているイメージだが、笑ったりすると子供っぽさが出て可愛いと定評がある。
そんなことはどうだっていい。
ぶつかっておいて謝る訳でもなく文句を垂れるぶーたれた野郎の性根は叩き直してやりたい。
実際直すことなんて俺にはできないけど…。
「あぁ言えば、こう言う…。
それを言うならお前も同じ方向に避けたのは悪いだろ?
ぶつかったことは何も言わん。
これでいいだろ?」
「何言ってるのですか?
私があなたに謝る訳ないでしょ」
「テメェ、ちょっと痛い目見ないとわかんないようだな…」
「典型的な三下のセリフですね」
その言葉がより俺を苛立たさせた。
俺は三下じゃないとは否定できない。
でも、言われたくなかった。
「あなたはいつもつるんでる屑共と一緒にワーキャー騒いでればいいじゃないですか?
私なんかに構わずに」
余計、イラついた。
確かにあいつらは屑だ。
しかし、俺も好きでつるんでいる訳では無い。
俺の役割で運命なのだ。
今更、グループに抜けようとしたら何されるか…。
あいつらとは俺のつるんでいる友達(俺の中では友達でない)のことだ。
あいつらは場合によっては犯罪行為も行う可能性がある。
実際、彼女も本来ならここまで極端なことは言わない。
俺のいるグループが彼女に嫌われており、更には良くない噂がある分そういう対応になっしまっていることは充分に理解している筈だったのに、俺はイラついてしまった。
三度言うがイラついてしまったのだ。
「テメェ!調子なんじゃねぇぞ‼︎」
俺は拳を振り上げる。
そして、そのまま彼女に拳を振るう。
「なるほど、そういうことですか」
しかし、それは軽やかに躱されて俺は投げられる。
彼女は確か、合気や柔道を護身術として習っているという噂があった。
バタンッ
俺は仰向けに背中から落ちる。
俺の体にはすごい衝撃が走る。
「全く、いつもいつもウザいです」
そう言って彼女は去っていくのが見えた。
周りの生徒は「またやってる」という風にチラ見して通り過ぎて行く。
俺は何とか立ち上がり教室に向かう。
今は朝の時間でそろそろ朝のホームルームである。
「はぁ、全くほんとうに三下だな」
カッとなると理性が効かないのは悪い癖だ。
そのくせ、体はロクに反応しないのだ。
実際、俺は彼女よりも…いや、藍川よりも多くの格闘技や武道、流派などの教えをもらい、誰よりも才能はあると自負している。
しかし、俺の体は昔から最悪で頭で命令を出しても体は五テンポほど遅れるのである。
故に、最弱の烙印を押されて、師匠からは『お主には才能はあるのに生まれ持った体が邪魔してる』とまで言われたのだ。
そう、それについてはもう分かっている。
最初にも説明した通り俺には生まれつき不思議な力が備わっている。
自分や人の運命というより役割が見ることができる。
これもさっき言ったが俺の役割は『三下』だった。
そして、藍川 霞は『ヒロイン』だった。
勿論、俺とくっつくわけでは無い。
大抵の場合、その近くに『ヒーロー』や『主人公』、『英雄」等といった主役とである。
俺とでは釣り合わない。
この役割や運命に抗おうと思ったことがないわけでは無い。
だから俺は格闘技などを覚えた。
世界は理不尽に運命は残酷に努力は意味をなさなっかた。
俺は教室に入る。
「よう、天津。
お前、今日もやらかしったて?」
「そうだな、とりあえずホームルーム始まるから席に着こう」
「つれねぇな。
俺とお前の仲だろう?」
吐き気がする。
こいつが居なければ…。
…………………………………
そんなこと考えても意味ない…。
それが役割だから、俺は徹するだけだ。
どうせ、変えられないのだから…。
俺は席に着く。
先程話しかけてきた屑はさっき話題に出た俺の…友人だ。
名前は石凪 数多で役割は『悪役』。
相変わらず酷い役割だが、うちのクラスの『主人公』様が成敗するのだろう。
故に役割である。
しかし、最近本来一年とかその人の区切りのいい周期で変わる役目が急変する。
先生が入ってきた。
しかし、俺は気にも留めない。
淡々とホームルームが開始されるだけだ。
俺は急変した中でも特に異常な人を見る。
後藤 信二
役割 根暗オタク→成り上がり
榊 一
役割 観察者→指揮官
丹逢 美由紀
役割 傍観者→第一犠牲者
琴吹 彩香
役割 物好き→第二犠牲者
他にも諸々あるし、このクラスだけではない。
特に丹逢と琴吹の二人は嫌な予感がする。
この能力は断言はされないが予想はいつも裏切らない…悪い意味で。
ホームルームが終わり、教師が締めくくる瞬間それは起きた。
幾何学的模様が学校中を巡る。
俺達はこの日平和な日本があるこの世界から別れを告げることになる…。
誰もが突然のことで叫んだりする。
どうだっていい、俺はこの運命をある程度予測していた…。
************
俺は目を開ける。
どうやら失敗は何一つなく知らない場所にいる。
にしても何故誰もいないんだ?
