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スキル

さて、技能章って数が多いんですよね。。。どう描くか難しいです(笑)

「ふぁっ!?」

「なんだって!?」

「え?!どーゆーこと!?」

それぞれが、それぞれの表現で驚きと疑問を投げかける。


それはそうだ。普通に考えたら突拍子もない中2病的な結論。

康介はムキにならずに冷静に話を続ける。

「まず第一に、スマホを持っているスカウトは出してみてくれ。おそらく全て圏外のはずだ」

康介はヘッドライトをつける際に自分のスマホで確認したことを伝えた。


「ほんとだ・・・圏外だ」「ここっていつも2本から3本立ってたよな」「GPS機能も使えないわよ?」


「第二に、みんな聞いてくれ!これが大事なんだが空を見てみてくれ。雲がかかっているあたり、月の光がこぼれてみえるだろう?」


皆が視線をスマホから空に移していく。

「おかしくないか?今夜は月はほとんど出ないはずなんだ。そして星座。天文章とったスカウトいたよな?誰だっけ」


百花が答えた。

「うちの班のエリーよ。エリー、大丈夫?少しは落ち着いた?」

「はい、大丈夫です。まだちょっと怖いですけど、多分大丈夫」


荒津 エリー(あらつえりー)中学一年の女子で、2級スカウトだ。

技能章は、救急章・エネルギー章・通訳章・天文章を持っている。

父親が米国人のハーフで、将来の夢は宇宙飛行士。読図章まであと少しの頑張り屋さんだった。


「オーケー、荒津さん。ちょっと聞きたい。この星空、日本から見える星空だろうか?」

「・・・ありえません!こんな配置、見たことない!南半球だってこんな配置のはずじゃない・・・」


「ありがとう。そしてもう一つ。ちょうど雲が晴れそうだから、みんな月のあたりを見てみて」


改めて皆が空を見上げ、同じ方向を凝視する。

「っっ!!??」

そして全員が息をのんだ・・・


「・・・月が・・・大小ふたつもあるんだ。」


-----------------------------------



しばらく皆の間に沈黙が流れた・・・

全員、空を見上げたままで。


「ふぅ・・・」

蒼真が大きくため息をつくと、皆の視線がそちらを向いた。

一様に皆、動揺しているのがわかる。


「唐突すぎて受け止めきれんなぁ・・・とはいえ、集団幻覚とかでもないだろうし」

蒼真はちょっと考えてからおもむろにこう発言した。


「よし!点呼をとるぞー」

「「は?」」 目が点になるスカウト達。


「うん♪点呼」にっこり笑う蒼真。

そして有無を言わさない勢いで、続けて発言していく。


「まずはイーグル班だ。」

「班長 鷲村 康介(わしむらこうすけ)!」「はっ!は、はい!」

「次長 鴇谷 聡(ときやさとし)!」「はーい」

堀内 飛鳥(ほりうちあすか)!」「はいっ!」

小鳥遊 健(たかなしけん)!」「・・・はい」

鳩谷 彰人(はとやあきと)!」「はぃ・・・」

丸山 美鳥(まるやまみどり)!」「ハイッ!」


「よーし、声出していけよ♪ つぎオオカミ班」

「班長 犬飼 真一(いぬかいしんいち)!」「はいっ」

「次長 狐島 悠平(こじまゆうへい)!」「うぃーっす」

戌亥 智哉(いぬいともや)!」「はい」

猪股 沙耶(いのまたさや)!」「はーい!」

狩谷 奈月(かりやなつき)!」「はいっ」

斑尾 忠司(まだらおただし)!」「ハイ」


「オーケー、揃ってんな?んじゃコブラ班いくぞー」

「班長 神田 百花(かんだももか)!」「はいっ!」

「次長 八俣 さくら(やまたさくら)!」「・・・はい」

蛇尾川 浩太(さびがわこうた)!」「はいはーい!」

荒津 エリー(あらつえりー)!」「Yeah・・・じゃない、はい!」

朽縄 翔(くちなわしょう)!」「はい」

龍崎 響(たつざきひびき)!」「はい」


「スカウト18名、上班1名、隊付1名、総員20名異常なーし!」

ニカッと皆に笑いかける蒼真の笑顔に、緊張がほぐれるスカウト達も多くいた。


隣にいた希だけが気づいていた。

蒼真の手がわずかに震えていたことを。


「ちょっと、上班?あたしの名前呼ばれてないんだけどー?」

「え゛っ?隊付は別枠だと思って、その・・・」

「つべこべいわずに点呼!」

「は、はい~・・・隊付 吉岡 希!」「はーい♪きゃぴっ♪」

希はことさらにふざけてポーズを作って返事をした。


「ぷっ・・・希さん・・・ちょ・・・似合わない」

たまらず蒼真が噴き出すと、希がかぶっていた帽子で蒼真の頭をはたく。

