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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
三日目
33/33

エピローグ

「シューちゃーん。朝ご飯出来たよー!」

「ふわぁああ。おはよー。超特急で一階に行くよ」


まだ疲れが抜けきらず、重い身体を起こす。

俺としたことが朝ご飯に寝坊してしまうなんて、よっぽど疲れてるんだな。

それもそうか、あの戦いからそんな日数経ってないんだからな。

学校の制服に着替えながら、数日前の記憶を思い出す。



あのビル街での戦いが終わり、その後、俺たちは病院へと送られた。

ロロジイとの戦いの末、俺は、体力を使い切って気を失ってしまったらしい。

緊張の糸が切れて、安堵してしまったせいかもしれない。


病院で目を覚ますと周囲には、あの三日間で戦った人たちがベットにいた。

といっても、何個かは既にもぬけの殻であり、

しばらくして、それらは赤のチームのメンバーたちのいたベットだと聞く。


やはり、赤のチームは能力関係なく、素で回復速度も常人外れていたんだな。



自分の身体を見ると傷がほとんど治っており、

強いて言えば一気にやせ細ったことが気になるぐらいだ。


やせ細るといっても、頬がこけているとか不健康な感じではなく、

肌の艶は以前通りだし、頭もクラクラしない。


これなら、ゴハンの量を増やせば元通りの体型になるだろう。



隣のベットには、相変わらず艶のある銀髪ロングの少女が座っていた。

白い病院服を着ており、顔の血色も良さそうだった。


マイも無事に回復したんだ。

それが分かっただけで心がふっと軽くなった。


マイの白い手には短い鉛筆が握られており、

真剣な眼差しで、一心不乱にノートに向かって何か書いていた。


「マイ、、、、」

「、、、、、、、」

「マイ、、、、マイッ!、、、え?、、、マ、、イ?、、、」

「、、、、、、、、、、」


、、、無視されてしまった。まさかだ。

そんなことあるのか。

感動の再会を一緒に喜びたかったのに、、、。


よく見るとマイのベットの周囲には、大量のノートが山積みになっており、

バリケードのようなものが出来上がっていた。


この光景は、マイが学校に髪を銀髪に染めるための申請をした時以来だ。

一生懸命やっている最中に声を掛けるのは、止めといた方がいいな。


それに、、、こうして頑張っているマイの顔も好きだしな。

その結果、学校の制服の代わりに、銀マイの着ぐるみ着て登校し始めたりしたら怖いけど。



しばらくマイに見惚れていると、突然頭に何かがバサッとぶつかる。

「ッいて!」

「マイばっか見てるんじゃないわよ。あんた」

顔から視界を遮っていた本が落ちると、目の前のベットに

茶髪の女の子が鋭い目つきで俺を睨んでいた。


「桜鈴!無事だっ、、ぐはぁ!!もう本投げるな!!病人に本投げるなっ!!

