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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
4/33

第三話 脱出は計画的ですか?part 1

中盤の回想にほんの少しシリアスがあります。

シリアスが苦手な方は、読み飛ばしていただいて問題ありません。

 状況をひとまず、整理しよう。

 優しそうな雰囲気の人に街案内してもらったら、

 実は赤色のモブ使いで、、

 俺は、モブテリトリーというものに入っていて、

 その中にいると視覚を失い、一方的に攻撃をされる。

 反撃しようにもかわされてしまう。



 モブ使いの攻撃も半端じゃなく強く、

 パンチかキックか分からないが攻撃を受けて、吹き飛ばされた。

 人間業と思えないあの攻撃を何発か食らえば、確実に致命傷になり、

 リタイアという名の転送をされるだろう。




  灰色の王らしい妹が狙われている以上、妹を残して転送されるわけにはいかない。



  とにかく、このモブテリトリーから脱出しないといけない。

  といっても、自分がどこにいるのかも分からない。

  何か目標があればいいんだが、全方位視界モブ色一色で目標も何もない。

  


  視覚に頼るのがダメなら、他の感覚、嗅覚とか?

  犬じゃあるまいし、ないな。

  味覚、地面を舐めろと?人間としてオワリな気がする。

  聴覚は、モブ使いの微かな足音が聞こえるがそれだけだ。

  自分の位置を把握には、役立ちそうにない



  あとは、触覚か。これが一番役に立ちそうだな。

  壁にぶつかり続ければ、そのうち交差点の外に出て、細い道に逃げ込めるだろう。

  まぁ、体が持つかどうか心配だが。




  と、ここで思い出す。

  そういえば、さっきモブ使いに回し蹴りしようとして、

  すねに当たった金属って、

  信号機じゃないか?



  信号機の位置が分かれば、自分がどこにいるか分かる!

  自分の位置さえわかれば、交差点の出口に向かって一直線に走れるんじゃないか!

  


  灰色もといモブ色の視界の中、手探りで信号機を探すと、すぐ見つかった。

  よし!これで、出口に向かって一直線に走れーーーーーー

  「あれ、俺どっち向いてんだっけ?」



  信号機の棒は、円柱で、どこを触っても同じ手触り。

  交差点のどのあたりにいるのかは、分かっても

  どこを向いているのか分からない限り、どっち方向に走り出せばいいのか分からないじゃん!



  頭を抱える。振り出しに戻ってしまったよ。

  どうしよう。どうしよう。

  名案だと思って、テンション上がってしまった自分が恥ずかしい。



  振り出しに戻った以上、やることは、あれだけだ。 

  やることが決まると、頭がスッキリする。 

  そして、何回目か分からない行動を実行する。



  「当たってぶつかれ!」

  全力逃走! イン モブテリトリー。

  考えるな。走れ。俺。



  「あなたも懲りないわねー。」

  足が払われ、前傾姿勢になったところに、リバーブローを食らい、また吹き飛ぶ。 

  一瞬意識が飛び、何かの壁、恐らくビルの壁にぶつかり、意識を取り戻す。

  ごほごほと咳をすると、口から血が出てきていた。

  目には、見えないがこの手にある液体の粘り気、暖かさは、きっとそうだろう。

  とにかく、今の一撃は、やばかった。

  意識があるのが奇跡といえるぐらい、今までと比較にならないぐらい殺気と衝撃があった。

  頭がクラクラして、全身の体温が下がっているのを感じる。



  でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。

  ここでリタイヤするわけには、いかない。

  俺には、逃げるなんて選択肢はない!



  と、ここであることに気付く。 

  起き上がれないのだ。それどころか、腕にも足にも力が入らない。

  まるで、体がいうことを聞かない。

  俺の身体が俺のものじゃないみたいに。



  人形になったような気分だった。

  「・・・・ぁ・・・ああ・・」

  声もうめき声しか出ない。やめて、やめてくれ!

  冗談だろ!嘘だろ!こんなことあってたまるか!


  

  絶望


  その一文字が頭に浮かぶ。 

  気付けば、目から涙が止まらなかった。

  敵が一瞬、たった一瞬本気出しただけで、終わってしまうのかよ。

  俺、弱すぎるだろ。

  いや、敵が強すぎるのか?



