第9章:『魔導書解放とヴァイオレット様の秘奥義「至福の三段抽出」』
【1】解き放たれし“真なる魔導書”
「これは……ラクリモーサ・コード……!」
ヴァイオレットが封印扉の先で見つけたのは、一冊の黒い魔導書。
その表紙には、古代文字でこう書かれていた。
『記憶を喰らいし者、想いを記せし者、此処に眠る』
アリアは魔導文字を読みながら呟く。
「……この魔導書、触れた者の“記憶”を代償に、強力な魔術を与えるって……」
レオンは震える手で魔導書を見つめる。
「つまり……使えば最強になれる代わりに、大切な思い出を失うってことか……」
「おぉぉぉお怖い怖い怖い怖いっ!! そんなのダメですわ! 紅茶の味も忘れてしまったら、わたくし存在の意味が……!」
「紅茶基準でアイデンティティ構築してるのヴァイオレット様だけだよ!!」
【2】王都、ざわつく
その夜――王宮に突如現れた黒衣の集団。
「“クレパスの影”の者たち!? ここで襲撃してくるなんて……!」
「魔導書を渡せ」
黒衣の男がヴァイオレットに手を伸ばす。
が。
\どごぉぉん!!!!!/
「ふふふ♡ 新技、お披露目ですわ♡」
「何やったの!?」
【3】ヴァイオレット様の新技!
《秘奥義:至福の三段抽出式・記憶紅茶爆泡撃》
「まずは“第一抽出”!
香りとともに敵の嗅覚を撹乱しますわ♡」
\ぷしゅぅぅぅ!/
紅茶の香りが充満し、敵がうっとりし始める。
「“第二抽出”で濃厚な記憶再生エネルギーを敵の脳に直接投影♡」
「……あれ? 昔飼ってた猫の夢見た……にゃーん……」
「そして“第三抽出”は――
紅茶濃縮爆発スチームエンドですわあああ!!♡」
\どっごぉぉぉぉぉん!!!!/
会場はススと香りに包まれ、敵は全滅(物理的にも精神的にも)。
アリア「なんで紅茶なのにこんな破壊力あるのよ!!」
レオン「もはや液体兵器だよこれ!!」
ルキウス王子「君、紅茶で軍事的価値を生み出すのやめてくれ」
【4】リリィの揺れる心
混乱の中、影の組織に紛れて潜入していたリリィが、ふと立ち止まった。
(……ヴァイオレットって、ほんと、何なんだろう)
紅茶で人を吹き飛ばしながら、笑顔でみんなを守るあの姿。
(おかしい。全部バカみたいなのに……見てると泣きそうになる)
その瞬間、リリィの耳に聞こえたのはヴァイオレットの声だった。
「リリィ! そこにいるのは分かってますの!
さぁ、あなたにも紅茶を淹れて差し上げますわ♡」
リリィ「えっ、私、敵だって知ってるでしょ……?」
「関係ありませんわ♡ どんな闇に染まろうと、紅茶はみんなに平等に癒しを与えるのです!」
「その理論どうかしてる!! ……でもちょっと、嬉しい……」
リリィの胸に、かすかな光がともる――。
【5】魔導書を手にしたのは…
混乱の末、魔導書はヴァイオレットの手元に戻る。
だが、その背後――
「まさか、ラクリモーサ・コードを制御できるのは、彼女だったとはな……」
謎の仮面の魔導士が、遠くの屋根の上でつぶやいた。
「だが、次は“王家の魔導書”……真の目的は、そちらだ」
闇の計画は、まだ始まったばかりだった。