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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
8/33

第七話 縛りプレイはお好きですか? part 3

 太陽がやや傾き、ビルの影が長くなり始めた。

 足に灰色の角の生えた武装を装備している朱雀しゅざくと赤色のパーカーを着た細身で高身長の糸使いが向かい合っている大通りも、その影響でビルの影で三分の一ほど暗くなっていた。

 朱雀の後ろにちょうど太陽があり、糸使いから主人公の姿が少し暗く見えていた。

 だが、おぞましい量の灰色のオーラをまとい、猟奇的な目をしているのと相まって、恐怖心が糸使いの中を支配していた。


 足武装を付けた脱走者の口が開く。

「お前が壁を作ってるんだとな。」

 同行の開いた黒い瞳がこちらを見ている。

「今更ですか。ええ、そうですよ。まさか突破されるとは、思いませんでしたけどね。」

「壁があるなら壁を壊す。

 壁を作る存在がいるなら、その元凶も、お前も壊す。」

 糸使いは、一瞬目を見開くがすぐに笑う。

「ははは。そうですね。そうでしょう。あなたを縛るのが私の仕事ですから。

 邪魔な存在でしょう。

 でも、最後まで私も自分の役割は全う(まっとう)するつもりですよ。

 ボロボロな体のあなた相手ならっ私でも太刀打ち出来そうですからね。ははは。」

 自分を鼓舞するように笑う。

 太刀打ちできる?そんな訳ない。

 虚勢だ。

 相手の放つ灰色のオーラが異次元のものだ。

 きっと私は負ける。ここでリタイアになる。

 足に巻き付けている赤いリボンを見る。

 でも、それでも、やるしかないでしょう。

 縛ってあげましょう。この化け物を!


 糸使いは、立ち上がり、朱雀に向かっていく。

 すぐに朱雀は、灰色のオーラの渦を体の周りに作り、足に収束させ、

 糸使いの目の前に接近する。

「うぐっ!」

 糸使いは、直後、後ろの壁に蹴り飛ばされる。

 ごほごほと咳をすると口から赤いものが大量に出てきた。

「ふふふ、、、ははは。これは、想像以上ですーーーー」

 言い終わる前に腹に衝撃がくる。

 視界が霞む。

 頭が混乱している。

 まともに思考できない。

 一方的すぎる戦いだ。

 そりゃ、そうか。

 私は、戦闘向きの能力じゃない。

 休みなく脱走者くんの攻撃が体に悲鳴を上げさせている。

 罠を抜けられた時点で私の勝率は、限りなくゼロになった。

 あばら骨が折られただろうか。

 分からない。

 もう全身の痛覚すら麻痺してきた。

 意識を保つのもきつくなってきた。

 このまま、すぐ、リタイアですね。

 糸使いは、右手の指が動くことを確認すると、

 ゆっくりと朱雀の頭に手の平を広げる。



「・・・・まぁ、このまま、ならですがね。」

 ーーーーそして、小さく笑い、手の平を閉じる。



 刹那、朱雀の動きが止まる。

 まるで、リモコンの停止ボタンを押したように、微動だにしなくなる。

 ただ、理性が飛んだ目に驚きと困惑の色が現れただけ。

 糸使いは、壁に立ったまま力なく寄りかかる。



「糸の端と端をくっつける場所は、壁だけだと思い込んでいましたか?

 右腕と左腕、左腕と右足、またまた右腕と右足と、

 体のパーツも橋と端をくっつける場所があるのですよ。」

 朱雀の目が糸使いに向けられる。

「・・・恐らく脱走者くんが今、思った通りです。

 攻撃を食らいながら、あなたを徐々に縛りあげていきました。

 私一人と引き換えに灰色の化け物一匹手に入れられるなら安いものですよ。」

 糸使いは、頭をゆらゆらと揺らしながら不安定な足取りで朱雀に近づいていく。

 そして、朱雀を白い糸で縛り上げていく。

「・・・大人しく、部屋にいれば、いいものを。

 抵抗するから、自分の首を、絞めることに、なるのです。

 あの部屋は、もう使えないので、別の部屋に移動させましょうかね。」

 朱雀の身体が持ち上げられる。

 目も口も塞がれて、身体には、糸がグルグル巻きにされ、今度こそ完全に動けなくなる。イモムシのように身体をくねらせて、抵抗している。

 身体を持ち上げる。

 巨大な白いイモムシのような糸の塊から、赤い紋様が浮き出てくる。

 しかし、段々動きが鈍くなっていく。


「・・・ははは、最後の仕事は、私の苦手な力仕事ですか。

 これは、面白くないですね。はは。」

 喉から湧き上がってくるものを飲み込む。

 これ以上血を失っては、この化け物を運ぶことも出来なくなるかもしれません。

「・・・・これ、は、王がいうように、もっと・・・を食べておけば、良かった・・・かもしれませんね。はは。」

 重い足をなんとか前に運んでいく。

 と、そこで後ろからジャリッという足音が聞こえる。

「せめて、この仕事は、やり遂げたかった、の、です、が、、」

 声を上げて笑う体力もなく、口元を上げるだけで笑う。

 視界がほとんど白くなり、何も見えなくなる。

 体力の限界がもう来たのですか、、、、。

 振り返り、後ろにいた人物のシルエットを見る。

「でも・・・おかしい、ですね。私のトラップは、街の色々なところに仕掛けたはず、、、。

 ここに来るまでに、私が気付かないなんてこと、ありえない、はずなんですがね。」

「どんなに仕掛けても、この街すべてにトラップを仕掛けつくすのは困難。

 それに、そんなことしたら、あんたらも動けなくなるし、抜け道っていうのを作ってるんじゃないの?」

 糸使いは、内心驚くが、少し沈黙した後、小さく笑う。

「・・・はは、ははは・・・・・はは。

 これは・・これは・・・面白いですね。はは。」

 シルエットを見つめて、言う。

「・・・一応、聞いておきましょうか、ね。

 抜け道を、見つけたのは・・・偶然・・・ですか?」

 すると、小さなシルエットは、ふんっと自慢げに言った後、

「偶然じゃないわ。分析と観察とテクノロジーの賜物よ!」

 よく見えないが胸を張っているのだろうか。

 ははは。最後に面白いものが聞けましたね。

 ここでリタイアするのが、惜しくなってきましたね。

「・・・っは、はは、はははは!」


 意識を保つのが限界になり、視界が暗転する。

 同時に身体が急に軽くなった感じがすると同時に、糸使いが光の粒子になって消えた。


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