第**話
「アオ、そろそろ行くわよ?」
「待……っ、寝癖が直んねぇんだよ!」
一番大きな最後の仕事から十年の月日が経った。
「置いてく」
「は? 待てって!」
俺は相変わらずアリアに馬鹿にされる毎日を送っている。
今日はシュウに近況報告をしに行く日だ。
シュウの遺言通り、俺とアリアとカイは海と空が水平線になってる場所に墓をたてた。
「カイ、今頃頑張ってるかなぁ」
ポツリとアリアが呟く。
「政治家目指してんだよな。まぁ、カイなら大丈夫だろ」
あの出来事が終わってすぐに、カイの運び屋解散宣言が出た。
勿論俺とアリアは訳を聞いた。
「この国を根本から変えたいなんて、言われたときはびっくりしたけどね」
そう、カイは今の世の中を変えたいと思うようになったらしい。
ちなみにダンテは警察に捕まったが、心を入れかえて環境保全のための開発をしていると噂で聞いた。
「パパ!ママー!」
四歳の子供が走って来た。……単純に言えば、俺とアリアの子供だ。
カイと別れた後、俺達はそこらをさ迷った。最初は貯めてた金で過ごしたけど、成長してまともな仕事に就けるようになった。
そこで、まぁ色々あって俺とアリアは結婚。照れ臭いからあんまり話したくねぇ。
一時期、アリアがシュウを好きだったとアリア本人から告げられたときは複雑だったけど。
「あんまり走ると転ぶぞー」
今、他愛もないこの瞬間が本当に幸せだと思う。
「わ……っ!」
「本当に転んだわ」
冷静、というより冷めた瞳でそれを眺めるアリア。
「しょうがねぇなぁ」
俺は苦笑しつつも、泣きそうな我が息子の元に走った。
「アリア」
前々からずっと考えていたことを、俺は話そうと思っていた。
「何?」
「シュウは幸せだったかな……」
ほんの数ヵ月生活しただけでも、未だに心が忘れることを許さない。
「当たり前じゃない。だってシュウの最期は笑顔だったもの」
「そうだな。なぁ、此処に家建てようぜ? そしたらあいつも淋しくねぇだろ」
俺の視線の先には歪な形の墓石がある。それとの帰り際の瞬間が、シュウとの永遠の別れな気がしていつも嫌だった。
「良いわね、私も考えてたの」
アリアは綺麗に笑ってみせた。
「シュウって……パパ達のお友達だった人?」
不思議そうに首を傾げる子供。
「そう、勿論今も大切なお友達。だから貴方にシュウって名前をつけたのよ?」
シュウに向かって微笑んだ。
「優しく真っ直ぐな人間になるようにな」
「ふーん……、じゃあ僕頑張るね!」
それからまた一年後、海の見える小高い丘に小さな白い家を建てた。そこはいつも、明るく笑顔に包まれてる。
ようやく完結しました!!ラストは皆さん的には如何だったでしょうか?個人的にシュウを死なせるのは辛かったです。
全体的にシリアスな感じですが皆さんに楽しんで頂けたら嬉しいです。
長い間この作品を読んでくださり、ありがとうございました!!