表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
14/33

第十三話 前門にゴリラ、後門にゴリラですか? part2

 ゴリラー霊長類ヒト科ゴリラ属。握力は、四百キロあると言われている生物。

 恐らく、素手で戦って勝てる人間は、世界を探し回っても数人程度。


 要するに、もし戦ったら無事で済まない霊長類でトップに君臨する存在。


 そんな生物に、戦いを挑む馬k、、いや、脳筋がいた。


 その人間は、怪物ゴリラの前で、地面に三つ指をつき、クラウチングスタートの構えをしていた。



「ほぅ。さっきの戦いで使っていた技か」

 余裕そうな声を発する、喋るゴリラ。

「見てたのか。」

「そりゃ、あんだけ騒いでいたら、気付かない方がおかしいだろ。

 それで、爆発音のする方に来てみれば、他のチームがドンパチしてるじゃねぇか。

 そこで、俺様は、思いついたんだよ。

 ―――――恐らく誰も思いつかないような名案を!」

「名案、、、だと」

 マイと二人で唾を飲む。

 単純な戦力でも負けているのに、さらにこちらが不利になるようなことを

 実行されたら僅かな希望も消えてしまう。

 唇が痙攣する。

 そして、ゴリラは、口にした。その案をーーーー


「気付いちまったんだ、、、、お前たちの戦いが終わるのを待てば、残ったボロボロの奴を倒すのが楽に倒せる、ということにな!」

「なんだと!」

 こいつ、、、、天才か!

 なぜそんなことを思いつくんだ。

 普通、誰でも戦ってる奴らを見かけたら、

 考えるよりも先に、その戦いに交ざっていくのが普通だろ。

「、、、、はぁ、お姉ちゃんの思考能力がゴリラと同じだったなんて」

 マイが何かを呟いてるがよく聞こえない。

 恐らくマイもビックリしてるんだろう。

「脳みそは、人間と同じぐらいあるんだな。感心したぜ」

「俺様も自分の閃きに恐怖心を抱いちまったよ」

「それで。思惑通り俺はボロボロになってしまったと。

 クソっ、あんたの策士っぷり、憎いほど憧れるぜ」

「ダメだよ、シューちゃん!そのゴリラは、普通のことを言ってるだけだから!

 名案というか、普通そうするから!」

「、、、、、そんな。思いつかなかった俺は、普通以下か」

「あっ!違う違う。シューちゃんは、別次元(脳筋)の人間だから!

 気にしなくて大丈夫!」

「と、遠回しに、妹にも普通じゃないって言われた」

「あー、もう、そうじゃなっくてーーー」


「そうじゃなっくて?」

「シューちゃんは、頭を使わなくても全然魅力的な人間でかっこいいよ!」

「マイ、、、、ありがとう」

「ううん」

 マイは、顔を真っ赤にして俯いている。


「、、、、単純で良かった」


 ぼそっとまた何か呟いてるな。

 よく聞こえないが。


「俺様は、長期戦っていうのが一番嫌いなんだよ。

 来るなら早く来いよ。

 いったいお前は、いつまで三つ指ついてで話してる気だ。

 違和感しかないぞ」

「会話をするのに姿勢を気にするか」

「まぁ、どうでもいいか」


「いくぜ!」

「おう、こい!」

 足にぱんぱんに溜まりに溜まった銀色の粒子をロケットエンジンのように

 噴出させる。

 恐らく、この街に来てから、一番の威力。

 それもビルを何個も壊せる威力だ。

 ゴリラの鳩尾に向かって、全身の力を伝える。

 自分の全力をぶつける。

 これがダメだったらもう手がない。

 頼む、、、喰らってくれ!

「いけえええええええええええええ」

「グッ!」

 感触ありっ!