  逃げることさえ出来なかった。

  なにより、妹のもとにこいつが向かうと考えただけで、心臓が抉られる。

  実力差がありすぎるんだ。



  足音がこちらにゆっくりと近づいてくる。

  その足音が俺の真ん前で止まる。

  「あらら、軽めにやったつもりなんだけどね。」

  これで軽めとか、人間辞めてるだろ。こいつ。

  「ちょっと、本当に死なないでよね。

  君には、まだやってもらわないといけないことがーーーーー」




 モブ使いの言葉を最後まで聞くことが出来ないまま、頭の中が空っぽになっていき、

意識が飛ぶ。













  『シュー、マイ、朝ご飯出来たぞー。』

  『『はーーい』』

  これは。子供の頃の記憶か。

  『ごめんねぇ、飛行機まで時間がなくて、白ごはんしか用意できなかったの。』

  忘れもしない、父さんと母さんが飛行機の事故で亡くなる日の朝の光景だ。

  『えー、白ごはんだけー?』

  『ごめんねー。帰ってきたら、どこかおいしい場所に連れて行ってあげるから。』

  『本当?楽しみにしてるね!』

  結局、その約束は、果たされなかった。

  『『『『いっただきまーす!』』』』

  家族全員揃った最後の食事。父さんと母さんにとっては、最後の晩餐か。

  『パパ、時間ないから、早く食べちゃって!』

 


  慌ただしい最後の晩餐だったな。

   天国では、ゆっくりとご飯食べてるかな。


 


  俺ももうすぐそっちに行くから。














  ちかちかと白い光が瞼越しに光っているのを感じる。

  ゆっくりと目を開けると、白い蛍光灯が見える。

  あぁ、天国でも蛍光灯使うんだ。




・・・・・・・・ん?蛍光灯?



  いや、天国に蛍光灯あるわけないじゃん!

  天国は、光に溢れた場所なのに、ライトなんて使わないだろ!

  しかも、よりによって蛍光灯って、せめて、LEDにしてあげて。

  天国は、財政難なの?LED買えるお金がないほど貧乏なの?

  そんなはずない!たぶん!



  周囲をぐるりと確認すると、

  壁と床がコンクリートむき出しのそこそこ広い部屋で、

  ベットや冷蔵庫など生活するのに必要な家具などが一通り揃っている。

  誰か生活しているのだろうか。



  そして、俺はというと、ソファの上で寝っ転がっている



  上半身を起こして、自分の身体を見ると、包帯が巻かれており、

  その上に荒縄が巻きつけてあった。おかげで、腕が動かせない。

  幸いにも、足の方は巻き付けられていなかったので、自由に動く。

  もしかしなくても、あのモブ使いの仕業だろう。

 

 

  とりあえず、よく知らない場所に来たら、探索が鉄則だ。

  ソファから立ち上がり、まず、冷蔵庫に近づく。

  ここで問題発生。

 


  腕が縛られているため、ドアが開けられない。

  どうしようと考え、口で開けることにした。

  冷蔵庫は、俺の身長ぐらいある大きな冷蔵のため、足で開けるには、限度がある。

  腕が縛られた今、下手に転ぶと受け身がうまく取れず、

  頭を強打し、最悪打ちどころが悪ければ、そのままジ エンドの可能性も少しある。

 

  それを回避するためにも、口を使って開けるのが得策で、最も生存確率が高い

  冷蔵庫開けるのに、生存確率を考える日が来るとは・・・。

  中を見ると、流動食ばかりで、手を使わず、調理もしなくてすむものとして、選ばれたのだろうか。

 


  他には、水のペットボトルなどがあった。

  でも、腕が使えないのにどうやってキャップを開けろというんだ。

  口で開けろと?そんな無茶な。

 


  冷蔵庫を閉じ、もう一度部屋を見渡すと、あることに気付く。

  窓やドアがある。

 

 

  あそこから出られるんじゃないか。


  窓に近づいて、腕が動かせないため、歯で窓のふちを噛み、

  開けようとするも動かない。

  ならばと、ドアを開けようとドアに背中をくっつける姿勢でドアノブを

  捻るもピクリともしない。

 

 

  もしかしたら開いてるかも、って期待したけどダメだった。

  状況的に、俺は、監禁状態だし、逃げられるわけないか。



  他に何かないか?

  ゲームとかだとタンスの横に脱出するヒントが書かれたメモ帳があったりするんだけどな。

  一応部屋の中にメモ帳を探してみるが、

  

  どこにもなかった。


  そりゃ、そうか。

  監禁しておいて、脱出するヒントを置くやつなんていないよな。



  「・・・・・・・・」


  どうしよう。やることがなくなってしまった。


  暇になってしまったな。


  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



――――――寝るか。


  ソファに横たわる。

  ソファは、程よい弾力性があって、寝心地が思っていたより良い。

  ふわぁ、とあくびをして、今は、夢の世界に落ちよう。

  体力を回復することも大事だ。

 

 

  と、そこで視界の端に何かきになるものが映る。

  起き上がり、見てみると、換気口が冷蔵庫の上にあるのを見つける。

 


  「・・・・・・・・・」


  きたぁぁぁぁぁぁあああああぁ

  眠気が一気に吹き飛ぶ。

  脱出の定番、換気口!

  いつだって、密室におまえがいるんだ。



  小走りで机のそばにあった椅子を

  冷蔵庫の横に足で押しながら移動させる。



  椅子を踏み台にして、冷蔵庫の上に行けば、換気口から外に行くことが可能だろう。

  二段だけの脱出への希望の階段ができた。

  これで、俺は妹を助けにいける!


  待ってろ、マイ!


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