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【書籍1巻発売中】モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが〜ゲーム本編無視で、好き勝手楽しみます〜(旧サブタイトル:ゲーム本編とか知らないし、好き勝手やります)  作者: キー太郎
第五章 春休みってすぐ終わる

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第191話 雰囲気で棺並べたり、上に遺跡作ったりとかしたら駄目。(自戒)

「では妾の調査結果を共有してやろう」


 尊大にふんぞり返ったエリーが話し始めたのは、扉に施された複雑な術式の事だ。


「まず、この扉は時空を超える、魔道具だと思ってくれて構わん」

「どこでもタイムマシンドアかよ」


 苦笑いのランディに「どこでも?」とエリーが眉を寄せ、キャサリンが「話の腰を折るんじゃないわよ」と盛大に顔をしかめた。


「エレオノーラ、この馬鹿は無視しましょ」


 キャサリンの言葉にランディが「おい、リーダーは俺だぞ」と口を尖らせるが、ルークが「どうどう」とランディを羽交い締めにして抑え込む。


「まあ良い。続けるぞ――」


 ため息をついたエリーが続けるのは、正確には扉が超えられる時空は、限定的だと言う。


 例えばこの先に続くダンジョン。

 例えば銀の球体を入れた場合のダンジョン。


 そういった具合に、限定的な場所にしか飛ばす事は出来ないらしい。そんな限定的な魔道具に見える扉だが、本来の姿は壁画と連動した高度な封印術でもあるという。


「時空を超えて封印する魔法……いや、壁画を利用した、封印魔法陣の媒体と言えるかもしれんの」


「魔法陣? て、あのコスパの悪い?」


 ランディが思い出すのは、以前エリーが見つけたあの紙だ。【真理の巡礼者(ピルグリム)】の置き土産で、エリーをしてコスパの悪さで廃れた技術だと言っていた。


「でも陣じゃなくね?」


 首を傾げるランディに「分かりやすく言えばじゃ」とエリーがため息をもらした。


「陣ではないが、壁画を魔術的媒体で描き、それを詠唱代わりに扉の先の時空へ封印する……そんな魔法じゃな」


 エリーの解説だが、それに首を傾げたのはセシリアだ。


「壁画を詠唱に……ですか?」


「これも分かりやすく言えば、じゃな」


 セシリアの疑問にエリーが――ランディでも――分かりやすく説明するのは、魔法とイメージの関係だ。流石にこの辺りは、今まで何度となく言われてきたのでランディでも分かる。


「魔法はイメージ……つまり、壁画の内容がイメージそのものって事か?」


「もっと言えば、対象と解除法を限定する事で、よりイメージを強固に……封印を強固にしてある、と言えばよいかの」


 エリーの言葉に全員が壁画を振り返った。この壁画と暗号自体が詠唱で、更に対象を限定したものだと言うなら、封印されているのは間違いなく〝古き王〟と言うことになる。


「封印してんのに、わざわざそれを解く方法を記す……つまりは、この記された方法が詠唱で、封印を強固な物にしてるって理解でいいのか?」


 振り向いたランディに「左様」とエリーが頷いた。


「なるほど……」


 呟いたランディが、解読文を片手にもう一度壁画を振り返った。


『古き王 失われし時の軸に 彼の者を封印す

 金と銀 黒き炎に染まりし時 輝く座標は深淵に沈む

 資格もつ者 昏き月の影に立ち 天の光を集めん

 さすれば闇の扉は開かれる』


「古き王を、失われた時の軸に封印してある」


 呟くランディに、隣へ並んだエリーが頷いた。


「金と銀は……あの玉で、黒い炎が分からんが――」


「輝く座標は、こちらの世界の事じゃろうな」


 エリーの言葉にランディは続く『深淵に沈む』の文字に眉を寄せた。まるで世界が終わるかのような一文だ。


「資格持つ者は、あの玉の持ち主で……」

「昏き月は新月じゃろう」


 エリーが見つめるのは、大きな円形の壁画だ。直近の新月までは時間があるが、新月など毎月訪れる特に珍しい現象ではない。だが、ランディが目をつけたのは、円形の外から二番目の円だ。


