第二十七話 作戦開始の流星ですか?
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
ゴハンと昆布を食べ終わり、トレーをゴミ箱に捨てる。
「シューちゃんとばあちゃん、話がーーー」
「ロロジイ、話があるんだ!」
「なんでしょう?」
「俺に特訓をしてくれ、モブ使いに勝てるだけの力が欲しいんだ」
「構いませんが、もう夜遅いですよ」
「わがままを言ってるのは分かってるが、このまま逃げていても一生勝てない。付き合ってくれ。この通りだ」
頭を下げる。
「私は構わないと言ったのが聞こえなかったんですか?
私が心配したのはあなたが夜も動いて大丈夫か、ってことですよ。連日の戦闘で疲れてるのに、睡眠はとらなくて大丈夫なんですか?ということです」
「すまん、断られると思って、セリフを考えてたんだ、、」
「朱雀様がやる気があるなら、特訓しましょうか」
「ああっ!ありがとう!じゃあ、早速特訓しに行こうぜ」
立ち上がり、ドアのところまで走って、ドアを開ける。
「あっ!ちょっとシューちゃん、特訓の前に話がーー」
「時間が勿体ないんだ。早くぅーロロジイ!」
「マイお嬢様、、お話は明日になりそうですね」
「もー、突っ張りすぎ」
「マイ、話ってなに?」
「ばあちゃんには、先にはなしとくね」
「では、私は特訓に付き合ってきて参りますね」
「いってらっしゃい、ロロ」
「行ってまいります。何か少しでも異変があれば、すぐに駆けつけます」
お辞儀して部屋から出ていく。
ーーーー場所は六階にある会議室。
「あなたに必要なのは、小回りと瞬発的な力の増強です」
「それは俺も感じていた」
「なので、ここに八つの箱型の障壁を用意しました」
長方形型の会議室の長辺に三個、短辺に二個で、三×二で六個。
そして、部屋の短辺側の壁の真ん中に一個ずつ置いてある。
「やることは簡単です。箱型の障壁の間をジグザグに進み、端に着いたら、一発大きい蹴りを加える。それだけです」
「分かった。最初の訓練だな」
「最初もなにも、これを朝までやるんですよ」
「え?」
「こんな短時間に多くのことを極めるより、一つのことをやり続けた方が効率的です」
「てっきり、もっと実践的な必殺技開発とかすると思ってた」
「そういうのは、基礎を固めてから、自然とできるようになるものです」
「なるほど」
「では、私は見てますから、ドンドンヤっちゃって下さい」
これは、恐らくロロジイが俺のために一生懸命考えてくれた特訓だ。きっとロロジイからのアドバイスも貰え、、、
スピーーー、グガガガ
横を見ると、ロロジイが壁際で寝袋に入って爆睡していた。
「おもっきし目を閉じてるよ。寝袋まで用意して、、、」
今夜は自分との戦いだ。寂しいけど、ガンバろう。
ーーーーー翌朝
グーー、スピーー、、グガガガ
「起きて、、、起きて、、、シューちゃん、朝だよ」
「、、、んん?もうちょっと、、、グピーーー」
「一緒にゴハン食べたいなー」
「おはよう、マイ。今日もいい天気だ」
布団から上半身だけ起こし、マイに朝のあいさつをする。
「おはよう、朝ごはん出来てるよ」
「朱雀お兄さん、おはよー」
「おはよう、あんた、よく寝てたわよ。やっぱり昨日疲れてたんじゃない?」
「朝、イビキがうるさくて起きたら、隣にシューちゃんがちゃんと布団敷いて寝てたんだもん。ビックリだよ」
「ロロが運んでくれたって」
「目を離さず、見ておりましたので」
いや、寝てたじゃん。
「でも、運んでくれてありがとう」
布団の上には回復のお札が貼ってあった。
「いえ、当然のことです。倒れることは想定しておりましたので」
「じゃあ、みんな起きたことだし、朝ごはんにしよっか」
「もう、ゴハンはできてるんだよー」
ゴハン、、、
「桜鈴、今日もゴハン食べるの手伝うか?」
「いえ、いいわ。昨日は私が変なテンションになってただけだし、、、一晩しっかりと回復したから」
「ええー、あんなに嬉しそうだったのにー」
「かおまっかっかだったー」
「あなたたちは面白がってるだけでしょっ!!」
「デヘヘ」
「マイ、、、、一発ビンタしていい?」
「さ、ゴハンゴハン。ばあちゃんも立ってないで、早く座りなよ」
「、、、覚えてなさいよ、マイ」
そう言いながら、俺たちはちゃぶ台に座る。
「「「「「いただきます」」」」」
メニューは昨日と同じ。ゴハンとコンブ。
「シューちゃん、特訓の成果はどうだったの?」
「手応えはあるが、実戦で使えるかはまだ分からない」
「勝てそう?」
「相手の実力が未知だから、なんとも」
「そう、、」
「なんだ?何か思うことがあるのか?」
「昨日言えなかった話なんだけどね」
「ん?うん」
「私の能力がなんとなく分かったの」
「そうか、良かったな、、、」
言ってから、脳がマイの言葉を理解する。
無言で箸をちゃぶ台の上に落とす。
「ええええええええええ!?」
「知らないのは、あなただけよ」
「いつの間に!?」