「それは私が君を呼んだから」
声が聞こえる。
そう認識するとともに一人の少女が現れる。
髪の色は認識できなく美人ではある。
しかし、無機質な表情で俺を見ていた。
「あんたは何者だ?」
その少女からは役割が見えなく困惑する。
こんなこと一度もないことだ。
いや、一つだけ心当たりがある。
『神』である。
それは絶対不変である役割…。
俺は一度本物の神卸を見たことがある。
力は絶大でものの数秒で憑代となった人は死んだ。
しかし、その時確かに降臨したのだ。
『神』が…。
「物わかりが良くて助かります。
突然ですが今から私はあなたに選択を与えます」
「何の話だ?」
「要約するとあなたに興味を持ちました。
その役割を見る力は特に…。
だから…」
少女はここで初めて表情を変えた。
笑っている。
正直きれいだ。
「あなたには運命にまだ屈してほしくない。
だから、選びなさい。
現状維持か…すべてを変える可能性に掛けるか…」
正直、びっくりだ。
答えは決まっている。
心の奥底まで見透かされているようだった。
なぜなら、俺は諦めたから。
これが神の気まぐれか…今更変えたいとは思わない。
けど、俺は見てみたい。
何もかもが変わる瞬間を…
その瞬間、神は笑ったような気がした。
けれど、俺の意識は再び遠のく。
最後に宣言してやる。
「与えたこと、後悔させやる」
満面の笑みが見えた気がした。
************
目を開けるとそこは知らない場所だった。
周りを見るがみんな困惑していて浮ついてる。
人数を見るからに学校中の人間がいるだろう。
今はそんなことは関係無い。
とりあえず、状況を把握できるものが欲しい。
そう思い、俺は辺りを見回す。
ふと、学生服以外の上等な服を着ている少女が目に入った。
顔立ちは少し日本人とは違うがそう大差がない。
うちには留学生などいない。
金髪の綺麗な髪をなびかせ待つかのように俺達を見ていた。
「『人柱』か…」
俺は役割を呟いてしまう。
おそらく、『人柱』とは本当の意味で人柱なのだろう。
しかし、あまり見ない運命や役割を背負っている。
いや、一人だけいた。
最近変わった運命でうちの学校の生徒会長、木葉 瑠花だ。
「確か…」
俺は木葉生徒会長を探す。
俺見つけて木葉生徒会長を見る。
瑠璃色の髪を持ち、この状況下で周りを必死に落ち着かせようとしている。
「おい、天津これは…」
「知らないよ。
知ってるのはあそこにいる人じゃない?」
俺は石凪に素っ気なく返事すると顎で『人柱』の少女を指す。
それを聞いて石凪は自分の子分達を率いて突撃しようとするが制服を引っ張り止める。
「何すんだよ!」
「よく考えてみろ、この状況下では明らかにあいつの方が主導権を握ってる。
ましてやここで何があるか分からない。
新手の快楽殺人鬼の巣窟かもしれないんだぞ?」
俺は自分で言いながら即座に心の中で否定する。
もし、するならよっぽどの変人ではなければ行なっている。
しかし、石凪達には効いたようで思った以上に素直に引き下がる。
しかし、このままだといつまで経っても静かにならなそうだな。
「ちょっと、行ってくる」
俺はそう言ってある奴のところに行く。
「故ノ河君、ちょっと頼みがあるのだけど…」
俺は故ノ河 淳也に頼ることにした。
そして、こいつが噂の『主人公』である。
ちなみにその近くには藍川おり、睨んできている。
「ど、どうしたんだ?」
故ノ河は少し動揺してるのか声が震えていた。
「あなた…また何か…」
「お前な…」
疑いの目を向けてくる藍川に俺はジト目を送る。
「キモッ‼︎」
「傷付くな‼︎」
キモいと言われた…。
ってそんな場合じゃなかった。
「故ノ河、これはお前にも協力して欲しいことなんだが、一度みんなを落ち着けて欲しい」
「はぁ、何言ってるのですか?