悪かったっ!!よく分からんけど悪かった!!だからお辞めください。桜鈴さまぁああ!!」

「桜鈴様って何よっ!!ずっと声かけてたのに目を覚まさないし。

目覚めたら目覚めたで、正面の私じゃなくて横のマイばっか見てるし!!変態!ド変態!変質者!!」

「変質者ってなんだよ!!まぁよく言われるけど!!」

「クフフフ。まぁ、いいわ。そんな怒ってないから」

桜鈴は、本を投げるのを止める。

「嘘つけ!」

「本当よ。ちょっとじゃれつきたかっただけよ」

「それなら、まぁ、、、ってならないからな!!」

「まぁまぁ、落ち着きなさい」

「どの口がそのセリフを言っているんだ?」

「あら、追加の本投げをご所望で?」

桜鈴が綺麗な笑顔を浮かべる。

綺麗すぎて、逆に怖い笑顔のまま話しかけてくる。

ほんと怖いです。その笑顔怖いです。

変な汗が止まりません。


「て、ていうか、こんな大量の本どうしたんだよ」

「私もびっくりしたんだけど、

この病院には、入院している子のために沢山の本が置かれているの」

「本?」

「ジャンルも色々揃ってたわ。

文庫本、新書、図鑑、写真集、楽譜、医学書、あと、子供向けの絵本とかもあったわね」

「結構幅広いジャンルの本があるんだな」

「なんでも、ここには病院からあまり出られない病人の方たちがいるらしくて、

その方たちのために本を揃ているそうよ。見に行ったけれど、もう大きな図書館レベルの規模よ」

「病院なのにか?」

「他にも庭園とか、広いグラウンドとか、遊具とか。私たちの知っている病院とは異なるわね。

何というか、病院の中に町がある感じっていうのかしら」

「妙に詳しいな」

「スーちゃんが話してくれたの」

「スーちゃんが?どうしてスーちゃんが出てくるんだ?」


桜鈴が手元の本を見ながら、ぼそりという。


「ここの病院にそういう施設を増やしたのが、そのスーちゃんだからよ」

「え?、、、、、、、、、えええええええええええええええ!!?」


お嬢様って言われているから、かなり裕福なんだろうなとは感じていたけど、

予想以上すぎやしませんかね!?


「図書館建てたり、遊具作ったりって、あんな小さな女の子が出来るものなのか!?」

「私も信じられないけど、その無茶が出来てるから、この本たちがあるのよね」

周囲に散らばった本を眺める。

ハードカバーのモノが多く、題名は、なめらかな筆記の外国語で書かれている。

何語なんだろうか。

ぱっと見では、なんて書いてあるか読めない。


「というか、そんな大事な本を投げていいのかよ」

「マズいわよ。

スーちゃんは、気に入った本があったら、そのまま持ち帰っても、好きなページだけ破っても食べても構わない。大事な思い出になればね。って言ってたけど」

「本を投げることが大事な思い出になるのか?」

「後で謝りに行くわ」

「俺も無関係じゃないから、俺も一緒に行くよ」

「いえ、あんたはいいわよ」

「いや、行かせてくれ。大事な友達のモノを乱暴に扱わせてしまったんだから」

「悪いと思ってるわよ。本当に」

「あ、いや」

「それにそういう意味じゃなくて、、、、、あんたが今、スーちゃんに会いに行くのはマズいのよ」


そこで桜鈴は、一瞬マイの方を見る。


「マイと何か関係が?」

そう聞くと、桜鈴の額にブワッと大量の汗が流れ始める。

「え?いやいやいや。全く無いー、、、訳じゃないけど。

とにかく!あんたは、そのマイの周りにあるノートを絶対、ぜッたぁああいに見ないこと。絶対よ!!」

「??よく分からないけど、分かった」

「そう、それでいいのよ。ちょっとこの部屋熱いわね」


そんな部屋の温度変わってないと思うが?


そう思った瞬間、パチンと桜鈴が手を叩く。


「そうだ!マイとも目覚めた後、話したのよ」

「私は、途中でロストしてしまったからよく分からないんだけど、

最後、スーちゃんとマイがカードゲームしたらしいの」

「ああ、トランプだっけか」


スーちゃんの実力は、分からないが、

マイは頭を使うゲームでは、かなり強いほうだ。

よほどの実力がなければマイの勝ちだが、、、


「勝負内容は知らないけど、その勝負の勝者は」

「勝者は?」

「圧勝でスーちゃんだったって」

「マジかよっ!!」

「マジらしいわよ。手も足も出なかったって残念がってたもん。

次は絶対勝つんだーーって意気込んでたもん」

「スーちゃん、カードゲーム強いんだな」

「頭の回転が常人じゃないって」

「マイにそう言わせるとは、凄いなスーちゃん」

「まだあんな小さいのに切れ者よね、、、大人になったらどうなるんでしょうね」

「さぁーな。でも、子どもの今もどこかでロロじいと一緒に何かとんでもないことしようとしてたりするんじゃないか?」

「フフフ、そうかもね」

桜鈴が口元を抑えて笑う。

「次会えるのは、いつになるんだろうなー」


窓の外を見る。

空は、青く澄んでいて、雲一つない快晴だ。

白い太陽が僕らを照らし、明るい平和な日々が戻ってきたことを感じさせてくれた。




そして、現在。

俺は、一階の食卓に到着する。

病院から帰ってきて、初めて食べる自宅の朝ご飯だ。

楽しみでワクワクウキウキしてしょうがない。


机の上には、いつも通りに銀色の輝きを放つ銀マイが大量に置かれていた。

いつもの三倍ぐらいの量はあるんじゃないか?

