第24話
アオ視点です。もうすぐ最終話ですよー。
メイン装置室に入った俺達を迎えたのは十メートル近くある馬鹿デカイ塔だった。
これがメイン装置だ、そう思った俺やカイはすぐに愛用の銃を取り出した。
「あれ見て!」
「シュウ!」
アリアが指差す先には、見慣れた黒髪のシュウがいた。
「皆! 良かった、無事だったんだね」
「そんなことよりお前何やってんだ! 危ないから降りろよ!」
シュウは塔の頂上付近に立ってる。今にもバランス壊しそうでこっちがはらはらする。
「やだ」
首を横に振る。
「は?」
俺の中で怒りが沸々とこみ上げる。
「三人とも、これは僕に壊させて?」
シュウが微笑みながら言う。
「というか、これは僕が壊さなきゃいけないんだ。約束したから」
「約束って、誰と?」
不安そうな表情のアリアが尋ねる。
「……もう一人の僕」
そう答えるとシュウはカイからもらったナイフをポケットから出した。
「シュウやめてくれ!」
「やめるんだR404!」
俺達の到着に少し遅れてダンテやゼム達がやってきた。
「ダンテさん」
「シュウ……?」
強い眼差しでダンテを見つめ、シュウは思いきり息を吸った。
「僕は、これを壊します。それが、レオの願いだと思うから」
……レオ?
聞いたことのない名前だったが、ダンテを動揺させるには充分だったらしい。
「何故その名を……」
「トマから聞きました。彼もメイン装置を壊すことを望んでいます」
「……馬鹿な、そんなこと」
喉の奥から絞り出すような声のダンテ。
「以前の貴方に戻って欲しいと、彼は言っていました」
「……愚かな。その装置を壊せば雨を作る機能どころかお前達も動かなくなるぞ!」
「何、だって……?」
シュウが動かなくなるだと?
「そんな……!」
アリアやカイも動揺を隠せない。
「わかってます」
平然と言葉を交わすシュウ。
「部屋でトマから聞きました」
いつものシュウじゃないみたいだ。俺達と一緒にいたシュウが、大勢の前で堂々と話してる。
「これで皆が幸せになるなら、僕は喜んで死にます」
シュウの晴れ晴れとした笑顔を見るのは久しぶりかもしれない。
「……アオ」
「?」
「この仕事に、命賭けたよ」
その言葉とともに、シュウはナイフを振り上げた。
「おい、あのガキを撃て!」
「ゼム……急に何を言ってるんだ!」
ダンテが声高にして叫んだ。
「ダンテ様、あれが無ければ我々は終わりです」
ゼムは冷静に言った。
「止めろ、シュウを……レオを撃つなんて私は許さないぞ!」
この研究所の最高責任者はシュウと自分の子供を混同してるみたいだ。
ゼムに命じられた奴らはシュウに照準を合わせる。
「止めろ!」
ダンテの声は最早届いていない。
俺の横に風が走った。
「子供が命張ってるんだ。見届けることくらい出来るだろ?」
風の正体はカイだった。撃とうとしていた男の銃を手で割った。
それに俺とアリアも続く。研究所の人間を片っ端から殴り倒した。
シュウが命を賭けるなら、誰にも邪魔はさせない。
「……さよなら」
そうシュウが呟いたのを俺は気付かず、ナイフを振り下ろした音だけが聞こえた。