「人の話を聞かないからよ」
「そそそれでどんな能力なんだ?マイ」
「えーと、じゃあ、まず上を見て見てもらっていい?」
「うえ?」
上って、、、天井しかないだろ、、、、
と思いながらも、言われた通りに上を見る。
「天井が無くなってる、、、いつの間に、、、」
天井に穴が空いていたのだ。コンパスで測ったように綺麗な円形だ。穴を通じて、上の給湯室の中が見える。
「この穴は昨日、ばあちゃんが撃たれた時にできたものなの」
「?関連性が見つからないぞ」
「ばあちゃんが撃たれたとき、私ね。頭がどうにかなりそうだったの。すごい取り乱したの」
「発狂してたんだよ。マイお姉さんのあそこまでの発狂は初めて見たよ」
「ほう」
「簡単に言うと、私の能力は地面に穴を開ける能力で、それも精神が乱れたときに発動するものらしいの」
「なんて使いにくい、、、」
「突然穴が空いたときは、死ぬかとおもったよ」
「本能的にスーちゃんを片手で掴んで、もう片方の手で穴の縁を掴んで、かろうじて無事だったんだけどね」
「よく片手で」
「スーちゃん軽いからねー」
「私を運んでるときは、すごい重そうだったけどね」
「そりゃ、ばあちゃんは、重いものぶら下げてるかrーー」
「おい、マイ。それはブーメランだぞ」
「年のせいだよ、ばあちゃん」
「ヒドくなってない!?」
「年をとったら自然と重くなるものなの!ねえシューちゃん!」
「そうだな、、、重くなる人種もいる。何ごとにも例外はあるがな、、」
「体重の話だよっ!」
「つまろ、マイお姉さんの能力は自発的に使えない。加えて、直接的な攻撃手段にならないんだよ」
「要するに、お役にたてないんだ。ごめんね」
「いや、いいさ。マイを守るのが俺の役目だからさ」
「シューちゃん、、、ありがとう」
と、ロロジイがコホンと咳払いをする。
「食糧の問題もありますし、基地の場所もバレるのは時間の問題でしょう。なので、短期決戦に持ち込もうと思います」
「というと?」
「私に良い案がございます。勝率がグッと上がって、五パーセントになる方法を」
「その案乗った」
「私も」
「ロロの案なら反対しないよー」
「他に案が思いつかないですから、あなたの案、乗るわ」
「有難うございます。では、話させていただきます、、私の作戦を」
「騎士の場所は?」
「ビルを出て、右斜め45度の方向だよ」
「よしっ、行ってくるか」
「応援してるよ!」
作戦を聞いた俺たちは作戦を実行する。
会議室に再び置かれた大量のモニターで街の様子を確認する。
映ってるのは騎士のみ。
モブ使い、スナイパーの姿はどこにも映っていない。
会議室にいるのは、俺、マイ、スーちゃん。
できれば、側にいたいがそうも言ってられない。
戦闘型の能力持ちがこちらには、俺とロロジイだけだ。
ビルの外に出る。空は晴れており、日差しがまぶしい。
「行くか」
手元のお札を見る。そこには×(ばつ)のマークが書いてある。
騎士の近くに行くと、スーちゃんが○に変更してくれる。
地面に三つ指をつき、クラウチングポーズの構えをとる。
昨日特訓で鍛えた成果だ、、!
足に武装を出現させ、粒子をそこに集める。
ある程度溜まったら、一気に解き放つ。
「準備体操がてら、飛ばします、、、、かっ!!」
ビルの間を縫うように走る。明らかに昨日より上達している感覚がある。
スピードを自分でコントロールできてる感覚がある。
そして、あっというまに、騎士の姿を捉える。
「不意討ちご免なさい!!」
スピードをさらに上げ、騎士に突っ込む。
その勢いのまま、顔面めがけて、回転蹴りをする。
「随分と騒がしい不意討ちですね」
しかし、盾で簡単に防がれてしまう。
のけぞりもしない。
「二発目!」
ジェット噴射のように粒子を放出させ、空中で回転する。
「効きませんよ」
同様に盾で受け止められる。
「なら、、、」
ジェット噴射を地面に向かって放ち、一気に空高く飛ぶ。
そして、今度は逆に空に噴出して地面に落ちていく。
その粒子は光り、流星が落ちるかのようだった。
「リバーバル・シューティングスター・ソロ!」
騎士は盾を上に構える。
「受けよう」
攻撃は直撃する。手応えも感じる。
だがーーーー
「とてもとても重かった。昨日よりも成長を感じた」
直後、わき腹に重い衝撃がぶつかる。
ガハッ、という声が喉からでる。
一瞬の浮遊感のあと、ビルの壁に激突する。
「だが、儂には及ばん」
口から出た赤い液を袖で拭い、騎士を見る。
盾とランスを構えた騎士の姿を。
「それに、あんなに派手な攻撃をしたら、標的だぞ」
「分かってるさ。それを承知しての一発だ」
「なるほど、捨て身の一発というわけか」
「捨て身じゃない。ただスナイパーが怖くないってことだ」
お札をポケットから出す。
すると俺の周りに半円状の緑色の半透明な障壁が出現する。
「タイミングぴったりだ」
展開と同時にカンッ、と金属が跳ね返る音が聞こえた。
「遠隔でもお札の効果はあるんだとよ」




