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さんしょくし!  作者: 赤井つばさ
一日目
10/33

第九話 迫りくるは、二つの大きなキョウイですか? part 1

「ここで、ずっと街を見てたってことは、

 スーちゃん、マイを見なかったか?」

「うん、見たよ、朱雀お兄さん。」

「えっ。それを早く言ってよ!

 俺、早くマイのところに行かないと!

 今、赤にあいつは、狙われてるんだ!」

「落ち着いて、おにいさん。」

「私も言いたかったけど、もしおにいさんが信用できない相手なら、友達になれず、敵になったとしたら、こちらのチームの情報を渡せるわけないよ。」

「そ、そうだよね。」

 子供に正論を言われてしまった、、、、。

「すまん、熱くなっていた。」

「ううん、大丈夫。」

「今は、協力関係、ううん、と、友達関係なんだから、情報を共有しよう。

 困ってたらお互いに助け合う。

 それが友達関係だよね。」

「ああ、そうだな。俺たちはもう友達だ。」

「マイさんの場所は、ここから結構離れた場所だよ。

 マイさんの近くには、二人敵がいるよ。

 接触するのも時間の問題だと思う。」

「でも、ここからマイさんのいる場所に行くよりも先に敵二人とマイさんが遭遇する方が早いの。」

「というと?」

「おにいさんがマイさんのところに着いた時には、もうマイさんがやられちゃってる可能性が大ってこと。」

「そんな馬鹿な!」

「だから、自分から敵二人と戦いに行って、二対一の不利の状況で戦うのは、止めた方が良いと思うの。」

「そんなことできるか!」

「でも!二人より早くマイさんのところまで辿り着くのは、不可能です!

 自らリタイアしに行くようなものです!

 行く選択肢を私は推奨できません!」

「俺は行く!」

「ダメです!」

「分からず屋!」

「そっちこそ!」

「「むーー!」」

「俺は何があっても行く!」

 そのまま外に出る朱雀。

「待って!」

 スーちゃんが後ろから飛びついて、抱き着く。

「じゃあ、じゃあ!せめて!せめて!

 これを持って行って!」

 スーちゃんは一枚の札を朱雀に渡す。

「すまん、手が出せない。」

 そう、朱雀は今首から下が白い糸でグルグル巻きにされている。

「ああ、ごめんなさい。

 じゃあ、足に張り付けるね。

 その糸グルグル巻き状態だとお腹より足の先っちょの方が見やすいでしょ。」

「〇で近くに敵がいる。って合図だからね。」

「行かせてあげる条件だよ。

 私の指示には従うこと。

 私には、友達が一番大切なんだから。

 せめて、手伝わせて。」

「分かった。」

「ちなみに、裏切ったらその札を使って、あなたを燃やしちゃいますよ。」

「涙目でそんな怖いことを言わないでくれ。」

「裏切るんですか?」

「いや、裏切らないよ。

 安心して、俺をモニター越しに見ていてくれ。」

「言われなくても、ふふふ。」

 楽しそうだな。まぁ、初めての友達だもんな。

 嬉しくなるのも自然なことか。

 スーちゃんの抱き着きが解除され、朱雀は、出口のドアに向かう。

「じゃあ、行ってくる。」

「うん、行ってらっしゃい!」

 しかし、ドアの前で立ち止まる。

「・・・・・・。」

「どうしたの?外に出ないの?」

「スーちゃん・・・・」

「ん?」

「・・・・手が使えないから、ドアノブを掴めない。」

 ああ、と言ってドアを開けてくれた。

「気を付けて。いなくならないでね。」

「ああ、ありがとう。スーちゃん。」

「友達候補のマイさんを連れてきてくれることを考えると興奮するよ。」

「ああ、友だちを増やそうな。」

「うん!友達候補がいる方向はあっちだよ。」

 スーちゃんがある方向に指を指す。

「分かった。ありがとう。」

「うん、どういたしまして!」

 子供の純粋な笑顔が眩しい。

 マンションを降り、スーちゃんが指指した方向に向かって立つ。

「いつも、お前がいたよな。

 ここにきて、お前の存在の大きさに気

 付かされたよ。

 いつもそばにいた。

 でも、分かったんだ。分かってしまったんだ。」


「お前が邪魔な存在だということがな!