でも、食べられない量じゃない。だって久しぶりの銀マイなんだから!!


だが、机の上にあったのは、銀マイだけじゃなかった。

見慣れない色のご飯がそこに、それも大量にあった。


その色は、、、、緑と赤。


そう、大量の昆布と肉だ。


この二色が並んでいるということは、当然ーーーーー

「あっ!シューお兄さん起きたー!!」

「たるんでいるんじゃないか?朱雀くん」


車いすに座った金色の長い髪の華奢な女の子と

対照的に赤い髪のショートヘアの手足がムキムキの小さな女の子が腕を組んで椅子に座っていた。


「どうしてここにーーーー」

「お久しぶりでございます、朱雀様」

「ロロじいまで!?なんで!?」


「お忘れですか?朱雀様の願いですよ」

「願いってーー」

「『この戦いが終わった後も、スーお嬢様たちと友だちとして一緒に銀マイを食べさせたい。それが俺の願いだ!』と仰りましたよね」

「言ったけど、こんなにすぐとは誰も予想しないでしょ!」

「『決断を迷う時間は、時を無にしているのと同じ』だって誰かが言ってたよ!

やりたいと思ったら即行動!!これが私のモットーだよ!!

だからシューお兄さん!早く席に座って!!」

「朱雀君。君のやるべきことは、戸惑うことではない。

席に座って、私と共に肉を食べることだ。分かったらさっさと動くんだ!!」

「はぃいいいい!!すいません!!」


女の子二人に急かされ、急いで椅子に座る。

四角いテーブルの周りの椅子は四つ。

片方には、もう女の子二人が座っているため、必然的にマイの隣になる。

ちなみに、執事のロロじいは、テーブルの横で身動きせず真っすぐ立っている。


四人でご飯を食べるのは、家族全員と一緒に食べたとき以来だ。

二人だけの食卓が一気に賑やかになった。



「それじゃあ、全員揃ったね!それじゃあ、みんな手を合わせて!」

「はーい!」

「うむ」

「ああ」


「「「「 いっただきまぁーすっっ!!! 」」」」



まず、俺は、輝く銀マイを真っ先に口へと運ぶ。

口の中に甘い香りが広がり、噛めば噛むほど

お米独特の甘みが強くなる。うまい。うまいぞ!銀マイ!!