「でた!隊付・上班のドツキ漫才(笑)」

これで一気に場がなごみ始めた。


「(希さん、ありがとう・・・) よーし、みんな聞いてくれ!」

蒼真が改めて皆に語り掛けると、全員姿勢を正して注目する。


「状況は未だ不明のままだ。隊長たちは不在。うかつに動き回るのも良くないと思われる。先ほどの別世界にいるかもしれないという可能性も踏まえながら、今夜は全員ここで一夜を明かす。幸い、本部テントと隊装備の倉庫テントは無事だ。気温も問題なさそうだし、夜明けを待ってから状況把握をしていこうと思う。」


「上班、質問です」

康介が手を挙げた。

「うん、どうした?」

「各班のサイトに戻って荷物の確認をしたいのですが・・・」


「そうだな、そう思うよな。だが朝まで待ってほしい。夜にむやみに動き回るのは避けたい。仮に違う世界に来てしまったのだとしたら、この広場から離れている各班のサイトの土地まで転移したかどうかも怪しい。確認したいのはやまやまだが、少しでも危険は避けたい。幸い、キャンプファイヤー用に薪もそろっている。ここで火を囲んで朝まで待とう。」


「了解です。」

「天気も問題はなさそうだし、各班ごとにブルーシートを敷いて休もう。

で、各班2名ずつ交代で見張りだな。」


(せめて、周りの状況・・・地形だけでもいい。置かれた状況が客観的に分かれば判断のしようがあるんだが・・・)


蒼真は考えを巡らせる。

(おちつけよ・・・上班は俺なんだ。俺がみんなを守らなきゃいけないんだ・・・俺が弱気になったらダメだ・・・)

無意識のうちに、右袖についている技能章をさすったその瞬間。


全員の視界が明るく、そして徐々にホワイトアウトしていく・・・

その光の中にかすかな人影のようなものを見たと思った直後、皆の意識の中に響くような声が聞こえてきた。


-汝ら、選ばれしスカウトたちよ。この地において、汝らの技能は力となる。心せよ・・・その力をもって、この世界の調和を保つべし-



光は急速に消えていき、もとの静寂になった・・・

(なんだ?いまのは・・・俺にだけ見えたのか?皆も見たのか?)

ふと我に返った蒼真がそう思ったとき、康介が声を上げた。


「い・・・今の声、みんな聞いたか?」

「聞こえた・・・」「だれ?あれ?」「天の声とかいうやつ?」「何それ怖い」

どうやら全員が体験したことのようだった。

これはきっと必然的な何かがあるのかもしれない・・・

蒼真がそう考えたとき、康介はあることに気が付いた。


「蒼真さん・・・ちょ・・・それ・・・」

絞り出すような声で、蒼真を指さした。

康介は、驚き、恐怖、興味、わくわく感がかき混ぜられたような感覚にとらわれていた。

(これ、いわゆる異世界物のテンプレ的展開じゃね?)

現実離れした状況に思考が追いついておらず、いわゆる正常性バイアスにとらわれていたのかもしれない。

そんなことを頭の片隅に思いながら、続いて言葉を絞り出す。


「蒼真さんの・・・技能章が・・・・光ってる・・・」


全員が一斉に蒼真の右袖を凝視した。

たしかに縫い付けていた技能章バッジがそれぞれ独特な淡い光を放っていた。


蒼真は、おずおずと自分の右袖に手を伸ばすと、それに呼応するかのように他のスカウト達の技能章が次々に光を放ち始めた。


「お・・・俺のも光った・・・」「私もよ・・・」「うわ・・・すげぇ・・・」


よく見ると、スカウト達の班別章、蒼真の上級班長章、希の隊付章も光っている。

康介は、その状況を見ながら蒼真に相談した。


「蒼真さん、さっきの謎の声といい、光る技能章といい、なにかあるはずです。」

「うん・・・俺も似たようなことを考えていた。しかし、どういうことがあるのか、どうすればいいのかも良くわからん・・・」


「意識を集中してみるとか?」

ここでようやく状況に追い付いてきた希が発言してきた。


「意識を集中・・・か、ちょっとやってみます。」

康介はそういうと、自分が持っている技能章に意識を集中し始めた。

持っている章は、読図章・ハイキング章・スカウトソング章・野営章・野外炊事章・リーダーシップ章。

そのうち、野営と野外炊事に集中してみると、脳裏に何かイメージが浮かんでくる。

薪・・・着火・・・火・・・炎・・・


そのイメージはだんだん具体化していき、なんとなくかざした康介の手のひらの上に、火が出現したのだった。


群像劇にしたいので、チート級の強さはあんまり出てこないかも(笑)

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