 ゴリラが後ろに下ろにズズズと勢いよく滑ってて下がっていき、

 ビルの壁にぶつかる。

「き、効いた、のか?」

「効いたぜ」

「良かった。効いたのか。」

「身体の中を衝撃が走るっていうのは、こういうことを言うんだな」

「ダメージが通って良かった、、」

「いや、シューちゃん!生きてるから!倒れてないから!そこのゴリラ!」

「なんだと!」

「バレちまったか、いつ気付くのかと思ったぜ」

「なんて自然なんだ、気付かなかったぜ」

「知能レベル零なの?」

「違う!!相手の話術が凄いだけだ!」

「どうしよう、シューちゃんの知能レベルが猿と同等になったよ」


「にして、ゴリラ、お前なんで攻撃を避けなかったんだ」

「決まってる。朱雀、お前の全力を見たかったからだ」

 片手で腹をさすり、も負う片方の手で頭を掻きながら言う。

 はぁ、とため息をつき、呆れた声で

「やっぱ、お前、弱いわ。

 攻撃に溜めが必要で隙が大きいし、しっかり当てても俺様を仕留める威力がない

 救いようがない強さだな。いや、俺様が無敵すぎるのか」

 ギリッと歯ぎしりする朱雀。

「俺様はさぁ、長期戦ってやつが嫌いでね。

 これで分かっただろ。どんなに足掻いてもお前に勝ち目はない。

 だから、もう追いかけっこは、やめようぜ」


 確かに今の攻撃は、俺の百、いや百二十パーセントの力を出し切った

 渾身の一撃だ。

 ゴリラの言葉に嘘はない。


「俺もその通りだと思う」

 俺の声に、ゴリラが満足したようにゆっくりと近寄ってくる。

「攻撃が効かないやつに勝ち目なんてない。」

 顔を上げると、手が届く距離にゴリラが立ち止まり、岩のような拳を

 振り上げていた。

 数秒後に確実にやられる。


「―――――でも、俺は、負けない」

 死が目の前にあるのに不思議と笑えた。

 恐怖心がないわけじゃない。

 怖い。マイを残して死ぬのは、最悪の結末だ。

 なぜだろう、、、、

 後ろを向く。

 そこには、声を張り上げながら、涙目でこちらに走っている妹の

 姿があった。

 その瞬間、胸の中に熱い何かが溢れてきた

 ああ、そうか、分かった。

 ニヤリとさらに口を歪ませて笑う。


「高梨朱雀は、マイを守る最強の騎士だあああああああああ!」


 刹那、足武装から大量の銀色の粒子が噴き出し、朱雀の身体を

 真上に飛ばす。

 ゴリラの拳は、空を切り、何もない地面に叩きつけられる。

「くそっ!あとちょっとで、仕留められたのに。

 このタイミングで、やりやがったな」


「、、、飛んでる?飛んでるのか、今、俺は!」

 足武装から出る銀色の粒子が止まることなく噴出され、

 落ちることなく、空中に浮くことが出来ている。

「今まで、この粒子は、瞬間的にしか火力を出せなかったのに、

 どういうことだ」


 下を見るとゴリラが足元のコンクリートの破片をこちらに投げようとしている。

「落ちろおおおおおおおおおお、コバエがああああああああ!」

 大砲のように破片が飛んでくる。


 しかし、距離があるおかげで、避けられる。

「避けれる!避けれるぞっ!」

「クソッ!」

 ゴリラは、投げるのを止め、姿勢を低くして、足に負荷をかけ、

 バンッ、という音と共にジャンプしてくる。

「なら、直接落とすだけだああああああああ!」

 弾丸の如く一直線にこちらに飛んでくる。


 これは、避けられないーーーー

「避けれないーーー今までの俺だったらな」

 足の武装の噴出を弱め、ゴリラが上を通り過ぎるタイミングで

 ――――――一気に噴出の威力を高める。

「不用意に空中に浮かんだらいけないっていうのは、格闘の基本だぜ!

 ゴリラさんよおおおおおおおお!」

 身体を反転させながら、ゴリラの鳩尾に蹴りを入れる。


「くそがあああああ!」

「大人しく、打ち上げがれええ、ゴリラアアア」

 空中で身動きが取れないゴリラは、そのまま真上に飛ぶ。

 さらに朱雀は、噴出を強め、ゴリラに下から的確に同じ場所を狙って

 攻撃する。


 その姿は、夜の星に逆さまに落ちていく銀色の流れ星のように

 一直線に空高く、しかし、綺麗な軌跡を描いていた。

「そのまま名付けてーーーー「反転の流星リバーバル・シューティングスター」!」

 打ちあがる速度は、どんどん加速していき、威力も上がっていく。

「星に連れて行ってやるよ、俺は、戻るけどな!」

 連続の攻撃でゴリラの口から血が噴き出す。

「どうした、どうしたあ?無敵のゴリラさんよおお!

 俺の攻撃が効いてるじゃねえかよおおおお」


 笑いが止まらない。

 きっと今、俺は、狂人の類の顔をしていると思う。

 でも、しょうがないだろ。

 無敵の敵を今、追い込めてるんだから。

 マイを守れる力を手に入れたんだから。

 気分が高揚してしょうがない。

「だが、ゴリラの星なんて見たくねぇええからーーー」

 最高速度に達する時点で、鳩尾ではなく、横にずらしてわき腹に

 蹴りを入れる。

 ゴリラの身体は、くるくると高速で回転して、

 最高速度でゴリラの真上に来た朱雀は、その勢いのまま

 ゴリラの鳩尾に的確に蹴りを落とす。

「――地面で砕け散ってくれよ」

 最高速度に加えて、重力で限界速度を超えた速度で

 ゴリラと共に星空から銀色の星が落ちていく。

「朱雀ゥゥウウ!」

「消えろおおおおおお!」

 もう肉眼でその姿を捉えることすら難しい銀色の線が地面に到着する。


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 今までで一番の、いや、比較すらできないほど大きな爆発が発生する。

 その爆発は、近くのビルを倒壊させるほどの威力で、辺り一帯が粉塵で覆われ、

 視界が奪われる。

「ゲホッ、、、ゲホッ、、、シュ、シューちゃん!」

 その中、一人の少女の声が響く。

「マイ!」


 その声に反応してもう一つの声がする。

 二人は、お互いに名前を呼び合いながら、声を頼りに近づいていく。

 やがて、手が触れ合い、お互いの存在を確認する。

「シューちゃん!」

 マイは、朱雀に涙声で抱き着き、痛いほど強く抱きしめる。

「、、、シューちゃん、ううん、私の最強の騎士さんかっこ良かったよ。」

「マイ、、、」

「ありがとう、本当にありがとう」

「感謝しないでくれ」

「そういうわけには、いかないよ。だって、私にできる唯一のことだもん。」

 朱雀は、マイの肩を掴み、身体から引き離すと、真剣な表情で言う。

「違うんだ、マイ、、、よく聞いてくれ!」

「ん?、、、うん」



「まだゴリラは、生きている!」

「・・・・・・・・・・・え?」

 マイの喜びの表情が一瞬で消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