第10話 契り
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第10話 契り
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「えーっと、これはどういう状況ですか?」
「ヒルダさんたちも飲みませんか?」
クエストの報告を終えたミノタウロスの巨斧の面々がやってきた。
「「「ドラゴさん、ちわっす!」」」
「「「ゲールさん、ちわっす!」」」
「おう……お前ら、何してんだ?」
「これ、めっちゃ美味いんですよ」
「エールにめっちゃ合うんですぜ、これ」
あたりめとさきいかが美味いと口々に言うむさい男たち。前世ならこんな人たちに囲まれたら怖くて失神していたかもしれない。
今は森のモンスターに囲まれるよりは余程マシくらいにしか思えない。本当に精神的に強くなったと思う。
「ハジメさん?」
「ヒルダさんたちもどうぞ食べてください」
「え、あ、はい。いただきます……美味しいです!」
ヒルダさんの笑顔を見られて俺は嬉しいっす。
「おい、ハジメ! これ美味いな!」
「そうでしょ、ルイーザさん。噛めば噛むほど味が出てくるんですよ」
ルイーザさんはさきいかを咥え、どこから持ってきたのかエールを煽る。漢らしいっす!
「あの酒はないのか?」
「ありますけど、飲みます?」
「もちろんだ!」
AMAZINで純米酒と大吟醸を購入し、皆に振舞う。一本や二本では絶対足りないので、一升瓶のものを二十本購入した。
「ルイーザさん、それはなんすか!?」
「これは美味い酒だ!」
むさい男たちが期待した目で見てくる。あんたたちの分もちゃんとあるよ。
「皆さんもどうぞ」
大量に酒瓶を出して、好きなように飲めと言い放つ。
「「「やっほーっ!」」」
「「「うっま!」」」
男たちに混ざってルイーザさんまで豪快に飲む。豪快に笑い合う。なんだか心が温まるな。
「ゴホンッ!」
「「「………」」」
「あー、ここは食べ物と酒の持ち込みは禁止なんだがな」
マスターが仁王立ちしている。考えたら、ここで私たちが騒いでいても、マスターはなんの儲けにもならないんだな。これは悪いことをした。
「マスター、すみません」
「細かいこと言うなよ、マスター」
「そうだぜ、今日ぐらいいいじゃないかよ、マスター!」
非難轟轟を受けて、マスターの眉がピクピクしている。
「すまん、マスター。これで勘弁してくれ」
ゲールが金貨をマスターに握らせたら、ピクピクが鳴りを潜めた。
「今回だけだからな」
「ああ、分かっているって」
ゲールがウィンクしてくる。キモいからやめろ。
「よし、話はついた! 飲むぞ!」
ドラゴが一升瓶を持ち上げ、ラッパ飲みする。そんな飲み方をしたら、急性アルコール中毒になるぞ。まったく……。
「ハジメさん、昨夜もお酒を飲ませていただいたのに、いいのですか?」
「構いませんよ。ヒルダさんもどうぞ」
ヒルダさんには特別な酒だ。これ、滅多に手に入らない酒で、まさかAMAZINにラインナップされているとは思いもしなかったものだ。
「あら、綺麗なピンク色ですね」
「美味しいですよ。飲んでください」
ピンク色をしているが、これも日本酒なんだとか。フルーティーな香りがする。
「美味しい。昨夜いただいたおさけも美味しいものばかりでしたが、これは特に美味しいです」
ヒルダさんもルイーザさんも喜んでくれて何よりだ。
「あんちゃん、美味い酒だった! なんか困ったことがあったら、いつでも言ってくれ! 美味い酒を飲ませてもらったから、できる限りのことはするぜ!」
「おう、俺たちにも言ってこいよ!」
三時間くらい飲み明かしたか、ゲールとドラゴはすでに潰れている。
チッチはいつのまにかいなくなっていた。宿に帰ったようだ。
ルイーザさんは後から加わった男たちと何やら歌を歌っている。
私はヒルダさんと差しつ差されつ飲んでいたから、まったく時間経過を感じなかった。
「ルイーザ、いくわよ」
「おう! お前ら、またな!」
「「「ルイーザの姉御、お疲れ様でした!」」」
