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Delivery children.  作者: 詩音
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第17話

 今回はアオ視点です。



 人殺しになった俺には世界が真っ赤な血に染まって見えた。

 服も着替えたし、石鹸で何度も手を洗った。

「それでも手は血の熱さを忘れないで、体は血に包まれたときとか刺したときの感触を忘れてない」

 ふと自分の手を見た。まだ子供だと認識されるこの小さな手が、何十人の人を殺し、傷つけてきたのだろうか。

「うずくまってた俺に、突然現われたカイが言ったんだ。一人なら一緒にいようって」

 今思えば、誘拐に間違われるような台詞だ。

 でも俺はその言葉とカイのキラキラ光る白髪と謎めいた雰囲気にどうしようもなく興味を持ってた。

「そこで現在に至るわけ。わかったか?」

「……何が?」

「アオ。話が全く繋がってないわ」

 頭をひねって言いたいことを考えた。

「つまりー、こんな俺でもカイは面倒みてくれてるってこと」

「うーん」

 シュウはあんまり納得してないみたいだ。

「前にカイに言われたことがある。俺だけの名言だけど、お前らにも教えてやるよ」

「何それ?」

 アリアも知らなかったんだな。俺って特別?

 少し頬をゆるめて口を開く。

「いつ死ぬかわからない人生なら自分らしく生きろ、ってさ。多少のワガママがあった方が相手には嬉しいらしいぜ?」

「……アリアも嬉しい?」

「勿論よ」

「アオも?」

「当たり前だろ」

 不安そうなアオに俺は笑いかけた。

 それを聞いてシュウは腕を組んで悩み始める。

「写真が見たい」

「写真?」

「うん、あのね、前にそこの壁に飾ってあった絵みたいな景色の写真が見たいんだ」

 シュウはいつもより目を輝かせていた。

「そこの壁って……確か海の絵」

「青い海と空の境目。そうよね?」

 題名を言い当てたアリアにシュウは嬉しそうに頷いた。

「俺には芸術なんか必要ねぇもん」

 負け惜しみみたいで、言ってて自分が馬鹿に思えてきた。

「必要ないんじゃなくて、わからないだけでしょ?」

「うるさい」

 そっぽを向く俺を尻目にシュウとアリアは他にどんな本が読みたいか話していた。外を見やれば、朝日が窓から顔を出している。

 よく考えれば一睡もしてねぇじゃん。

 俺はソファで少し眠ることにした。




 寝過ぎた朝日は夕日になろうとしてる。

「夜行性になってきたな……」

 寝癖つきの頭をガシガシかく。

 周りを見ればシュウとアリアもテーブルに顔と腕を乗せて眠っていた。

 風邪をひかれても困るから俺は仕方なく毛布を二人にかけてやった。

「ん……」

 アリアに毛布をかけるとき、少し身じろいだ。今更だがよく見ると整った顔してる。

「寝てりゃ少しは可愛いのにな」

 なんて独り言を言っていた自分を殴りたくなった。

「アオ……?」

 突然名前を呼ばれて体が跳ねた。

 声の元を見ると、寝惚け気味に目をさ迷わせている。

「シュウ、起きてたのか?」

「今……」

 大きな欠伸で答えた。さっきの独り言は聞かれてなかったようで、俺はホッとした。

「まだ眠いなら寝てろよ」

「ん……アオ」

「あ?」

「僕はアオが必要だよ。アオがこの世界に生まれてきてくれて嬉しい」

 泣きたくなった。余りにもシュウが幸せそうな笑顔で言ってくれたから。

「馬鹿、さっさと寝ろ」

「はーい……」

 シュウが眠ったのを確認してから、溢れる涙を袖で何度も拭った。




 カイが帰ってきたのはそれから三時間後で、俺達が夕飯……むしろ朝飯を食べようとしているときだった。

「あのさぁ」

 コーヒーをすするカイは唐突に切り出した。

「何?」

「シュウおかわり」

「あ、うん」

 アリアは興味を持った様だが俺とシュウはいつもと変わらない態度をとる。

「セシリア研究所潰さない?」

「……は?」

 俺は箸を落とし、シュウは茶碗を持ったまま固まっている。アリアも大きな目を更に開かせ、驚いていた。

 言い出した本人は余裕そうに不敵な笑みを見せていた。







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