冗談もやすみやすみに言って下さい‼︎
こんな状況で落ち着け?無理な話ですよ‼︎」
やはり、藍川が突っかかってきた。
そんなものは織り込み済みである。
「うるさい、お前には聞いていない。
それに、この状況だからこそ落ち着くべきだ。
特に…」
再び、少女を顎で指す。
故ノ河と藍川、その他諸々の二人の親友達が一斉に見る。
「彼女は?」
「俺の予想だが、この状況を知っていることは確かだと思う。
まぁ、そういう訳でお前のカリスマ性を信じて言わせてくれ。
この場を少しでも落ち着かせてくれ!」
「でも、俺に発言力は無いぞ」
「でも、お前の周りにある奴の影響力は違うだろ?」
故ノ河は俺の言葉を聞いて笑う。
そう、こいつはだから『主人公』なのだ。
あいつそのものの発言力は無い。
しかし、あいつと仲良くするのは大物ばかりで実のところそっちの方で影響力が高い。
「淳也、そんな話…」
「霞、俺は乗ったよ。
その話…でも、交換条件に今度話を聞かせてくれないか?
勿論、本音の言い合いで…。
守れないならやる気は無い」
「え?」
どうやら、藍川の奴は戸惑っているようだ。
にしても、流石は『主人公』抜け目がない。
「いいぜ。
けど、俺が指定した奴とだけで話させてくれ。
言いたいこともあるから絶対な」
「これも予想通りかい?
君の方が抜け目がないな」
「それはどうも」
俺たちは少し笑った後、故ノ河が動き出す。
「霞、あそこの女子のグループと男子のグループそれぞれ二つお願い。
…」
霞を始めとした知り合いにお願いをしていく故ノ河。
流石だと思い、俺は次の場所に歩き出す。
「どこに行くのかい?」
「いや、あとはうまい感じにお前らの出来ない部分を補って、纏めてくれる生徒会長のところにな…」
「なるほど、賢明な判断だと思うよ。
約束は守ってもらうから」
「わかってる」
俺はそっと生徒会長のところに歩き出す。
「あら、あなたは…。
問題児の威堂 天津君ね」
「どういう覚え方ですか?」
「あれ、違った?」
「いや、違いませんよ」
「そ、そうよね…」
木葉生徒会長は思案顔になり、何かに思い至ったかと思うと自分の体を抱くようにして俺から三歩ほど離れた。
「私を外面で騙して、いやらしいことする気でしょ!」
「いや、俺ってどう見られてるの‼︎」
正直、泣きそうだ。
たしかにこの人は明るくて可愛いくて人気がある。
そういうことを思いそうになるが、俺はまだ『三下』である。
やられるのがオチだ。
「違うの?」
上目遣いでこちらを見てくる。
正直、可愛い。
「違います。
全く、俺はどう見られてるのだか…」
「だって、石凪と付き合いがある奴は大抵ロクなことしてないじゃん」
俺の顔が少しだけ固まる。
「そうか、そうだったな。
俺はそういう目で見られる立ち位置だった…」
俺はつい言葉をこぼす。
それに何か察したのか木葉生徒会長は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい」
「いや、いいんだ。
怖くて、あいつらから逃げることが出来ない俺が悪い。
一番、諦めてて変えようとしてないのは俺だったんだよ…」
俺は唇を噛む。
そう、俺が一番、運命という言葉を使って逃げていた。
けど、もう逃げない。
あいつらともお別れにする。
そして、最低でも『三下』より上になってみせる。
「それで何の用?」
「そうだった。
本題を忘れるところだった。
今から少しずつ落ち着くと思うのでその時になったら上手く纏めてください。
そして、あとで話をしませんか?」
「後者に関してはいやらしい目的じゃなければ。
前者は今でも頑張ってるわ」
「それなら、上級生に絞ったらやり易いと思います」
「わかった。
アドバイスありがとう」
そう言って彼女は纏め出す。
そして、落ち着いたのは今から数分後だった。
大体このくらいの長さで一話にします。
不定期更新なので一ヶ月に一話以上出せればいいです。
ていうか、出したいです。
威堂に三下感は出ていたでしょうか?
何か最初しか出てないような気がします。
でも、変えようとしたのとしてないとで違うと考えてください。
あと二話ストックがあるのでこれを出して少ししたら更新します。
誤字脱字がありましたら教えて下さい。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたなら幸いです。