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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
15/33

第十四話 前門にゴリラ、後門にゴリラですか? part3

 ――――油断した。


 マイと接触した後、すぐにマイを背中に背負って、粉塵で視界の悪い街中を走った。

 足の武装から出る銀色の粒子は、弱弱しくなり、時間を置けば回復すると思うが、

 今は、少し加速する程度しか噴出できない。

 視界が悪ければ、ゴリラが起き上がったとしてもかなりの距離を置くことが出来る。

 追跡不可能。このままスーちゃんがいるアジトに向かえる。

 大体の方向は、覚えているからこのまま逃げ切れる。


 ―――そう思っていた。


 ここで俺は、大きな勘違いをしてしまった。

 確かに視界を奪うことが出来た。

 でも、それは、デメリットでもあった。


「―――――ウホオオオオオオオオオオオオオォォオォ!!!!」


 耳を思わず塞ぎたくなるような叫び声を聞いたのは、すぐだった。

「、、、、嘘だろ」

 朱雀は、走りながら後ろを振り返る。

 赤い炎が出ているのかと初め思った。

 しかし、すぐに違うと気付く。

 その炎が巨大な人型をしていたのだ。

 その人型のシルエットは、赤い炎のようなオーラを纏いながらどんどん大きくなっていく。

 その大きさは、二倍、三倍と大きくなり、高層ビルの高さに頭が到達しても止まることなく、大きくなっていき、最終的には、足の長さとビルの大きさがほぼ一緒になるぐらい高くなり、まんま怪獣映画に出てきてもおかしくない化け物が生まれていた。

 大きさだけでなく、見た目も変わっており、

 なぜか知らないが、頭がモヒカンにチェンジしていた。

 巨大化が終わると、地面からビルを引っこ抜き、盾のつもりか、

 焼き鳥を作るかのように、「工」の形に二本のビルにビルを突き刺した。

 もう一つ剣の形をした「十」字型の武器をビルで作っていた。


「神話にあんな見た目の騎士がいたような気がする。

 なんだっけ」

 マイが耳の近くで呟く。

「そんなことより!追いつかれる前に距離を置いて、姿をくらますぞ!」

 完全に相手は、本気モードだ。

 ゲームで言うなら、最終変身形態したラスボスだ。

 そんな奴にHPが赤ゲージで、能力も満足に使えない状態で勝てる希望は、ない。

 今は、街中に灰色の粉塵が舞って、見つかりにくくなっている。

 最大にして、最後の逃げるチャンスだ!


「マイ!ゴリラは、今どうな状況になっている?」

 後ろを振り向く余裕もないため、マイに聞く。

「・・・・・ル」

「え?」

「来てる!来てる!来てる!完全にこっちに向かって、陸上選手張りに全力で走ってきてる!」

「ははは、そんなすぐばれる訳ないだ、、、、、、逃げろおおおおおー」

 マイの言葉を信じ切れず、チラリと後ろを向くと、

 赤いオーラを纏った黒ゴリラが武器を持った両腕をぶんぶんと振りながら、

 こちら目掛けて一直線に走ってきている。

 視線は、完全に俺らを捉えている、というかガン見している。

 恐怖映像以外の何物でもない。

 いや、映像なら良かったのだが、これは、純度100パーセントの臨場感たっぷりの

 リアルだ。


「シューちゃん!どんどん近づいてきてるよ!」

「規格外もいい加減にしろ!」

 なぜだ!なぜバレた!

 俺たちの動きを監視している存在がいるというのか!

