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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
二日目
21/33

第二十話 証明せよ!女の子の証ですか

<モニターしている部屋の様子>

「ははは、天然、ふははっはは」

「笑えない」

 銀髪の少女が金髪の小さな少女を膝に座らせ、注意する。

 表情は対照的で、金髪の少女は、楽しそうに笑い、

 銀髪の少女は、神に祈るように手を合わせている。

「ごめん、マイお姉さん。

 でも、この状況を分析したら、可笑しくて、ふふふ」

「、、、今、二人が戦場の中にいるのを忘れてない?スーちゃん」

 マイお姉さんの声は、怖いほど冷たかった。

「それは、分析が足りないよ。

 マイお姉ちゃん。

 二人は今、戦場にいるけど、いないんだよ。」

「言葉遊びをしないでね」

「うぅ、んん。つまり、二人が襲われることがないってこと。

 敵の騎士が争う気がなさそうだからね」

 スーちゃんがモニターのひとつを指差す。

 そこには、立ち上がった騎士が二人のやり取りを見つめている姿があった。

「きっと騎士も空気を読んでるんだね、敵なのに。

 加えて、二人は、バイオリンを楽器の名前と、もう一人は自分の名前と思ってて、誤解しか生んでない会話をしてるだよ。

 やっぱり安心して見れる面白い状きょふはははは」

「こら」

 マイお姉さんがスーちゃんの頭を叩く。

「痛い!今の本気じゃなかった!?」

「・・・・・・・」

「無言怖いよっ!ごめん!ごめんって!もう笑わないから!」

「・・・・次破ったら膝の上に乗るの禁止」

「ひっ!」

 スーちゃんの口の昆布がポロっと落ちる。




 〈戦場〉

「クぅぅーソォォォォ、くら・・エえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」



「やめっ!おちっ!おねがヴェッホー!」

 茶髪の少女が黒髪の少年(?)の顔を思いっきり殴る。

 殴られ、そのまま後ろに飛んでいく。


「私のことをずっとフルネームで呼んだり、

 初対面なのに、告白してきたり、なんなのよ!」

「バイオリン好きの少女だ」

「はぁ!?」

「あぁ、ごめん。

 正確には、バイオリンが好きになった、だね」

 少女の顔がまた赤くなる。

「よくもまぁ、そんな恥ずかしいことを躊躇せず、

 しかも、私の前で言うなんて、、、テレルじゃない」

 後半は、声が小さくよく聞き取れなかった。

「え?なんだって?」

「そもそもね!」

 少女がヤケクソ気味に声を荒げる。



「あなた男でしょ!」

 朱雀の胸ぐらを掴む。

「なによバイオリン好きの少女って!

 一生一代の告白なのにふざけてるの?

 天然バカなの?締まらないじゃない!」

「ちがう!俺は、女だ!」

「だって女性らしさが全くないじゃない」

「ーーさらっとエグいことを言ったな」

「顔が完全に男で付け加えて声も低い。

 あなたに男じゃないって他の証拠があるの?」

「ーーっ!証拠か、、」

「なさそうね、じゃあ、あなたは男ということで決まーーー」

「あ、あるさっ!俺が男じゃなくて、女の子だっていう証拠!」

「なにかしら?顔と声以外にそんなものないわよ」

「、、、、、、、、グッ」

「急に顔を真っ赤にして、そんな無理に頭使うことじゃないわよ

 あなたは、男。

 真実じゃない?そんなに女の子に見られたいの?あなた変態なの?」

「変態じゃない!自分の中のプライドが許さないんだ!

 見せてやる!俺が女の子だっていうことを」



 主人公は、バサッと上着を乱暴につかみ、そのまま上着を脱ぐ。

「見よ!俺、いやボクのバストをっ!女の子のバストをぉお!」

 相手は、突然のことに驚いて目を見開き、

 一瞬固まったが、すぐに目をそらして、


「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、可哀想に」

 小さく呟く。

「なぜか痛い子になってる!?待って!」

「いえ、もう分かりましたわ。

 確かに女の子らしいわね。

 あなたは、正真正銘の女の子ですわ。

 、、、、、、、、、、、あると信じることも大切だと思うわ」

 朱雀は、まるで世紀末を迎えるかのごとく

 絶望に顔を歪ませ、

 膝から地面に倒れ、四つん這いになる。

「あれ?おかしいな。視界が海の中にいるみたいにぼやけて見えるよ」

「ちょっと、そんな泣かないで!

