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第9話 冒険者ギルド

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 第9話 冒険者ギルド

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 ライバスの町に入るには、検問がある。冒険者は冒険者証を見せるだけでいいらしいが、私のように身分証も何も持ってない人は通行料を払って、指名手配書と顔を突き合わせる。指名手配書は百枚以上あり、その手間賃として通行料を払うと思えばいいようだ。


「うむ、問題なし。通ってよし」

「お疲れ様です」


 一枚一枚しっかり顔を確認されたから、いい時間がかかった。

 通行料はヒルダさんがどうしても出すというので、甘えることにした。その際、アールス硬貨で銀貨二枚を支払っていた。


 一時間くらい検問所にいたが、ヒルダさんたちは待っていてくれた。


「恩人を置いていくなんてできませんから」


 律儀な人たちだ。


「すまないが、ギルドへ寄らせてくれ。その後、宿に案内するということで」

「ええ、構いませんよ」


 ゲールの提案を受け入れる。


「ハジメさんも冒険者登録しますか? 身分証として使えますよ」


 異世界といえば冒険者、冒険者といえばチート、チートといえば私!

 冒険者は今の私のための職業だ。


 だが、断る! とは言いませんけど。


「冒険者になると、何か制約があるのですか?」

「制約ですか……制約というほどではないですが、GランクからCランクまでは、決まった期間以上クエストをクリアしないと、冒険者の身分が剥奪されますね。あとはDランク以上になると、指名クエストがあります。指名クエストは断ることもできますが、貴族や富豪からの指名なので、なかなか断れません」


 詳しく聞くと、GランクとFランク冒険者は一カ月に一回クエストをしないといけない。一カ月に一回ならそこまで苦にならないな。実際にそんな働きかたをしたら、低ランクのうちは生活できないと思うし。

 ただ、断れるといいながら、実質的には強制される指名クエストはちょっと嫌だ。まあ、断ってやるんだけどね。今世ではNOといえるハジメを始めます!


「お試しでもいいですかね?」

「問題ないですよ。冒険者だけが職業ではないので」


 これでも三十年以上、孤独だけが友達だったのだ。他人と関わって生きていくのはハードルが高い。

 冒険者は一人でもできる仕事もあるようだし、なんとかなるかな?


「ここが冒険者ギルドです」


 なかなか立派な建物だ。ここは元要塞だったこともあり、建物は全て石造りになっている。

 大通りも石畳みになっており、馬車ならぬ魔車ましゃがひっきりなしに走っている。まるでローマだなと思ったが、実際にローマを見たことないんだよね、現代も古代も。

 その時だった。大きな影が私たちを覆ったのだ。曇ってきたのかと、空を見上げると……なんとっ!?


「な、んだ、あれは?」

「あら、飛空艇を見たことないの?」

「ひくうてい……」


 まさに空を飛ぶ船だ。飛行機ではなく、船だ。こんなものがあるのか、異世界!


「すごいなー、乗ってみたいなー」

「飛空艇に乗るのは、貴族や富豪くらいなものですね」

「Aランク冒険者のヒルダさんなら乗れますか?」

「そうですね。Cランク冒険者ならがんばれば乗れますし、Bランク冒険者ならそこそこ乗ることが可能ですよ」


 冒険者はそれだけ儲けることができるのか。Sランクのガガド・コングに苦戦していたヒルダさんたちは、Aランク冒険者だ。おそらくAランク冒険者は富豪の類に入るんだろう。ということは、冒険者は楽な仕事じゃないか?