 砕けろおおおおおおおおお!壁ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 朱雀の前には、高層ビルが建っていた。

「お前がいるからマイのところにいけない!」


「いつだって、いつだって、てめぇが邪魔だったんだよ!」

 朱雀の周りに灰色のオーラが漂う。

「マイ!マイ!マイ!早く行かないとマイが襲われてしまう。」

 学校で嫌われていた俺にも優しくしてくれた唯一の存在。

「失いたくない!失ってたまるかっ!」

「誰にも傷付けさせはしない!」

「まああああああああああああい!」

 灰色のオーラが銀色に輝き、主人公を覆うように巨大な銀色の竜巻が起こる。

「主人公の足の武装が銀色に輝き、かかとから生えている角が腰の高さまで成長する。」

「お前のためなら、どんな壁だってぶち壊して見せる!」

 地面に三つ指をつき、クラウチングスタートの構えをとるーーー

「グッ!」

 ―――ことができず、「へ」の形で頭を思いっきり黒いコンクリの地面にゴンッと

 ぶつける。

 ・・・・首から下は、動かせないんだった。

 銀色の暴風が朱雀の足に収束していき、足の武装がさらに銀色に輝く。

「名付けて、壁壊しの疾風ブラスト・ウォール・クラッシャー」!!」

 バアアアアアアアアアアアン

 すさまじい爆発音と共に、地面が円形に砕けて、ビルに銀色の風をまといながら、音速を超えるスピードでビルの壁に頭から突っ込んでいく。

 ビルの壁が、次々と砕けていく。

「マァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!」

 地面を蹴り、スピードを徐々に上げていく。

 その分、比例して威力も上がり、壊れる壁の範囲も広がっていく。

「さすがです。朱雀お兄さん!

 壁壊しの疾風ブラスト・ウォール・クラッシャー、壁、というかビルそのものを壊していくなんて。」

 モニター越しに見ると、朱雀が通ったビルが次々と倒れていき、ドミノ倒しの要領で最初に壊したビルまで倒れている。

「疾風の如き速さでビルの壁を壊していく。まさに壁を壊す疾風です!」

 スーちゃんは、ツインテールをピョンピョンとさせながら、モニターの前で何度も机を叩いて興奮していた。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

 朱雀は、叫ぶ。

「これ、どこまでいけばいいんだあああああああ!?」

「方向だけ教えられても距離が分からないと、、、、

 いや、そのためのお札じゃないか!足元も見れば、、、、」

 足元を見る。

 〇のマークがついていた。

「って、もう敵が近くにいるんじゃん!」

 やばい!通り過ぎたりしてないか?

 慌てて地面に足を着き、ブレーキをかける。

 ざざざざざざざざざざざざ

 しかし、音速は、急には止まらない。

 ブレーキを掛けるも、ビルの壁を何枚も壊し続ける。

「止まれえええええええええええええええ!」

 銀色の風が徐々に弱くなっていき、

「よしっ!止まっグハアッ!!」

 壁に頭から勢いはなくなっていたといっても、それは、音速と比べればの話で、普通にすごい勢いで頭から壁に激突した。

「あがああああああああああああああああああああああ!」

 痛い!すごい痛い!脳が震えてる!もうこの技使いたくない!

 音速を超えるスピードを手に入れる代わりに、ブレーキは、ありません。

 自分の身体を張って止まりましょうってか!

 やばいだろ!何回も使える技じゃない!

 頭がじんじんする。

 後ろを向くと通ってきたビルが全て倒れており、道が出来ていた。

 ビルの道というべきか。

 周囲を見渡すとここが大通りだと分かった。

「よしっ!マイを探すぞ!」

 足の札を見るとまだ〇がついていた。

 ということは、まだ近くに敵がいるということ。

 すると、ビルの道を歩いてくる人影が見える。

 早速敵か。いや、マイという可能性も。

 腰を落とし、戦闘態勢をとる。

 ここで敵と遭遇するわけにはいかない。

 一刻も早くマイを見つけないといけないんだ。

 戦う時間をここであまりとりたくない。

 お願いだ!マイであってくれ!

「いやー、派手に暴れる野郎がいるなー。」

 ハズレの敵だ!