 大丈夫!あなたは、女の子!私が信じますから!」

「ホント?」

「え?ええ、ホントです!私を信じてください!」

「ーーーーーグスッ、ありがとう」

「だから、涙を拭いてください」

 少女は、ポケットからハンカチを取り出して、

 朱雀に渡す。

 動作の一つ一つに上品さがある。

 朱雀は、ハンカチを受け取ると滝のように

 溢れ出ていた涙を拭う。

「、、、優しいんだね」

「涙に弱いだけですわ」

 真っ正面から上部の言葉ではなく、

 心の籠った言葉で誉められ慣れてないのだろうか、

 目を凄い泳がせて、汗がだらだらと流している。

 なんか思わず嘘をついてしまって、

 取り返しのつかないことになった子供みたいだ。

 この反応、可愛いなぁ。

「なによ、その目」

「いや、マイの友達が良い人で安心したんだ」

「マイ?」

「ああ、自己紹介しよう。

 俺の名前は、高梨朱雀しゅざく。高梨マイの姉だ」

「あんたが、、、」

「たぶん、君の言いたいことは、分かる。

 俺は、マイの学園生活を壊した張本人で、友達の君に憎まれても文句を言えない立場にいることも。」

「、、、壊した、、、あんたが!」

 少女の目がつり上がり、怒りで威圧的になる。

「噂は、本当だったみたいね。

 マイの姉は、男で、変態で、

 いつも教室で耳を塞いでる根暗の変質者だって!」

「その噂の張本人だ」

「その噂のせいでマイが学校でどんな扱いを受けてたか!

 マイがどんな気持ちだったか!

 あんたに分かる!?」

「想像をすることはーーー」

 俺の学校での扱いまでは、いかなくても、それに近い扱いを受けてたとすれば、心に深い傷を負わせてしまったーー



 ーーパチン


「ーーっ!」

 左頬に痛みが走り、痺れる。

「想像できてない!」

「マイから直接聞いたことは、ないが、

 変態の妹なんてレッテル貼られて、無事にすむ訳がないだろ」

「あんたが考えてるその状況が、不完全すぎるのよ!」

「確かに推測の域だが、常識的に考えて、

 いつもあの社交的なマイが友達と遊びに行かず、家に一人でいるんだぞ!おかしいだろ!」

「っ!わ、悪かったわね。放課後遊んであげられなくて!

 でもね!マイは、別に皆に嫌われたわけじゃないのよ!

 騒動の後でも、マイが好きな男子なんて、掃いて捨てても、捨てきれないぐらい多いんだから!

 彼氏ならいつでも作れる逆ハーレム状態みたいなもんなんだから!」

「そ、そうだったのか」

「それでも、マイは、誰とも付き合わず、ゴハン作るからって言って、家に真っ直ぐ帰ってたのよ」

「それじゃあ、俺のためにマイは、薔薇色生活を失っている、、、、、

 うわ、うわあああああああ。

 バカじゃん、俺!」

 膝から崩れ落ち、頭を抱える。

 俺は、馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ。

 マイの幸せを願っていながら、マイの幸せを奪っていた。


「黙りなさい!変態!」

 少女が声で朱雀を威圧する。

「さすが噂の変態ね!あんたの思考回路、豆腐で出来てるんじゃない!?脆弱すぎる妄想力ね!」

「・・・・・・・」

「マイだって自立してるのよ!

 姉?のあなたに無理に合わせる性格じゃないわよ!

 あんただって知ってるでしょ、あの髪の色にするためのマイの努力を。

 どんなに批判を受けても、自分の貫きたいことを貫き通す。

 それがマイで、その頑固な心に、私は惹かれて、

 私が友達と認めた子なの!

 あんた、姉なのに知らないのね」

「・・・・・・・・!!」

「、、、、もう喋って良いわよ」

「俺には、意味が分からない。

 マイがしっかりした人間だということは、もちろん知ってる。

 でも、姉としては、学校の生活を優先してほしい。

 というより、俺以外の繋がりを大切にして欲しい。

 変態として扱われる俺と一緒にいる。

 それはリスクで、どうやっても逃れられない。

 だから、マイと離れることなんて考えたくもないが、

 それがマイにとって、幸せに繋がるんだ!」

「それが豆腐の思考回路だって言ってるのよ!ヘタレ!

 もう一発殴られたい?」

「でもこれは事実だ!」

「いいえ、妄想よ。

 なにがマイのためよ。

 そんなの何一つマイためじゃない。

 マイは、私と同じで、

 自分で自分のためになることしかやらないわ!

 確かに、モテるマイは、

 女子たちから嫉妬や嫌がらせを受けたり、

 変態の妹として、

 冷たい目で見られることもなくは、なかったわ!