 監視、、、、まさか、、、、

 いや、違う。スーちゃんでは、ない。

 あの協定を結んだ時の表情は、本物だった。

 本気のつながりを求めていた。

 そのつながりを自分から裏切ってするようなことをするとは、考えられない。


 では、別のだれかがここにいたのか。

 俺たちとゴリラ以外の誰かが、、、、、


「シューちゃん!右に大きく避けて!上から瓦礫が落ちて来る!」

「え?うわあああ!」

 マイに肩を叩かれたことで思考から戻ってきて、上を向くと、崩れたビルの瓦礫が

 真上に落ちてきていた。

 反射的に右に避けるが思ったよりも瓦礫が大きく、潰される直前で足武装から粒子を

 瞬間的に噴出させて、右方向の地面にに思いっきり飛びこんだ。

 ―――ドオオオオン

「ギ、ギリギリセーフ、マイ、大丈夫、か?」

 地面にうつぶせになり、砕けた破片が何個か飛んでくるが、直撃を避けることが出来た。

 マイの安全を確認するために、後ろを向く。しかし、

「シューちゃん、、、かなりアウトっぽいよ」

 マイは、先程とは、違った震えた声で言い、走ってきた方向を指す。


 いや、指す前にもうそれは、視界に入ってきていた。

 その姿を確認すると同時に飛び起きて、再び走り出す。

 息の合った姉妹の声が街に木霊する


「「ゴリラが来たああああああああああ!」」

 巨大になっても足元が良く見えるようで、正確に地面にいる俺たちを剣で攻撃してくる。

 剣と言っても、ビルでできているため、壊れやすく、よく瓦礫が落ちてくるのだが、

 その一つでも押しつぶされようなら、一発アウトの気の抜けない死が隣り合わせの

 状況になっている。

 スーちゃんによれば、光の粒子になって転送され、別の場所で治療を受けるらしいため、

 本当に死ぬわけじゃないらしいが、それでも、怖いものは、怖い。


 何に一番驚いたって、そりゃあーーーー

 走りながら後ろ斜め上を見る。

 夜になり、星空が見える中、巨大なゴリラは、そこにいた。

 そう、空の中で、羽ばたいているのだ。ゴリラが。

 ―――――翼が生えてるよ、、、、、

 それも巨大な白い翼。

 天使になっているのか。ゴリラって天使になれるのか。

 そもそもゴリラって天使なのか。

 確かに、天使は、人間に羽が生えた姿をしている。

 なら、人間と同じ霊長類のゴリラだって、羽が生えても、、、、うん、おかしいだろ。


 それだけでなく、ゴリラは、息を大きく吸い込むと、口から光線を出し、

 咆哮をすれば、周囲のビルの窓ガラスが割れ、壁にヒビが入り、地割れも起きている。


 僕の考えた最強を全て押し込んだような、文字通りの怪物になった。

 それも、キングコ〇グどころじゃない。

 ゴットコ〇グの領域だ。

 進化したゴリラは、神様にだって勝てるかもしれない。

 強すぎだろ。進化したゴリラ。


 いや、まぁ、つまり、何が言いたいかというと、、、、


 ―――ーインチキ能力もいい加減にしろっ!

 勝てるわけねぇじゃん!

 なんだよ!この世紀末ゴリラ!勇者も剣を捨てて逃げ出すわ!


 上から来る瓦礫に潰されないように走っているが、

 できるだけ距離を取ろうと思っても、ゴリラの羽ばたき一つで

 すぐに追いつかれて、ビル剣を振り下ろしてくる。


 アリ二匹と人間が戦っているような次元が違う状況だ。

 いや、もう戦うという言葉も当てはまらなくなるぐらい劣勢だった。



「シューちゃん」

 マイが自分の名前を呼ぶが、返事する余裕すら残ってなかった。

 呼吸は、乱れ、走るのも足の武装の微力ながらもサポートがあって、

 やっと一定のスピードを出すことが出来ている。

「私にやらせてほしいことがあるんだけど」

 マイは、言葉を続ける。だが、その言葉に思わず一瞬スピードを緩めてしまう。

「私がシューちゃんをおんぶして走りたい」

「駄目だ!!」

 一喝する。

「そんな、、危険なこと、、意地でも、、、させない」

 途切れ途切れに言葉を発して、思いを伝える。

「そういうと思ってたけど、今のシューちゃんに選択肢はないよ」

 マイは、そう言うと、瓦礫が落ちるタイミングを見計らって、

 ―――――朱雀しゅざくの背中から自力で降りる。

「ちゃんと掴まってウグゥ」

 突然のことに驚き、朱雀が後ろを向いた瞬間、マイのタックルを喰らい、

 変な声が出る。

 そのままマイは、朱雀を肩に担いで、走り出す。

「こんなパワフルだったけ?」

「火事場の馬鹿時力を使えると信じた一か八かの賭けだったけどね」

 スピードは、先程と同じか、もしかしたら早いぐらいのスピードが出ていた。

「シューちゃんは、休んでて!私は、体力がなくなるまで走り続けるから」

「馬鹿!そんなことしたら、マイが逃げられなくなるだろ!」

「逃げるんじゃない。次、シューちゃんが地面に立った時は、怪物と戦う時だよ。

 だから、私が逃げる必要なんてない」

「でも!」

「シューちゃん、前に言ったよね。

 家族を守るって。その言葉を今、返すよ」

 全てギリギリのところで瓦礫とビル剣を躱しながら、言う。

「私だって、唯一の家族を守りたいんだよ」

 その言葉に何の言葉も返せなかった。

 守るべきものだと思っていた存在が、実は、こんなにも頼もしい存在だったことを

 見せつけられた。

 マイのこと、全然理解してなかったんだな、俺。

「私が私の全ての体力を使って、全力で逃げている間に、シューちゃんは、

 体力を全力で回復して!

 私の体力がゼロになった時、シューちゃんは、回復した体力をすべて使って、

 あの怪物ゴリラ天使を地面に叩き落とす!作戦」

 ああ、家族ってこんなにもたくましかったんだ。

 兄妹しまいの絆ってこんなにも強いんだ。

「良い作戦だと思う」

「意見の一致、だね。ではーーー」

 マイは、走るために振っている右腕を高々に上げてーーーー

「作戦じっこおおおおおおおお!」

「ぉおおおおお!」

 大きな掛け声を二人で上げ、間もなくして、朱雀は、眠りについた。

 目が覚めたら、お姉ちゃんが頑張る番だ。

 だから、マイよ。頑張って逃げ切ってくれ。


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