 容姿は、一言で言うと、じゃらじゃらしている。

 鼻、耳、おへそに派手なピアスがつけられており、露出も多い。

 ひと昔前に流行ってそうな服装だ。

「ここに来てから、なぜか人と会わなくてなー。

 やっと会えたわ。」

 いや、それは多分、赤は糸使いがが街の中に糸を張って、人の動きを見てたり、緑は、監視カメラで視覚的に人をみていたから、この明らかにヤバそうな見た目の人物をさけていたんだろう。

「あんた、さっきの破壊活動を見るに戦闘タイプという部類に入るだろう。」

「戦闘タイプ?まぁそうだな。」

 この街に来て、色々な人と会った。

 その中で、糸使いやスーちゃんは、戦場に出ないサポートタイプ。

 とすると、モブ使いや俺は、戦闘タイプの部類だろう。

「じゃあ、戦えるんだな。」

「まぁな。」

「ひひひ、じゃあ、戦おうぜ!」

「ここに来てから、一度も戦ってないんだ。

 誰でもいいから戦いたかっんだ。」

 まるで子供がずっと欲しかったおもちゃを目の前にしているかの様に

 目を輝かせて、期待する眼差しでこちらを真っすぐと見る。

「待て!それなら後にしてくれないか?

 俺は、今人を探してるんだ。」

 そう、戦うならマイの安全を確認してからじゃないといけない。

 スーちゃんは、敵は、二人いると言っていた。

 一人は、このジャラジャラした女で、もう一人この近くにいるはずだ。

 とにかくマイを探すのが最優先事項だ。

「人?」

「あああ、この辺りにいると思うんだが。」

「そいつが見つかれば、俺と戦ってくれるのか?」

「ああ、そうだな。」

「そいつの特徴は、どんなだ?」

「えっと、身長は、俺よりーーーーって言えるかあああああ!!」

 危ない。また同じ過ちを犯すところだった。

 あぶねー。よく思い出した脳筋の俺よ。

「そいつって、もしかして、お前より少し身長が低くて、銀髪の女か?」

 なんか、もうすでにばれてるうううううううううううううううう!

 この展開前にもなかったか?

 俺の妹の容姿は、ワールドワイドなのか!?

「さ、さぁ。どうかな?」

 やばい、汗が一気に出てきた。

 絶対バラすもんか!

 悟られないようにするんだ。一挙一動に気を付けるんだ!

「そいつなら、今こっちに歩いてきているぞ。」

「本当か!」

 相手は、後ろを向き、ビルの道を見ている。

 その視線の先には一人の少女が俯きながら歩いていた。

 特徴的な銀色の髪を揺らしながら、



「ま、マアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!!」

 すると少女はこちらを見て、

「――――――――――――!!」

 涙声で顔をグシャグシャにしながら、こちらに叫びながら、走ってくる。

 しかし、途中で敵に気付き、足を止める。

 すると、敵がそれに気付き、

「ん?安心しろ。今は攻撃しないから。

 なんか感動の再開って感じだし。

 邪魔なんかできねぇよ。」

「うん、ありがとう。君はいい人だね!」

 そしてまた走る。



「シューちゃあああん!うわあああん!」

「マァァアアアアアアアアアアアアアアイ!!!」

 見つめあう二人。

 抱き着く二人。

 ああ、今までにこんな感動を味わったことがあるだろうか。

 いや、ない。絶対ない。

 というか、抱き着くのっていつ以来だ?

 抱き着くといってもこちらは、糸で腕が動かせず一方的に抱き着かれている状況だ。

 そもそも抱き着いてたら、糸越しに体に当たっているこの妹の柔らかい胸の感触を忘れるはずがない。

 姉妹なのに、、、、、どうしてこんなに胸囲きょういに差があるんだ!

 そういえば、あの派手な女もマイに負けず、胸がすごい大きーーーいや、ダメだ。考えるな。

 考えたら、負けだ。

「良かった、死んでなくて。」

「うう、それは俺のセリフだ。マイ。」

「不安だったよー。」

「俺も何度マイの名前を叫んだか分からない。」

「「ふふふ、会えてよかった」」

 ああ、幸せだ。

 二人は、お互いをお互いが安心出来るように抱擁を続け、

 お互い安心してから、抱擁を止め、倒れたビルの上にいる相手に身体を向ける。

「準備オッケーだ。」

「準備オッケーです。」

 顔を上げ、ビルの上にいる人物に呼びかける。


「いっち、にー、さん、しー、、ごー、ろく、しち、はちっ。」

ビルの上の人物は、ラジオ体操を始めていた。

「あ、ちょっと待って。もうすぐ終わるから!」

「「マイペースか!あんた!」」

「おおー、息ぴったり。ていうか、あんたらが言うか!

 抱き合う時間が長いわ!よし、準備体操終わり。」

 と言い、派手でマイペースな少女は、体をほぐす様に

 リズミカルにその場で飛び跳ねている。

 そして、笑みを浮かべながら、やや低い声で言う。

「私の初陣だ。楽しませてくれよ。お二人さん。」


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