「うん、マイお姉さんの炊いてくれたゴハンは格別においしいよ」

「ふむ、これが話に聞いたマイお姉さんのお米というものか。

確かにうまい。米を食べたのは、もうはるか昔だが悪くないな」

「フフフ、二人ともありがとう」


マイが本当に幸せそうに笑う。

この笑顔を見れて、俺も幸せな気持ちになった。



「では、朱雀殿。お米を食べたところで私自慢の肉を食べてくれ」

「ああ、もちろん」


ずっと気になっていた。

テーブルの上に圧倒的な存在感を出していた超巨大な肉の丸焼き。

大きさは、サッカーボールを三倍にしたぐらいの大きさだ。

何肉か自分には分からないがとにかくいい匂いがする。


赤髪の少女は、そのお肉の皿の横に置いてあったサバイバルナイフで

肉を大胆に切り落とす。

結構一人分が大きい、、、気がするが、もうしばらく肉を食べてないのでそれすら分からない。


「最高の食感、肉汁、噛み応えのある私の大好物だ。

サバイバル生活の主食となる肉だぞ」


お皿に乗っかった肉の塊を掴むものを探すが、赤髪の少女が素手で食べているのを見て、

自分も野生に戻った感覚で素手で肉を掴み、ガブリつく。

「、、、、!!、、、うめぇええ!!」


うまい。

最初、肉の強烈な濃い味でビックリしたが、

かんだ瞬間、肉の中から肉汁が溢れてきて、口の中がその濃さに慣れてくると、

肉のコク?のようなものが味わえるようになり、味が楽しめた。うまい。


「じゃあ、肉の後は、私のコンブを食べてよ」

「おう」


スーちゃんから差し出された大皿には、四角い昆布がどっさりと盛られていた。

「よく噛んで味わってね!」


そのお皿から一つコンブを取り、咥えて食べる。

初めは、固くて塩っぽい味だったが、噛んでいくうちに柔らかくなり、

コクのある濃厚な味がコンブから染み出してきた。これもうまい。


肉もコンブも二人が好きになる理由が分かった気がする。


「これで赤と緑、二つ食べたね、シューお兄さん」

「食べたな」

「はい、食べました!」


それを聞いて、目の前の少女二人が目を合わせて、俺を同時に見て言う。

「「 質問!肉とコンブ、どっちの方がお米と合う!?」」


「ええ!?いきなり!?」

「気になるんだもーん」

「気になるんだ」

「どっちと言われても、、、、」


正直、分からない。お米とどっちが合うかなんて。

ずっと食べてきた食生活の影響だろうか。異色の組み合わせを比較することが難しいのだ。

単体で味わえば、どちらもおいしい。これは間違いない。

だが、どっちのほうが、と言われると、どっちにもそれぞれの良さがあって決められないというかなんというか、、、、うーーん、、、


「そんなの決まってるじゃん!!ゴハンだよ!!」

そこでマイが手を叩いて、そう言い放つ。

「ゴハン以上にご飯に合うものなんてないし、ゴハンと他の食べ物を比べるなんて

無理な話だよ。

だって、はるかトップにゴハンがいるんだから。ね、シューちゃん?」


母のように優しい声で言うと、マイが迷いのない瞳でこちらを見る。

自分の言っていることの意味が分かっているのだろうか?


「マイお姉さん。それは、聞き捨てならないよ。トップがゴハン?おかしいよ」

「その通りだ。それは宣戦布告と受け取っていいんだな」

「まさか。私は事実を言ったまでよ」


スーちゃんと赤髪の少女とスーちゃんがスッと立ち上がる。

スーちゃんは、テーブルに手を置いて、腕の力だけで上半身を持ち上げている。

三人の周りに三色のオーラがメラメラと燃えている幻覚が見える。


先に動いたのはーーーーー


「それでは、私は用事があるのでは、お先に失礼いたします」

ーーーー執事だった。

そう言うと、スタスタと静かに玄関から外に出ていった。


しかし、すぐにまたガチャっという音がする。

主人を置いていくのはマズいと思って、戻ってきたのだろうか。


「じゃあ、勝負をしよう!!」

「異議なし」

「いいね」

「勝負内容はーーーーーー」


マズいマズい。また戦闘のようなものが起こったらマズいって!!

