第8章:『封印と紅茶と王子の迷宮爆発デート』
【1】地下遺跡、侵入計画ですわ♡
「王宮の地下にあるという“真なる魔導書”の封印区域……そこに入るためには王族の血が必要、ですって?」
ヴァイオレット様、いつになく真面目な顔。
「ええ。記録によれば、ラクリモーサ・コードは“記憶を封じる魔導書”の中核として、王家によって封印されたとされます」
と、説明するのはアリア。が、その隣でレオンはおののく。
「でもさ、そこって普通、魔導研究者でも許可がいる場所で……」
「大丈夫ですわ♡ 王子が連れてってくださるって言ってましたの♡」
「待って、王族の口利きがすでにあるの!? なんでそんな急展開!?」
レオンは半泣きになりながら懇願する。
「お願いだから今回は爆発だけはやめて……!」
「レオン、むしろ“今回は爆発しない”とか言い始めたらそっちが怖いのよ」
【2】まさかの王子デート(地下迷宮付き)
王子・ルキウス殿下の案内で、三人は王宮地下へと向かう。
だが、当然、本来は立入禁止エリアである。
「我が父には黙っていてくれ。僕はあくまで……君の研究に興味があるだけだ」
「まぁ……♡
それってもしかして、“紅茶が淹れられるたびに思い出してしまうほどの情熱”ですの♡?」
「……君の口から出ると、情熱がだいぶ爆薬寄りになるんだが」
地下遺跡は、封印の魔導陣が張り巡らされた古の迷宮。
しかも、記録によれば内部には魔力で動く“自動防衛装置”が存在する。
「えーっと、魔力感知式トラップが次の角に……あ、あった」
「ならばわたくしの紅茶型魔導解除装置で♡」
ヴァイオレットは得意げにポットを掲げた。
\しゅぼっ!/ → \ごごごごご……どごぉぉん!/
「爆発してるじゃん!!!!」
「でも解除されましたわ♡ 見てください、このススだらけの廊下♡」
「ススがあることを誇らしげに言う人初めて見た……!」
【3】魔導書の扉と“選ばれた者”
ついにたどり着いた封印の扉。
そこには王家の紋章と、円環式の封印陣が刻まれていた。
「ここが、“真なる魔導書”の保管庫……。記録通りなら、王族の血でのみ開かれるはず」
王子が手をかざすと、封印がかすかに反応する――が、扉はびくともしない。
「反応が弱い……僕の魔力では不完全なのか?」
アリアがふと呟く。
「でもヴァイオレット様の魔力、反応してませんか……? ほら、ポットが光ってる」
「わたくし、やはり選ばれしティータイムの乙女だったのですわ♡」
「違う、乙女云々じゃない! なんでそんなに反応してるの!? もしかしてヴァイオレット様、王家と関係あるとか?」
レオンが困惑気味に続ける。
「まさかとは思うけど、ヴァイオレット様って、もしかして……王族の遠縁とか?」
「はっ! そういえば幼いころ、“おままごとの王子役”に選ばれてましたわ♡」
「それは関係ない!!」
だが、ヴァイオレットが魔導式ポットを封印扉に差し出した瞬間――
扉が、ゆっくりと、開いた。
【4】そして、影は動き出す
その頃、地上ではリリィが“クレパスの影”の一員と接触していた。
「ヴァイオレットが、封印を開いた……?」
「予想外だったな。だが、これで全ての準備が整う」
「“真なる魔導書”が開かれたら、あの子は狙われる。ねぇ、本当にあの子を……」
「お前は彼女に情が移ったのか?」
「……そうじゃない。ただ、アイツが、何も知らずに進んでいるのが……なんか、腹立つのよ」
黒衣の男はふっと笑う。
「次の一手は王都で打つ。あの“令嬢”ごと、魔導書を奪え」
リリィは、静かに視線を落とした。