私はヒルダさんとベロンベロンのルイーザさんと共に宿へと向かった。
どうも私はほろ酔いにはなるが、ベロンベロンに酔うことはないようだ。おそらく状態異常耐性の効果だろう。ほろ酔いにはなるから構わないか。
「あ……」
ヒルダさんがふらついた。私はすかさず彼女の腰に手をやって支えた。なんとも抱き心地のいい腰だ。
「ハジメさん……」
「ヒルダさん……」
目と目が合う。顔が徐々に近づいていく。いい雰囲気だ。もう少しで……。
「おーい、何してんだよ! 早くいくぞ!」
ルイーザさんが間に入ってきた。うん、こういうものだな。
だけど、今のはいいということだよな? ヒルダさんとキッスできたら、幸せな気持ちになれるだろう。
「ここだ! ハジメ、早く入るぞ!」
「ここが宿ですか」
ミノタウロスの巨斧の面々は、別々の宿を取っているらしい。連絡が必要な時は、ギルドに伝言を残すのだとか。私的な時間はかなり自由に過ごしているらしい。
「ああ、ここがあたしたちがよく泊まる宿さ」
「部屋をとりますね」
豪快に笑うルイーザさんと、カウンターで部屋を頼むヒルダさん。
「え、部屋が一つしか空いてないのですか?」
「はい。申しわけございません。丁度大きな商隊が入っておりまして」
「そうですか……他の宿にしましょうか」
「一部屋でいいじゃねぇか。な、ハジメ!」
「え……」
いくら冗談で結婚話をしていたとはいえ、いいのかな? 私としてはウェルカムだけど、二人はさすがにねぇ。
「おい、あんた。一部屋でいいぞ。チェックインだ!」
「は、はい。畏まりました」
ルイーザさんが返事を聞く前にチェックインしてしまった。その流れで部屋へ。い、いいのか……?
部屋は二階の角部屋で、十二畳ほどの広さがあった。ベッドはダブルベッドサイズが二つ、他に丸テーブルと椅子が四脚ある。
「よーっし、やるぞー!」
「っ!?」
いきなりルイーザさんが脱ぎだした。あまりの脱ぎっぷりに、声がでなかった。
「ちょっとルイーザ! あなた、何をしているのよ!?」
「何って、ハジメとの初夜だけど?」
え、私との初夜!?
「何を言ってるのよ!?」
「何を言っているのは、ヒルダのほうだろ? あたしたちはハジメの嫁になったんだから、夫婦の契りというヤツをやらないとダメだろ?」
「え……夫婦……」
「なんだ、ヒルダはハジメと夫婦になるのが嫌なのか?」
「そそそそそそんなことはっ!?」
「だったら、ヒルダも脱げ! そして、二人で一緒にハジメの嫁として初夜を満喫しようぜ!」
初夜を満喫とか、なかなかユニークな考えですね。私がそんなことを考えていると、全裸のルイーザさんが飛びかかってきた。そのままベッドに押し倒された私の顔の前で、ルイーザさんの大きな胸がゆれる。
「ハジメはあたしのこれが吸いたかったんだろ? じっと見ていたから分かったよ。さあ、たくさん吸ってあたしを妻にしておくれ」
「ほ、本当にいいのですか?」
「こんな格好で今さら嘘はつかないよ。それともこんな行き遅れじゃ嫌かい?」
「とんでもない! ルイーザさんもヒルダさんもとても魅力的な女性です!」
「だったらあたしは問題なしだ。これでもあたしは初めてだから、優しく頼むよ」
「は、初めて……」
ルイーザさんが私に口づけをした。そこからはめくるめく世界の始まりだった。
ヒルダさんは壁際で私たちのいたしているところを見ていたけど、途中で自分で慰め始めた。
「ヒルダこっちへおいで。あんたも可愛がってもらいな」
「………」
ルイーザさんに誘われ、ヒルダさんが幽鬼のように立ち上がった。頬は上気しており、その顔は恍惚としていた。なんと妖艶な表情なんだ!?
「してほしいんだろ。旦那様のあれを入れてほしいんだろ?」
「それは……」
「まずは旦那様のあれに奉仕しな。そしたら入れてもらえるよ」
ヒルダさんのが私のあれに手を伸ばす。掴まれると分かる彼女の手の柔らかさ。
「旦那様はこっちを」
視界がルイーザさんのお尻で遮られた。ああ、ここは天国だ。
ご愛読ありがとうございます。
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