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エンジェルメディア  作者: lou
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あたしと親友

louです!

第2話の投稿が思ったより遅くなってしまいました。

今回はルカの親友のお話です。

第1話とは違う性格を見せているキャラもいるのでよろしくお願いします!

『ふ…ふふ。ふふふ。』


ベッドの中。深夜二時を回ったところだ。眠たくて眠たくて蚊のとぶ音でさえイライラするくらいには気がたっている。

そんな気が立つ中広く他の人の声なんてそうそう聞こえないはずの部屋の中に悪魔のような笑い声が響いてくる。


『出来たぁあああああ!!!!!』


そう男の声で耳をつんざいてくる。


『うるせぇーーーー!!!!寝かせろ!間違えた。寝させろ!!!』


間髪入れずにルカの部屋の目の前の部屋の向かいの部屋の扉が開き声の方向へそれを上回るほどの声で言葉を張り上げる。最初の声の主はやっとの思いでミルクパズルを完成させた父リオの声である。


〈そら三日三晩うなりながら続けたものが完成しそうなら叫びたくもなるし笑いたくもなるだろうが深夜二時にやるのはやめて欲しい。

けれども弟よ。寝ぼけて言葉を間違えたな。〉


こんな言葉が彼女の脳内を駆け巡る。毎日嫌悪し合う仲ではあるがこんな深夜にはそんな気力なんてないしなんならこれくらいのツッコミを心の中でして自分で笑い転げるくらいは出来るくらいにテンションがおかしくなっている。

ドスドスと怒りの足音を立てて弟であるリカは父親に文句を言いに行ったようだしルカはゆっくり眠る為に布団を被り直して寝やすい体制に切り替える。

すぅっと意識が暗闇に馴染むように消えてはルカは穏やかな寝息を立てる。


鳥が鳴く。


『起きろー!おじょー』


扉がノックもなく開き入ってきた乱暴な,茶髪に金のインナーカラーを入れたポニーテールの女はベットの布団を勢いよくひっぺがす。毎日暑い時期だろうが寒い時期だろうが布団が入口から少しばかり離れた場所にあるベットから入口まで吹っ飛ぶ程の威力でぶん投げる。スレンダーな体からは想像もつかない飛んだ怪力娘だ。


『ありゃ。居ない。』


ぶん投げた布団の下に予想していた人物は居らずもぬけの殻である。もう既に布団はひんやりと人がいた痕跡は無くなっており布団はただ理不尽に飛ばされただけのよう。


『何してるの。ナギ。』


ナギ。そう呼ばれた怪力娘は声のした方に顔を向ける。

声をかけるのはルカ。どうも湯上りなようでしっとりとした髪にタオルをかけて布団を避けて部屋に入ってくる。


『お嬢。起きてるなんて珍しい』


『起きてるよ。昨日からずっとこれが私を離してくれなくてね。』


そういい手に取るのは1冊の古びた本。ルカの母ルリの母親,つまりルカにとっては祖母にあたる人が持っていたもので出典元は不明。所々雑な部分が目立つ本であるために個人で書いたものだろう。内容はほとほと才能について。


『またぁ?』


呆れたようにナギはため息をつき広い入れ物を"生成する"。

ナギはアインツィヒが拾った元孤児であり才能が認められやすい物質生成に特化した子である。ルカより幾分か年上で母より何個も下。主人である此方に関わりにくいのではないかと思ったがこの数回言葉を交わすだけでわかるだろう。

言葉で敬意を払う気がない。


『別にいいでしょ。』


だがそれにも慣れたものでルカは何事もないかの如く接する。学園に友などいないルカにとって友達のように接してくれるナギは気が楽で接していて楽しいのだろう。7つ辺りの頃はナギについて回っていたほどだ。


『はいはい。顔洗って〜。私がリリに怒られるから。リリ怖いんだよねぇ』


リリ。其れは学園で見るリリカンナ・ヴァルシュだ。彼女は確か…凄く荒んだ家の出で両親に救われたはいいが厄介払いのように御礼だと送り付けられたんじゃなかったか。


『リリ…ねぇ。』


彼女のことは学園にいる時は嫌いだが家に居る時は主張無く平等に接してくれるので好き。といった随分変な認識だ。


『やっぱリリのこと嫌い?』


動揺。確かに学園では嫌いだ。学園では。

でもその嫌いだって自分が言い始めた才能なんてという言葉を撤回出来ずにいる頑固さから来るもの。嫌いでは無い。

嫌いになるほど人に興味が無い。


『…学園では,ね。』


ひんやりとしたナギの魔力で注がれた水で顔を洗いひんやりとする顔をタオルで抑えたあと一泊置いて顔を上げてはそのままを言葉にする。


『ツンデレ?』


『うっさい。』


ニヨーっとルカの言葉を聞いてはナギが顔をのぞき込みながらそんなことを聞く。ナギは随分と文学と言語に秀でておりそれこそ天才と言えるまでではないとしても色んな国から色んな言葉を飲み込んでくる。旅が好きで話が好きで,言葉を出すのに考える時間も少ない。

天才じゃないけど,他愛のない凡人からすれば羨ましい力だ。

そんな力で変な言葉まで覚えてきてこちらにペラペラと本とのお楽しみの時間に話を挟んでくるから誰も彼もがナギの言葉に首を傾げようともルカは分かってしまう。本人曰くとても悔しいという話だ。


『姉ちゃん。月祈とミナミががき…た…』


布団が弊害となり閉まらないドアをノックせず布団を器用に避けながらリカは入ってくる。

姉が湯上がりでなにやら従者の前で本を今から読みますと言いたげに抱えているしなんなら開いてすらいるし従者に関してはおそらく作り出したであろう入れ物に縋り付くように悶えているし。姉の支度は終わってないし。


