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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
11/33

第十話 迫りくるは、二つの大きなキョウイですか? part 2

 倒れたビルの上には、体をほぐす様にジャラジャラしたアクセサリーと大きな胸をたゆんたゆんと揺らしながら、

 飛び跳ねている少女。

 あれ、胸痛くないのかな、、、・

 そして、その視線の先には、少女を見上げている二人の人影があった。

「マイは、下がってて。俺があいつに突っ込む。」

「大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。安心しろ。」

「へー。言ってくれるねー。敵の前で言うとは、私への挑発かな。」

 ジャラジャラ少女は、飛び跳ねるのを止め、こちらを据わった目で睨む。

「生憎、俺は戦闘経験ありなんでね。」

 それを聞き、ジャラジャラ少女は、足元のコンクリの欠片を蹴る。

「そういえば、戦う前に名前名乗らないとね。」

「俺の話聞いてた?

 まぁいいや。俺の名前は、高梨朱雀しゅざく。で、後ろにいるのが妹のマイだ。」

「私の名前は、、、、、そうだな。ガーディだ。」

 あれ?今、思い付きで適当な名前言わなかった?

 てか、馬鹿正直に答えちゃダメな質問やつだったんじゃねか。

 また情報漏洩をしてしまった!

 気を付けてたのに!俺の馬鹿!脳筋!ええと、あとは、脳筋馬鹿!

「よしっ!戦う準備が全部出来たところで、やっと始められる。」

「そうだな。本当に。」

「では、」

 ガーディがもう一個足元のコンクリの欠片を蹴る。



「私を女だからって遠慮することないぞ。」

「その言葉、そのまま返すぜ。」



 すぐに石は重力に引っ張られ、地面に当たる。

 カチャッという小さな音を合図に、



「「行くぞっ!」」

 二人は、同時に動き始める。



「足武装、装着!」

 朱雀の周りに一気に銀色の粒子が舞い、渦を描きながら、

 朱雀の足に収束していく。

 かかとからは、銀色の角が腰まで生え、全身から力が湧き上がってくる。

「装着完了!」

 そして、銀色の粒子が再び足に集まっていき、足武装がさらに輝きを増す。

 そして、すぐに腰を落とし、上から迫ってくるガーディを迎い打つ。

「しゃああああああああ!」

 朱雀は、空中で前回転して、ライダーよろしくキックをする。

 寸コンマ後、ガーディの拳と、朱雀の足がぶつかる。

 瞬秒力が拮抗するが、すぐに朱雀の足の力が勝り、ガーディを斜め上に吹き飛ばす。

 ガーディは、空中で姿勢を整え、ビルの壁を蹴り、再び迫ってくる。

 しかし、今度は、朱雀の手前の地面に両手両足で着地し、

 顔をふっと上げ、クラウチングスタートよろしく、朱雀に飛び掛かってくる。

「想像以上に楽しめそうだよ!朱雀ゥゥ!」

 ガーディは、右こぶしを方より後ろに下げ、力を溜める。

 朱雀のようにパワーを上げるオーラのようなものは、感じられない。

 相手の方が動きが早く、足に力を溜める時間がないため、その場で左に横っ飛びする。

 ガーディの右ストレートは空を切るが、すぐに体勢を整え、

 足のつま先をジリッとこちらに向けた。

「まずっ!」

 そのまま体を大きく捻り、まだ空中にいる朱雀の腹に左拳をねじこませる。

「接近戦で安易に地上から離れるなんて、殴ってくださいと言ってるようなもんだ!」

「ぐっあ!」

 腹を鉄球で殴られたような痛みと共に肺から空気を無理やり吐き出され、

 喉から変な声を上げて、

 そのまま数メートル後ろに飛ばされる。



「シューちゃん!」

 地面にドンっと、両手足を縛られているため無様に着地し、ズズズと地面を滑る。

 体の側面の糸が摩擦で熱くなっているのを感じる。

「悪いね。私は、職業柄、戦闘経験が豊富なんだ。」

「あんた、猟兵とか戦闘のプロか。」

 俺は、足で空中をキックして、その勢いでヨット立ち上がる。

「プロは、プロでも、別に戦闘を専門にしている訳じゃない。

 仕事をしている間にやむを得ず身についてしまったんだよ。」

「それで、この強さか。あんた一体何なんだ。」

「私は、ガーディ。お嬢様を自主的にお守りしている聖なる守護者だ!」

「警備員とかか?」

「違う!あんな役立たずの警備員たちと一緒にするな!」

 ガーディの琴線に触れたのか、顔を真っ赤にして怒っている。

「あんなガバガバな警備でお嬢様が守れると思うか!」

 いや、知らんよ。

「私は、朝、昼、晩、とお嬢様の近くで見守り!護衛をして!何不自由ない生活を送ってもらえるように全力を尽くしている!」

「へー、でもさっき自主的にとか言ってなかったか?」

 体の側頭部がまだ熱いが、大きな怪我は、無さそうだ。

「そう1自主的な活動だ!お嬢様と私は、血筋とか家系とか何の関係もないからな!」

「それ他人じゃないか!」

 ビックリして思わず大声でツッコんでしまう。

「ストーカーか!ストーカだったのか!」

 ガーディは、心外だ、とでも言いたそうに少し驚いた顔をする。

「朝、昼、版、お嬢様の家に潜入し、警備員と拳で語り合い、次第に私は強くなり、お嬢様が寝ている横で一緒に寝たり、ご飯をお届けしたり、もちろん超えてはならない一戦は、ちゃんとわきまえているゾ。」