「これって、多分季節を表してるよな」


 四分割され、それぞれ三つずつに区分けされたそれは間違いなく四季と十二月だ。小さい区分けには、それぞれこの世界でメジャーな月を表す季節の花があしらわれている。


「俺の感覚だと、スタートは春だと思うんだが……」

「一番上がどう見ても初夏を表しておるの」


 エリーの言う通り、僅かにズレた四分割のせいで、一番上が初夏と呼べる時期だ。この世界の月で言えば六月頃である。


「月齢の新月も一番真上、そして六月も上ってことは六月の新月ってことか?」


「いや。古い暦と今の暦ではズレがあるからの……仮に千年前とすると、今の七から八月くらいか」


 エリーの解説にルキウスが「ですな」と頷いた。丁度ランディがリズとエリーと出会った頃とも言える。


「じゃあ仮に七月として……」


 三人の出会いを一旦脇へ置いて、ランディがまた壁画と解読文とを見比べた。


「天の光ってことは、その時の新月の光を集めるってことなんだろうが……」


 眉を寄せて腕を組むランディの後ろで、「あ、あの……」とアナベルが手を挙げた。


「い、陰月の鏡じゃないでしょうか」


「陰月の鏡……って、あれか! あの旧校舎にあるってやつ」


 思わず大声を上げたランディに、アナベルがビクリと肩を震わせながら頷いた。七不思議の最後の謎、【新月の塔】を顕にすると言われる謎アイテム。


「確か月の影を映すってやつだったな」

「は、はい。でも新月の時には、その裏側の満月の光を映し出す鏡です」


 アナベルの解説に隣でルキウスが頷いた。


「なるほど……昏き月の影と天の光。月が太陽を反射してる事を考えればピッタリだが――」


 おもむろに天井を見上げたランディにならい、全員が同じ様に天井を見上げた。低くはないが、光のささない天井に、「どうやって集めるか……」とランディが途中で口を噤んで勢いよく階段を振り返った。


「急にどうしたんですの?」


 あまりの勢いに、セシリアが驚き顔をしかめるが、ランディは「上だ!」とだけ叫ぶと一人で階段へと駆け出した。慌てた皆がその後を追いかけ、ランディ同様階段を駆け上がり……女神像の足元へ。


「一体どうしたんですの?」

「像だ」


 ランディが巨大な女神像を見上げた。今はまだ昼前で、かつ冬ということもあり、陽光のさし具合が緩いが、これが正午になればまた変わる。


 像を見上げていたランディが、飛び上がった。十五メートルはあろうかという像の、顔面へ張り付いたランディを、下から全員が見上げている。


(俺の勘が正しければ……)


 ランディが最も光が当たるだろう顔面付近を調べることしばらく……


「エリー、これ――」


 女神像の瞳を擦るランディが、下にいるエリーを大声で呼んだ。見上げる高さがあるが、そこはエリーだ。フワフワと空中を漂うように浮かび上がり、一気にランディの元へとたどり着いた。


「お前……空まで飛べんのかよ」

「お主が呼んだからのぅ。まあ、初めてじゃが、意外に上手くいくものじゃな」


 カラカラと笑うエリーの規格外に、ランディは苦笑いを返しながらも、女神像の瞳だけ、別の鉱石で出来てる事を告げた。


「ふむ……知らぬ石じゃな」


 一通り調べたエリーだが、流石のエリーを持っても分からない。仕方がないので目の一部をクラフトの分解で削り取り、それをリズの持つアイテムボックスへと収納してみる事に。


「どうだ――?」


 女神像に掴まったままのランディに、エリーが「ビンゴじゃ」とニヤリと笑った。


「陰月の石……らしいぞ」


 それだけ分かれば問題はない。瞳を元に戻し――魔術の媒体を必要以上に弄ると、術式が壊れる恐れがあるため――ランディとエリーはそれぞれ下へと戻った。




「陰月の石ですかな……」


 考え込んだルキウスが語るのは、陰月の鏡と石の違いだ。鏡はその名の通り、月の影を映し出す。だが新月の時は月が出ているのは昼日中だ。それでも鏡の持つ魔力が、夜中に真反対にある月を映し出すのだという。


 それに対して石は、月の影を取り込みエネルギーにするだけだという。しかも取り込んだエネルギーも、一晩経てば消えるので使い道があまりないのだとか。


「つまり、取り込んだエネルギーを放出するキッカケが……」

「昏き月の影に立ち、扉へ二つの玉を嵌め込む、というわけじゃな」


 最も月の影のエネルギーが溜まった新月の夜に、金と銀の玉を扉に嵌める。それが封印を解く条件のようだ。とは言え、封印されているのがエリーの身体ではなく、古の王だ。誰も封印など解く事はない。


 だがここに来てランディの中の違和感が大きくなっている。


「封印の解き方は分かったが……もう一個デカい謎があるな」


 ランディの言葉に、全員が首を傾げた。封印の遺跡として、特におかしな事はないのでは、というセシリアにランディは首を振って口を開いた。


「チグハグだろ。隠したと思わせておいて、実は見つけてもらう事が前提。実際この女神像の位置が正しいんだ」


 ランディの言葉に首を傾げるのはまたもセシリアだ。


「見つけてもらう……は、封印を解くためではありませんこと? そもそも封印を解くなら、女神像の位置がここでおかしいこともないでしょう。下に降りるために女神像を動かすのですから」


