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Delivery children.  作者: 詩音
21/27

第20話

 シュウの視点です。



「二人とも良い?」

 アリアがアオと僕に視線を向ける。

「おぅ」

「うん」

 今日が作戦の決行日だ。つまり僕の生まれた場所の消える日。

 僕とアオとアリアは真夜中の路地裏にいた。

「シュウ、これカイから」

 真っ黒な服に身を包んだアリアが紙袋を渡してきた。

「ありがとう」

 持ったら重かった。中身は銃とナイフ。僕は黙って二つを服の中にしまい込む。アオもアリアも何も言わなかった。

「行きましょう、時間がなくなる。」

 この時間帯は研究所にいる人が一番少ないのは事前に調べてあった。

 少し狭い通気孔を通って第二研究所の入り口付近に出る。

「警備員は四人みたいだな」

 アオがサッと盗み見た。

「私とアオだけで充分ね。シュウは隠れてて」

「……わかった」

 足手まといにはなりたくなかったから、僕はおとなしく指示に従う。

「ちゃんと気絶させてよ?」

「そっちもな」

 すぐに分担が決まり、一気に二人は行動に移った。

「誰だ!」

「が……っ!」

 数秒で片がついた。警備員達は皆ぐったりしている。

「お疲れ様」

 いつもの笑みを浮かべ、マイペースに中に入ってきたカイさん。

「こいつら本当に警備員かよ。弱すぎ」

「……アオ達が強すぎるんじゃない?」

 僕は疎外感を持ちつつそう言った。

「さて、進もうか」

 結局作戦の方は出会った敵は戦闘不能にする、という無謀に近い強行突破となった。




「結構広いのね」

 アリアが呟く。確かに歩く道全てが同じように見える。

「シュウ、ここら辺に見覚えある?」

「うーん……通ったことある気はする」

 未だに霞みがかった僕の記憶。それはある扉の前で霞みが取り払われようとしていた。

「此処……」

「何か思い出したのか?」

 アオが聞いてきた。

 僕は何も答えずに扉に指を触れる。ガーッ、と機械的な唸り声を上げて扉は開いた。

「……っ!」

 僕達は目の前に広がる光景を見て誰一人言葉が出なかった。

 部屋にはたくさんの壊れたロボットらしき人が何体も積み重なっていた。

「全部シュウにそっくりじゃねぇか……」

 そう、どのロボットの顔も僕に瓜二つだった。

「此処にいる皆は僕と同じように作られたロボット達だ」

「シュウ?」

 頭に色々な記憶が蘇ってくる。

「一緒に生まれて、一緒に過ごした仲間だった」

「おいシュウ……」

「聞いて」

 戸惑うアオをカイさんがなだめた姿を横目で確認しつつ、僕の口は止まらなかった。

「一緒にいるにつれて、お互いの存在に疑問を持つようになって、ダンテに聞いたんだ」

 そうだ、ダンテは夢にも出てきてたじゃないか。

「ダンテって……?」

「この研究所の最高責任者で、シュウや……此処にいるロボットを作った人間だよ」

 不思議そうにカイさんに尋ねるアリア。ダンテのことを知るとうつむいてしまった。

「その日から少しずつ仲間が消え始めた。出来の悪い仲間から」

 僕以外は誰もしゃべってなかった。

「そのうち全員が壊されると思った僕達は、一番性能が良かった僕が逃げることになったんだ。それで研究所の実体を広めるって……」

 どうしてだろう。今ならいくらでも思い出せる。

「そう約束したのに……っ」

 守れなかった。

 そう続きを言うことも出来ずに、僕はただ泣いていた。

「誰か来る」

「シュウ、悪い」

「え?」

 アオに体を押されて僕は仲間達の中に埋まった。

 真っ暗になった視界で聴覚だけが研ぎ澄まされる。

「おや、運び屋の……。こんな場所までどうしたんですか?」

「ゼムさん、でしたっけ」

「覚えてて下さったんですね」

 温和な会話に聞こえるが、互いに思っていることは真逆の感情だろう。

 声が尖ってる。

「そちらが仲間の方々……?」

「まぁ、助手ってところです」

「そうですか、本題に入りましょう。此処で何をしているんです?」

 バタバタと多くの足音が聞こえた。ゼムという男が呼んだのだろう。

「ちょっと道に迷ったんです」

 カイさんらしい冗談が飛ぶが、相手は笑っていないようだ。

「捕えろ」

「はっ、わかりました」

 冷たい声でデネが仲間にそう指示した。

 皆が危ない、僕は体を動かそうともがくがロボット達の重みで身体が沈むだけだった。

「触んなっての!」

 アオの怒鳴り声とともに、殴る音がする。

「やはりお強いんですね」

「お褒めいただき、光栄です」

 カイさんは息を乱すことなく答えたそのとき。




「デネ、仕事は済んだか?」

 懐かしい声を聞いた。

「ダンテ様……! 申し訳ありません、まだです」

「遅すぎて待ちくたびれた」

「も、申し訳ありません……」

「ところでR404の姿がないが?」

 驚きのあまりビクッと体が跳ねた。僕の存在がバレてる。

「隠れていると思われます」

「そうか。運び屋、といったね?」

「そうですが」

 気丈な声でアリアが答えた。

「君達は十六番街の住人だね。運び屋のことは少し調べさせてもらった。睨まないでくれ。君達の行動次第で十六番街の未来が決まるんだ」

 大切な居場所を奪う。そうだ。ダンテはこういう人間だった。

「おとなしくしていれば危害は加えないさ。R404を連れてきてくれたんだから」

 カチッという音が三つ鳴った。

「そのわりには手錠なんか使うんですね」

「まぁ暴れてもらわれても困るからね」

 穏やかそうな声に吐気がした。

「さて……、いるんだろう?」

 ダンテの声が変わった気がした。







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