 、、、あの子は、隠してるつもりだったけど、かなりエグいわよ。

 私だったら、耐えきれる自信がないぐらいにね。

 でも、、、、私見てられなくなって、

 あの子にバレないように、嫌がらせしている女子グループに

 止めるよう言いに行ったわ。」

「それで、止まったのか?」

「ええ、止まった、、と思ってたわ。

 ただ私に見えないところでさらに酷いことをされてるって

 気づくまではね。

 そんな時期でも、私の前であの子は、いつも笑ってたの。

 心にいつも余裕があった。

 それが不思議で思い切ってマイに聞いたの。

『どうして、こんな状況でも楽しそうなの?笑ってられるの?』

 って。

 そしたら、マイが楽しげに語るのよ。

『シューちゃんと一緒に食べるゴハンの美味しさを

 思い出したら、嫌なことなんて、

 全部吹き飛んでくれるんだー。

 私にとって、

 ゴハンは、平和の象徴で、絆の象徴で、愛の象徴なんだー。』ってね。


 正直、最初は、意味が分からなかったわ。

 ゴハンが好きなのは、分かる。

 でも、マイの場合、ゴハンにそれ以上の何か大切なものを重ねてる気がするの。

 どんなに辛い状況でも、心の支えになるのがゴハンで、

 それもあなたが一緒の時のゴハンよ。

 何があって、マイがあんなにゴハンに執着するのか、私には、教えてくれなかったけどね。

 でも、あなたには、分かるんじゃないかしら。

 どうして、マイがゴハンに執着するようになったのか。

 そのきっかけが何か」

「きっかけ、、、」

「それで、ここまで言っても、あなたがマイの近くにいることがリスクというの?」

「驚いたよ。

 マイのことは、結構知ってるつもりだったんだけど、

 心を全然理解できなかったんだな」

「ふふ、分かれば良いのよ。分かれば」

 少女が朱雀の胸をドンと叩く。

「私の名前を知ってるから察するに、

 もう私のことを知ってるかもしれないけど、改めて」

 ワンピースをちょこんとつまみ上げて、

 上品にお辞儀する。

「私は、ばい 桜鈴おうりん

 天才バイオリニストになる予定で、マイの大親友よ」

「これからよろしく。

 あと、ずっと言いたかったんだが、

 俺の思考回路は、豆腐じゃない。100パーセント、ゴハンで出来てるぞ!」

「それがマイの台詞だったら頼もしいのにね。

 それと、私の名前は、フルネームではなく、し、下の名前で気軽に桜鈴と呼んでちょうだい。」

 桜鈴が笑顔で手を差し出す。

 顔も若干赤くなっている。

 紆余曲折あったが、仲間になってくれるということで

 いいのだろう。

 顔が赤くなるの分かるなぁ。

 スーちゃんの時もそうだったけど、

 仲間ってお互い認めることを改めて

 認識すると恥ずかしいよね。


「お、お姉さんなんて、呼ばれたの小学生の時以来だ、桜鈴」

 俺も桜鈴のしなやかで長細いきれいな手を握る。

「ええ、お姉さん、これからもよろーーーー」

 桜鈴が手をキツく握りしめた直後。



 ーーー銃声が鳴り響いた。



 なんの前触れもなかった。

 俺たちの声以外何も音がしなかった。

 握っていた桜鈴の手がするりと抜け、

 桜鈴が地面に倒れる。

「おい、おい!しっかりしろっ!してくれよ!」

 銃声のした後ろを向くと、騎士が一人立っていた。

「お前かあああ!」

 足武装を展開し、脚に灰色の粒子を溜める。

「壁壊しの疾風!」

 地面に三つ指を着いた後、騎士に一気に迫る。

「よくも、よくもおおおお!」

「愚か者」

 騎士が呟く。盾を構えもせずに、ただ棒立ちしている。

「なめやがってえええ」

「加護を!」

「っが!」

 騎士にもう少しで届くというところで

 突然目の前が緑色になり、頭に衝撃が走った直後。

 ーーーパァン

 再び銃声が鳴り、耳元でカアンと何か固いものが跳ね返る音が聞こえる。

「いってえええ、いったい何が起きたんだ」



「少し割り込ませてもらいますよ」

 桜鈴の方から声が聞こえ、振り替える。

 そこには、白い祈祷師に緑色の鉢巻きを腰に巻いた青年が、

桜鈴の側で両手を前に突き出し、

半円の緑色の防壁を展開していた。





「おや、梅さんが狙われると思ったのですが、

余計なものを助けてしまったようでございますね、計算外です」

こちらを見下すように、ロロじぃが笑う。

「飛んで火に入る愚かな虫さん、あなたにお仕事ですよ」

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