 セシリアの言葉にまた皆が頷く。そしてランディは腕を組んで黙り込んだ。確かにセシリアの言う事は一理あるからだ。だが引っ掛かりを覚えているのも事実だ。


 開きかけた口を閉じ、そしてまた何かを語ろうと口を開きかけ……そんな事を繰り返すランディがようやく口を開いた。


「セシリア嬢……もう少し付き合ってくれ」


 一瞬キョトンとしたものの、「いいですわよ」とセシリアが頷く。ランディの言葉、その真意に即座に気付く辺り、流石の才女と言えるかもしれない。


 ランディは己の中だけで消化しきれない謎を、セシリアとの討論で昇華していこうという魂胆だ。自問自答では得られない脳みその先を、セシリアに求めた形とも言える。


 リズでもエリーでも、ルキウスでもない。この中では最も勢いがあり、物怖じしない上にいい意味で脊髄反射で言葉を紡ぐ人間。そして何より常識人枠だ。


 セシリアだからこそランディの脳内に近い、それでいて全く違う意見の交換が可能なのだ。


 そんなセシリアは準備万端と言った具合に、堂々と胸を張ってふんぞり返っている。まるで言い負かしてやろう、という雰囲気は今のランディにとっては最高の相手だ。


「なら、何で隠した? 見つけてもらう事が前提なら、隠す必要はないぞ」

「私が分かるわけありませんわ」


 速攻で頬を膨らませたセシリアが「墓荒らし対策ではありませんこと」と腕を組んで顔を背けた。


「墓荒らし……封印だろ、ここは?」

「でもアナベル様が、殉葬を模した副葬品があったと」


 セシリアの言葉に「そうだ……」とランディが違和感の一つにたどり着いた。


「何で封印なのに、兵馬俑が――」

「へいば?」

「殉葬を模した副葬品の事よ」


 キャサリンの翻訳が入り、セシリアが更に攻勢を強める。


「それだけ惜しまれていたという事ではありませんか?」

「あの男が、か?」


 眉を寄せるランディに、「もしかしたら、晩年は意外に」とセシリアも自信なさげに視線を逸らした。


「エリーに執着して、あんな事するやつだぞ。大体この封印を作ったのだって、エリーの……エリー……の?」


 ――封印を強固に

 ――殉葬を模した副葬品ですね。

 ――墓荒らし対策ではありませんこと?


 違和感が繋がり始めたランディが、「お? おおお?」と盛大に首を傾げた。


 首が折れそうなランディに、「アンタ気持ち悪いわよ」とキャサリンが顔をしかめ、セシリアは「私のせいでしょうか?」とルークの裾を掴んでいる。


「大丈夫です。あいつが馬鹿なのは昔から――」

「エリー! この封印はあのシャルって人が作ったと思って良いんだよな」


 ルークの声を遮るランディに、エリーが「十中八九な」と頷いた。隣でルキウスが口伝でもそう聞いていると補完したことで、完全にこの遺跡はエリーの親友が作った事が確定したのだが……


「エリー、扉の術式が絡まってるって言ってたが……」


「そうじゃな。全てが分かった訳ではないが、封印術式、転位術式、あとは壊れた隠蔽術式もあったの」


「隠蔽……?」


 首を傾げたランディに、扉自体に隠蔽術式が施されていた事をエリーが教える。


(見つけて欲しいのに隠したい。いやもしかして……)


 ランディの中で、違和感が繋がり始めた。とは言え、最後のピースがない。状況証拠的に、ランディの考えで間違いないだろうが、これがない事には証明のしようがない。


「隠蔽か。なんか……隠されたものを見つけ出す。みたいなアイテムがありゃいいんだが……」


「陰月の鏡を使えばどうじゃ?」


 首を傾げるルキウスが言うのは、陰月の鏡は〝隠された月の影〟を映し出す鏡と言われているが、正確には月の魔力でそれを可能にしているだけだという。つまり魔力を放つ別の物を映せば、それの裏側を垣間見る事が出来るという。


「それだ!」

「小僧、疾く持って参れ!」


 二人の勢いに思わず頷いたルキウスに、キャサリンが慌てて「あ、あの二人は馬鹿なんですぅ」とフォローを入れている。ただ慌てすぎて口調がアレだが、それでもキャサリンのフォローに微笑んだルキウスが「しばし待たれよ」と転移で姿を消した。


「……やっべぇ。思わず学園長を顎でこき使っちまった」

「リズが滅茶苦茶怒っておるの」


 冷や汗をかく二人が、戻ってきたルキウスに平謝りしたのはまた別の話。

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