「いや、もう法律とか住居侵入とか超えてるから!

 ただのやばいストーカーだから!ヘビーストーカーだから!」

「私をヘビースモーカーみたいに言うな。私は、これでも未成年だぞ。

 ちなみに、聖なる守護者歴は、十四歳の時に初めてからまだ三年の未熟者だ。」

「その情報どうでもいいから。ていうか、三年でこんな強くなるのか。」

「愛と勇気と執念のなせる技だ。お嬢様に近づく者は、徹底的に排除する!」

「いい迷惑どころかただの迷惑だろ。それ。」

 どこのお嬢さんか知らないけど、ご愁傷さまです。

「ていうか、そもそも聖なる守護者と書いてプロのストーカーと読みかえていいだろ。」

「ストーカーじゃない神聖なる守護者ガーディだ。」

「「神」がついちゃったよ。」

「まぁ、一般人とは、格が違うのだよ。格が。」

「確かに変態の格が違うわ。」

 後ろからマイの呟きが聞こえる。

 あの、、、お願いだから俺を見ながら言うのは、やめて。

「私は、お嬢様のためならともかく、戦闘経験の浅い人間を一方的にボコる趣味はない。

 私、神聖なるガーディだから。」

「生憎、俺は、ここで退くわけにはいかないんだ。

 俺には、マイという守るべき存在がいるから。

 そして、スーちゃんとも約束したんだ。絶対にいなくならないって!」

「「スーちゃん?」」

 二人の声が重なる。

「ああ、さっき会ってと、友達になった金髪の女の子だ。」

「友達?シューちゃんに?」

 何でそんなに意外そうな顔するの?姉ちゃん傷つくよ。

「ああ、連れ去られそうだったところを助けてくれたんだ。

 足が不自由そうで、車いすに乗っていたのに、度胸のあるいい子だよ。

 マイにも後で紹介する。」

「うん、是非ともお願い。シューちゃんの友達なら私も仲良くなりたい!

 友達いないもんね、シューちゃん。」

「あ、ああ。」

 ちょくちょく言葉が刺さるな。徐々にメンタルが削られていくのを感じる。

 後、ガーディがさっきから下を向いて、マサカな、いや、でも、、、、と何か深刻な顔でぶつぶつ呟いていて、怖い。

「あっ!それと、マイのゴハンみたくその子は、昆布をいつも咥えているんだよ。」

 類は友を呼ぶという。なら、マイと似た感覚を持つあの子もきっと親近感を抱いてくれ――

「ふふふ、そうかそうか。分かったぞ。」

 突然の低い声驚いて、声の主を見る。キッとどす黒い憎しみの籠った瞳で睨まれ、

「ソリヴァサミナ=テラ=テトカレア=チンピョンシェロア=ケポラリラ=トキプニ=ケシナ=ホァチスお嬢様のことかあああああああああああああああ!!」

 発狂した。

「え?長、、それ名前なの?呪文詠唱じゃなくて?」

「知っているのか?」

 突然の態度の変化に驚きながらも聞く。

「ホァチスお嬢様は、私の敬愛するお嬢様だ!

