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第6話 ゴリラ・ゴリラ

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 第6話 ゴリラ・ゴリラ

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 ゲールは血を多く失ったので、すぐに動けない。だから今日は少しだけ移動したところで野営し、町へは明日向かうことになった。


「解体できないのか。なら、俺がやってやろう」


 ガガド・コングの死体の扱いについて、五人は私が倒したのだから権利は私にあると言い張った。そこで解体ができないと言うと、ドラゴがやってくれると手を挙げた。


「いいのですか?」

「これでも解体は上手うまいんだぜ! 任せておきな!」


 ドラゴは短剣を取り出し、ガガド・コングの解体を始めた。少し見ていたが、慣れたものでとても手際がよかった。

 内臓をドバドバッと掻き出すのは、豪快だと思ったよ。

 最年少の、前世ではJC年齢のチッチが魔法で穴を掘り、ルイーザが内臓を放り込んだ。

 連携がとれてドンドン解体が進んでいく。ゴリラがゴリラを解体している……。シュールな光景だ。


「そろそろお昼にしましょうか。携帯食しかないですが、ハジメさんも一緒にどうですか?」


 濃い紫色の瞳がとても神秘的で、ピンクゴールドのストレートロングの髪をかき上げたヒルダさんにお昼に誘われた。

 貴方を食べたい! 思わずそんな言葉を飲んだ。


「それなら、昼は私が提供します」

「助けてもらったのはこっちらなのですから、お昼までご馳走になるわけにはいきません」

「いえ、大したものではないので、気にしないでください」


 ネット通販を起動させ、菓子パン類から焼きそばパンをチョイスした。無限収納の背嚢の中に箱が現れないかなと思っていたら、できてしまった。

 無限収納の背嚢から段ボール箱を取り出すと、ヒルダさんが驚いていた。


「その背嚢はアイテムボックスですか。さすがはガガド・コングを瞬殺するハジメさんです! いいものを持っているのですね!」

「アイテムボックスは珍しいのですか?」

「それなりの数は流通してますが、便利なものですから値段はそれなりに高いですよ。私たちも一つ持っていますが、あまり容量が大きくないので入れるものを選んでいるのです」


 ヒルダさんとお喋りをしながら、箱を開けて焼きそばパンを手渡す。しかし、いい女だ。あの腰の肉つき具合がたまらん。


「これは?」

「焼きそばパンというものです。美味しいですから、食べてみてください」


 私がビニールを剥いて食べるところを見せると、ヒルダさんも同じようにして口へ持っていく。

 これで毒が入ってないと思うだろう。そんなこと思ってないかもしれないけど、警戒はしているんじゃないかな。今日会ったばかりだし。


「あ、美味しい。これ、好きです!」


 ヒルダさんがとてもいい笑顔になった。


「歩きながらも食べられるし、美味しいので私も好きですよ」

「それは何だ? 美味しそうじゃないか!?」

「これはハジメさんが提供くださった焼きそばパンというものですよ。ルイーザ」


 野性的な美女のルイーザさんだ。割れた腹筋が頼もしい!


「あたしにもくれよ」

「どうぞどうぞ、たくさんあるので好きなだけ食べてください」

「ありがとう、ハジメ! あむっ! ……美味い! なんだこれ、美味すぎるぞ!」

「もうルイーザったら……。ごめんなさいね、ハジメさん」

「いえいえ、美味しいと言って食べてもらえたら、焼きそばパンも本望でしょうから」


 パーマをかけたようなセミロングの赤毛をしたルイーザさんは、気の強そうな切れ長の目をしている。瞳は焦げ茶色で筋肉質な体は無駄な肉などなさそうに見えるが、その胸には夢が詰まっていると思われ、ヒルダさんよりも大きい。お尻は引き締まっていて、これはこれで需要があるものだ。


「ゲールさんたちもどうぞ」


 解体をしているドラゴ以外のゲールとチッチにも勧める。


「うっま!? なんだよ、これ!? パンは柔らかいし、それに中に入っているこのウニョウニョしたものがめっちゃ美味いぞ!」


 ウニョウニョって……この世界には麺はないのか?


「美味しい。うち、これ好き」


 それはよかった。濃紺の髪を肩上でばっさり切り揃えたチッチは、十三歳より幼く見える。冷たさを感じる空色の瞳に暖かみがさす。


 その後、ドラゴも解体が終わり、チッチに魔法で水を出してもらって血を洗い流すと、焼きそばパンを食べた。

 ヒルダさんは一個、チッチは二個、ゲールは四個、ルイーザとドラゴは何個食べたか分からないくらい食べた。五個くらいまでは数えたが、まるで大食い選手権のように二人は競うように食べ進めた。


「この二人がごめんなさいね」

「いえいえ。いい食べっぷりでした。見ていて気持ちがよかったです」


 テレビでやっていた大食い選手権が好きでよく観ていた。私もあの頃は大食漢だったけど、そんな私でもまるで歯が立たないと思うような二人の食べっぷりを、微笑ましい光景だなと眺めていた。


 ガガド・コングは綺麗に解体され、毛皮、肉、骨、そして魔石を回収した。

 なんとガガド・コングの肉は食べられるのだとか。さすがにゴリラを食うのかと思わないではないが、美味いらしい。


「高ランクのモンスターの肉は大概美味いんだぜ」


 なるほど、この世界ではゴリラとか関係なく、高ランクかどうかで肉の美味しさが決まるのか。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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