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Delivery children.  作者: 詩音
26/27

第25話

 アリア視点です。



 華奢なナイフは大きな機械に深く突き刺さった。

「な、なんてことを…」

 顔を大きく歪めるゼム。それに引き換えダンテは無表情だった。

 ひびが入り、塔が崩れる。それと同時にシュウの体が宙を舞い、地面に落ちてきた。

「シュウ!」

「シュウ……!」

 体が反応せずに叫ぶしか出来ない私とアオ。その代わり、カイが勢いよく走ってシュウをギリギリ受け止めた。

「シュウ!」

「しっかりしろ、シュウ!」

「あ……まだ動け、ル?」

 ぼんやりした表情のシュウ。目の焦点がずれているようで、何処か遠くの方を見つめている。

 声もかすれたような機械的なものになりつつあった。確実に、確実に終わりが近付いてる。

「皆……怪我ハ?」

「ないよ、大丈夫」

 カイは両腕でシュウの体を支えている。

「あの人、結構可哀想な人ダッタ。僕ハもう恨みなんかないカラ、殺さないであげテ?」 動かない体に鞭を打ち、シュウはダンテを指差す。可哀想な人とは、自分の息子を失ったことだろう。

 指差された本人は泣き崩れていた。

「わかった」

 早口でカイが答える。カイも気付いてるんだ、シュウの最期を。

「皆ト、一緒にいれテ僕は幸せダッタ」

 息で出てるみたいにシュウの声は弱々しかった。

「そ……っ、もう終わりみたいなこと言うなよ!」

 アオが泣きながらシュウにつかみかかった。

 止めるべきだろうが一番親しかったのはアオだ、怒る権利がある。それに、泣いてて私には止める力が無かった。

「僕のお墓、作って欲しイ。海と空の境目が、一直線ニなってるトコロ……に」

「シュウ!」

「それが、僕のワガママ」

 それから、シュウが動くことはなかった。

「シュウ……」

 泣きながらシュウの体を揺さぶるアオ。カイもシュウの手を強く握り締めていた。

 その隣で私は、いつだかシュウとアオと私の三人で話していたことを思い出した。

 多少のワガママは相手にも嬉しい。そんなことをシュウに言った気がする。

「最初のワガママが最期なんて、何考えてんのよ……」

 口ではそう怒りつつも、目から溢れる涙はなかなか止まらなかった。







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