 三年前、何者かによってお嬢様の屋敷が爆破され、その時にお嬢様は、足に大けがを負い、それ以来、歩けない体になった。

 さらに、またいつ何者かに襲われるか分からないため、屋敷からの外出が出来なくなったお嬢様。

 ああ、お嬢様、ああ、お嬢様。」

「何者かって誰だよ。」

「分からない。ただ、ホァチスお嬢様は、理由は謎だが、若くして貴族の権力争い(パワーゲーム)に参加し、高い位に着いた天才であり、また、

 それに慢心せず、まるで何かに取り付かれたように努力をしていた方である。

 襲ったのもおおよそ、権力争い(パワーゲーム)絡みの刺客だろう。」

 ガーディは、拳をギュッと握りしめ、

 ふるふる震えている体は、悔しさ、怒り、悲しみ、抑えるのが精一杯そうだ。

「それを聞いた私は、いてもたってもいられず。

 お嬢様をお守りしたいと思った。

 もう誰にもお嬢様に近づけさせない、触らせない鋼の意思を心に持った。

 だって、必死に努力しているお嬢様の姿は、

 落ちこぼれで、自分から何もしようとしなかった幼い私にとって、

 憧れの存在であり、輝いて見えて、――」

 両手で顔を半分覆い、とろけるような恍惚の笑みで、言う。


「――神様なんだから。」


「「・・・・・・」」

 その姿に二人は、黙ってしまう。

 思っていた以上にヤバい展開になってきたのを察していたから。

 次の言葉が何となく想像できてしまったから。

 二人は、身構える。



「そんなお嬢様を外出させ、さらには、とととととと友達という親密な関係を築こうなんて、、、、、信用できないわ!ここで死ねえええええええええ!」

 純粋な殺意の籠った目で、先ほどとは、比べ物にならないスピードで突進してくる。

「守る守るお嬢様。あなたの輝きは、誰よりも純粋で綺麗。

 あなたこそが、貴族のトップに立つべきお方。ああ、私は、、幸せ者です。」

 間隔を開けず、襲ってくる殺意という重みの乗った拳は、朱雀に抵抗の隙を与えない。

「だって、あなたの輝きを守れる唯一の存在なんだから。」

 徐々にパンチのスピードが上がっていく。

 重い衝撃が朱雀の鳩尾みぞおちに当たるのまでに三秒も掛からなかった。

 朱雀は、弾丸の如く後ろに飛ばされ、マイの後ろのビルにぶつかる。

「スーちゃん!?大丈夫!?」

「よそ見をするな!お嬢様を狙う邪魔者があああ!」

 ガーディは、標的をマイに変え、襲い掛かる。

「、、、え、、、あ、、、。」

 突然の戦闘に戸惑い、マイは、動けずその場で固まってしまう。

 が、マイの後ろで爆音がして、銀色の粒子が横を通る。

「ラウンド・トリップ!

 からの、繭キィイイイック!」

 砂埃の中から朱雀が飛び出し、ガーディの右拳をライダーよろしくキックで受ける。

「「うおおおおおおおおおおお」」

 激突の衝撃で、周囲に風を巻き起こし、マイの服をパタパタと揺らめかせた。

「「負けるかあああああああああ」」

 ガーディの拳が朱雀の足のグルグル巻きにされた糸を少しずつ破っていき、

 寸コンマ後、一気に朱雀の足の、正確には、股の糸を破り、

 朱雀の股間に拳がヒットする。

「お前のピーごと砕け散れええええええ!」

「そこは!そこだけはあああああ!あぁ!」

 朱雀は、謎の声と共に再び後ろに飛ばされる。

「この金的を食らって、立ち上がれた男は、いない。さぁ、覚悟しろ!

 アマちゃんやろおおーーーー」

 ガーディは、再び妹に突進しようと飛び掛かった刹那――――



 ―――ガーディの目の前に朱雀が現れる。

「ラウンド・トリップ!」

 朱雀は、体を捻り、銀色の粒子を纏った右足で渾身の空中回し蹴りを

 ガーディの防御されていない左わき腹に、叩き込む。

「金的を食らってなぜすぐ復活できるっ!」

「俺には、、、、キン〇マなんてないからだよおおおお!」

「そんあ、馬鹿なあああああああああ!」

 びゅんっという風切り音と共にガーディが左方向に飛んでいく。

「安易に地上から離れるなんて、蹴ってくださいって、言ってるもんだぞ。」

 地上にストンと着地し、ガーディのいる方向を見る。

「、、グハァ、、、なかなか、、、やるねぇ、、、。」

 吐血しながらゆらゆらと立ち上がっている。

 足武装で強化された渾身の一撃を食らっても死なないのか。

「生憎、職業柄タフなもんでね。正直三年前の私なら余裕でリタイアしてた。」

「今もリタイアしていいんだぞ。」

「ふん!するか!勝負はついたようなもんだ。」

「強がりもそこまでだ!」

「朱雀、大事なことを忘れてないか?」

 そこで、ガーディは、血まみれの顔でニヤリと笑い、

 朱雀の後ろを指さす。

 朱雀が後ろを向くと、マイがふらついており、すぐに倒れた。

 急いで駆け寄り、地面に倒れる前に抱きかかえる。

「そんな、、、マイは、攻撃を一度も喰らってないのに。」

「確かに私の拳は、すべて朱雀、おまえに防がれた。」

 マイのシルクのような首に手を当て、脈があることを確認し、

 呼吸もあることを確認する。

「眠っているだけか。」

「馬鹿に効く薬はないというが、本当の様だったな。」

「なんだと!」

「お二人には、もう睡眠針を刺している。

 だが、どうやらお前は、常に興奮状態のせいで効き目がないらしいな。」

「睡眠針?そんなものどこから。」

「そこだ!お前の忘れていることは。」

 ガーディは、血で染まった拳の人差し指でビシッと俺を指さし、

 嘲笑うかのように言う。




「私がいつから能力を使っていないと勘違いしていた?」


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