第14話
シュウ視点です。
「おかえり二人とも」
「おかえり」
カイさんは僕をいつも通り迎えてくれた。アオは複雑そうな顔をしている。
「ただいま」
「ただいま……」
僕は何故か少しだけ緊張していた。
「あのさ」
アオがおずおずと近寄ってきた。
「シュウはちゃんと俺達の仲間だからな?」
正直少し驚いた。普段そういう台詞をアオは笑って言ってたから。真剣な面持ちの言葉が、僕には凄く嬉しかった。
「ありがとう、アオ」
「じゃあ、仲間会議でもしようか」
ポン、と頭にカイさんの手が触れた。
家を出てそんなに時間は過ぎてないのに、酷く懐かしく思えた。
「こういうわけ。大体わかってもらえたかな?」
「うん」
カイさんは僕に全部話してくれた。僕を探す怪しい組織のことやを。内容に対して僕の驚きはあんまりなかった。
「大丈夫?」
それでもアリアが顔を覗き込んでくる。
心配性だなぁ。
「うん、約束したもんね」
僕は大丈夫と言って笑顔を見せる。
「宣言って何だ?」
アオが不思議そうな目で僕とアリアを眺める。
「あれだよアオ。二人だけの秘密ってヤツ。羨ましいね」
あやすようにアオの頭を撫でながらカイさんは言った。
「ガキ扱いすんなよカイ!」
一気に眉間にシワを寄せ、不機嫌な表情になる。
「俺から見たら何十年後でも三人は子供なの」
カイさんはそう言って微笑んでいた。
そしてその夜。
「ねぇアオ。もう寝ちゃった?」
「起きてる」
少し不機嫌そうなアオ。何故かというと、やっぱり僕とアリアの秘密のことだと思う。
「僕ね、決めたんだ」
アオに黙る理由も無いから、僕はちゃんと話すことにした。
「何を?」
「皆が僕を支えてくれるから、ちゃんと全部受け入れるって。どんなことでもね?」
アオに背を向けていた僕は後ろでアオが起き上がったのを感じた。
「心配すんなよシュウ。何かあったら俺が頑張るからさ」
「ありがと」
でもね、アオ。僕はあんまり無理してほしくないんだ。勿論アリアやカイさんにも。だって充分すぎるくらい幸せで楽しい毎日だったから。
だから、もう怖いことなんて無いよ。僕が皆を守る。
そう思いつつ僕は眠りについた。
そしてその日、僕はあの夢を見ていた。
「まだ見つからないのか」
「申し訳ありません……」
偉そうな太り気味の男の人とガリガリに痩せたスーツ姿の男の人は電気の少ない暗い部屋にいた。
周りには緑色の怪しい液体がカプセルに入り、淡く光を放っている。
「ゼム、子供一人にいつまで手間取るつもりだ?」
「仰るとおりです。我々の力不足は認めます。ですから、ちょっとした人間に力を借りたく、その許可を頂きに参りました」
ゼムと呼ばれた人は頭を上げて進言した。
「ちょっとした人間?」
「最近一番街の裏の世界で運び屋、というものが名を上げています」
「運び屋……」
興味を持ったようでもう一人の男の眼鏡に隠れた目が一瞬輝いた。
「はい。成功率八割以上で、危険な仕事も殺人もやり遂げる何でも屋に近いとか……」
「その運び屋に探させるのか?」
「我ら研究員が百人で探しても見つからないのですから、少しでも何か変化を起こしたいのです」
「良いだろう、ゼムに任せる。金に糸目はつけないから存分に使え」
「ありがとうございます、……様」
偉そうな男の人も夢の内容も僕は覚えていなかった。