制止する言葉をかける前に三人が口を開く。


「「「ーーーーーーー学校に誰が一番早く行けるか!!」」」


「、、、、、、、、え?」


「「「 よーい!ドン!!」」」


そういうと三人は一斉に玄関に向かって走る。


その時の三人の顔は、無邪気な子供のように

心の底から楽しそうに笑っていた。


知らない街に飛ばされて、死ぬような思いもして、

でもそれを乗り越えた先に手に入れたものは、

俺たち姉妹の空虚な生活をこれでもかと幸せにしていた。


ゴハンの銀、コンブの緑、肉の赤、三色の食べ物が繋ぎ合わせたこの瞬間は、

何物にも負けないぐらい最高に幸せだ。


この幸せに並ぶものが、この世にあるだろうか。


目の前に残された三色のご飯を見て、あの三人が手を合わせて『いっただきまぁーす!!』

と言っていたのを思い出す。


やっぱりゴハンは、最高の食べ物だ。


この世の全てのご飯にありがとう。


「ご馳走様でした」



















「、、、、あんた、一人でその量食べようとしてたの?」

「うわっ!」


後ろから桜鈴に声を掛けられ、びっくりして立ち上がる。


「あんた一人?」

「そうだけど、なんで家の中に入ってきてるんだ!?」

「家の前であんたを待ってたら、執事さんが出てきて、入れてもらったの」

「、、マジかい」

「マジよ」


そういうと桜鈴は、近寄って腕を組んでくる。

長い茶色の髪からふわりと甘い女の子の匂いがして、ドキッとする。

いや、俺も女なんだけど。


「ちょっと、離れろよ」

「いいじゃない」

その時、グーとお腹の鳴る音が聞こえる。

「、、、なんか食うか?」

「、、、お願いします」


赤面した顔で俯きながら言う桜鈴。


食べ物なら目の前に沢山あるが、今から座って食べてたら登校時間ギリギリになるかもしれない。


そう思い、台所に行き、冷蔵庫を開けて、おにぎりを取り出してレンジでチンする。

「これ、マイが作ったおにぎりだ」

「ありがとうっ!!あんたが何時に家を出るか分からなくて明け方からずっと待ってたんだよね!」

明け方って、、、何時間待ってたんだ?


「ちなみにこのおにぎりの具って何?」

「ゴハンだよっ!」

「それ具じゃないでしょー」

「具のゴハンと、ゴハンのゴハンは違うってマイが言ってた」

「よく分からないなー」

よく考えたら、自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。


そういうと、バイオリンは、おにぎりをモグモグと食べ始める。

「おいしい」

よほどお腹がすいていたのか、すぐに食べ終える。

「じゃあ、一緒に学校に行こうか」

「ああ、そうだな」

断る理由もない。

一緒に登校してくれる人がいてくれることは、すごい俺も嬉しいし。

「えへへ」

「なんだよ、急に笑って」

「なんでもなーい」

その時の桜鈴の顔は、桜色に火照っていて、にやにやと嬉しさが隠しきれてない笑みを浮かべていた。




<学校の教室>

俺は、相変わらず机に突っ伏して、耳を塞いでいた。

周りの言葉を遮るためだ。

しばらくそうしていると、教室のドアが開く音がする。

その時、教室に大きなざわめきが起こった。


「では、HRを始めさせていただきます」

なぜかその担任の声がすっと耳に入ってきた。


まさか、、、、


顔を上げると、そこにいたのは、ピシッとしたスーツを着たロロじいだった。


「席に座ってください」


驚いた。いや、驚くポイントが色々あるけど、まずーーー

ーーー担任って、そんなすぐに変わるものなの?


何事もないように平然とHR始めてるけど、、、、


混乱しているうちにHRが終わってしまった。

なんだろう、、ここ数日で非日常に慣れた気でいたけど、

案外、一番身近な非日常は、受け入れるのに時間が掛かるものなんだな、、、



「、、、、、、、、、、、、、さて、トイレ行くか、、」

落ち着くには、トイレ。これしかないよねっ!



人ごみを避け、トイレへと向かうと甲高い悲鳴が上がる。


「きゃぁあああーーーーーーー!!変態よぉおおーーーーっ!!先生ぇええーーーあっちですぅーー!!」



「俺は、変態じゃなぁあああああああああああいっ!!」


全力疾走で、トイレの前から逃げ出す。

後ろを向くと、先生が追いかけてきていた。


俺の扱いは、以前と変わらない。

これは夢じゃない。現実だ。


あの三日間で気付いたことがある。


「あっ!シューお兄さんだ!!」

「面白そうなことをしているなっ!」

赤、緑の元王が俺に気付いて後ろを追ってくる。


「あ、あんたたち、校内でなにやってんのよ!?」

前の方に桜鈴の驚いた顔が見える。


なぜだろうか。俺の目から涙が出てき始めた。


そして、息を思い切り吸い込み、久しぶりに叫ぶ。


「俺はぁあああ!!!女だぁぁああああああああああああああああああああああああーーー!!!」


あの街に行って、戻ってきて、俺は、うんざりしていたこの騒ぎも楽しくなって、

仲間が増えてーーーーー


ーーーーーーこの容姿で良かったな。


そう思えるようになった自分に気付いて、笑う自分がいた。

ありがとうございました!!

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