 いやいや、まだ結論を出すのは早い。他の可能性を模索してからでいいじゃないか。

 遠のいていく飛空艇を見る。できれば、飛空艇に無理なく乗れるくらいには裕福になりたい。


「おい、ハジメ。入るぞ」

「はーい」


 五人について冒険者ギルドに入る。スイングドアではない頑丈そうなドアを開けて、入っていく。

 五人の姿を見た冒険者たちは、憧れを浮かべた目で見ている人がほとんどだ。それだけAランク冒険者は稀有な存在なんだろう。

 まずは私の冒険者登録だ。五人が見守る中で登録は完了した。文字は普通に読めるし、書くこともできた。

 しかし、冒険者ギルドというのは、綺麗な受け付けを揃えているな。ただ、若い人ばかりなのはいただけない。綺麗だとは思うが、なんとなく物足りなく感じる。やっぱり女性は三十からだ。

 もらった冒険者証にはGランクと記載があった。


「ハジメさんはここで待っていてください」


 フロアの一角に酒場があり、私はそこのテーブルについて待つことになった。そんな私に冒険者たちの視線が集まる。こういうのはあまり気分のいいものではないが、Aランク冒険者のミノタウロスの巨斧の連れだから有名税みたいなものか。


「マスター。こちらの方にエールを」


 ヒルダさんがエールを頼み、お金も払ってくれる。なんだかヒモになった気分だ。ヒルダさんのヒモなら、いくらでもなりたいものだけどな。

 ヒルダさんがカウンターのほうへ歩いていく。どれだけ見ても見飽きないいいお尻だ。


「おまちどう」


 ウエイトレスがエールを運んできてくれた。おお、なかなかセクシーなお姿で。

 ウエイトレスは二十歳そこそこの綺麗な女性ひとで、ブラに毛が生えたくらいの服とミニスカを穿いている。お婆ちゃんから「お腹が冷えるよ」と言われそうだな。


 エールを一口飲んでみると、温かった。俺の知識ではエールは常温で飲むもので、ビールは冷やして飲むものだ。でも、このエールはあまり美味しくない。

 もしかして冷やしたら美味くなるのだろうか? エールがキンキンに冷えたイメージをし、魔法を発動させる。

 ―――冷却コールド

 木のジョッキなので他の人からは見えないが、エールはしっかり冷えている。

 飲んでみると、少し美味くなっていた。この世界のエールは冷やして飲むのがいいようだ。

 何か肴になるものをAMAZINを物色し、あたりめ(スルメ)を購入。無限収納の背嚢の中に現れたそれを取り出してチュパチュパやる。

 美味いな~。あたりめはしゃぶっているだけでいい味が出る。そして冷たいエールをゴクッゴクッと喉の奥へ流し込む。気が抜けたエールだと思って飲めば、我慢できないものでもない。


「おい、あんた。それはなんだ?」


 顔に大きな傷痕がある強面の男がテーブルを挟んで座った。スカーフェイスというやつか、迫力があるな。その男はあたりめを指差している。


「これはあたりめという海の幸を乾燥させたものだ」

「なあ、一本俺にくれないか。金なら払うからよ」

「別に金なんかいらないよ。ほら」


 スカーフェイスにあたりめを譲る。


「ありがてぇ、遠慮なくもらうぜ……なんだこれ!? 臭みがあるのに、なんか癖になる味だ!」

「噛めば噛むほど味が出てくるぞ」

「おう、うめーな、これ」

「おい、あんちゃん。俺にもくれないか」

「俺にも」

「俺も頼むよ」


 なんか強面たちが集まってきてしまった。男に囲まれても嬉しくない。それどころか昔カツアゲされた記憶がよみがえる。

 だが、あの時とは状況が違う。この男たちは珍しいあたりめが欲しくて群がっているんだ。美味しいは正義! そんな言葉が脳裏に浮かんだ。


「遠慮なく食べな」


 私はあたりめとさきいかを追加で出し、皆に振舞った。


「おおお、これはうめー!」

「こっちは柔らかいが、いい味が出てくるぜ!」

「こっちの硬いほうが俺は好きだが、どっちもうめー!」

「こんなに美味いもんをもらうだけは悪いぜ、エールのおかわりは俺持ちだ。マスター、このあんちゃんにエールを」


 むさ苦しい男たちだが、気のよいヤツらだな。私はエールのおかわりをもらい、こっそり冷やして飲んだ。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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