『何してんだよ…また徹夜か?不健康児。』


『うるさい。』


外にいるよりよく口が回るリカはルカのことをきちんと姉と呼び,他愛の無い会話を交えてくる。

ここでひとつ問題が浮かんでこよう。

”何故彼は姉のことを外ではお前と呼び続けているのか”

と。それこそはリカの”才能”になる。包み隠せば包み隠すほど内側に力を溜め込み真実をひけらかした時に力を際限なく解放する。

これが摩訶不思議なもので騙している人数が多ければいいのだが家族には効かないのだ。外で包み隠している理由が何となく分かるだろう。


『あんた学校は。』


『日付感覚狂ったか?今日は休みだろ?』


徹夜明けだからかあまり頭が回っていないようでリカにとって当たり前のことを聞かれたのか呆れ返ったようにリカはルカの質問に答える。

凄く外では仲の悪い姉弟だが自宅ではこんなにも仲のいい姉弟。才能とはこんなにも人を引き裂くものなのだ。


『そうだっけ…月祈たちが来てるのは』


『お嬢剣術をミナミ達とやるって昨日言ってじゃんか』


ルカはああ…。と納得したように言葉を漏らしては本を閉じ布団が投げ出され冷たくなったシーツを被るベッドの上へ置く。自分が忘れていた事だし早急に支度をしなければという思考に自然と行き着いたらしい。徐ろに着替え始める。


『おい!せめて俺がでてってから着替えてくれよ姉ちゃん!』


扉が完全に開いたままの部屋で着替えるほどに人の目を気にせず着替え始める姉へリカは声を少しばかり荒らげる。その声には日常茶飯事だとでも言いたげな呆れさえ混じっている。


『あ。ごめん。てか,あんた今日は?』


『ん〜実戦。”失敗作”を相手にするって。』


実戦。それは言葉の通り本物を相手にするということ。魔物,魔獣,”失敗作”。学園では戦闘技術を教えるために仕事をある程度こなすことが課題になっているのだ。

さて。仕事の提供元だがこの世界,冒険者というものが存在する。彼女らもその一端である。学生の間は冒険者に仮登録し授業で相手にしたものを売るという決まりになっている。

何故仮登録するのか,という疑問に関して答えるとすればある種の安全管理の為である。

本職の冒険者とは自分の才能を過信しすぎた所謂ナルシストの集まりに過ぎない。そうなると人を蹴落としてでも自分を評価したいというものは一定数…いや。大半がそうなのだ。

その対象になるのは学生もそう。登録をする時その者の魔力から何までを登録することになるので蹴落としがあった時,獲物の横取りの時の防止線になる。完璧とは言えないが。

正直なところそれ以外に対処のしようはない。小賢しい連中ばっかりで何より数が多い。対処しきれないのだ。これで減らせても約6割にしか減らないというのは本当に面倒だ。


『そ。ま,死ぬんじゃないよ。』


その面倒をルカはよく知っている。母と父にまだついてまわっていた時両親がそいつらにたかられているのを見た事がある。人を殺してまで高みに登ろうとする獣達だ。

国の良い小間使いになっているとも知らずこんな獣。と思ったのが良い思い出だ。

たかった結果はご察しの通り英雄様にはコテンパンにやられていた。

一言だけでも心配の言葉をかける。自分で思うのと他人から言われるのでは訳が違う。だからルカは決して茶化すことなくリカの目を真っ直ぐと貫くかのように見据え鋭く言葉で貫く。


『分かってる。』


そんな姉を無視することが出来ない,いや。飛んだ猿でもなければ誰でも出来ないだろうがリカはルカを見つめ返し答える。魔物より獣より”失敗作”より人と括られる生物がいちばん怖い。





『ごめん。お待たせ。』


『おそいよー!』


弟と言葉を交わす間ナギがそそくさと用意をしていてくれたので話していた割にはしたくは早く済んだが来たという知らせを受けてからの支度だ待つ側としては遅いと言われても仕方がない。

ルカの声を聞いた金髪に毛先が青みがかった緩いツインテールを揺らしハツラツとした少女が彼女へ一言文句を言う。


『…遅かったね。寝坊?』


少しばかり遅れて黒髪のロングの少女はルカへ言葉を投げかける。その少女はどこか気疲れしていそうで哀愁漂っている。


『いいや。今日は徹夜。面白い本見つけて。それで遅れた。今度なんか奢るわ〜。』


素直に徹夜なことを認め遅れたことへの謝罪の品なんて硬っ苦しいものでは無いが待たせてしまったことへの対価を提示するをよくこの会話をしているようでルカは迷わず何かを奢るという選択肢をとった。


『鹿はあの星がいい。』


黒髪の少女の後ろからもう1人鹿の角を生やしたその少女より幾分か背丈があるが顔は瓜二つの少女が顔を出す。


『えー!鹿ちゃんいっつも貰ってるじゃん!ミナミちゃんは街のケーキがいい!』


『…ルカちゃん。ミナミちゃんも鹿もこうは言ってるけど気にしないでいいよ。そうだと思ってみなみちゃんと相談して時間より早く来たから。』


きゃいきゃいと楽しげに言い争いを始めた鹿とミナミと呼ばれた金髪の少女を横目に黒髪の少女,月祈キセキがそういう。


『ううん。ミナミが言うことも鹿が言うことも叶えさせて。申し訳ないから。』


ルカは首を横に振り月祈の言葉を断る。ルカは昔からやると言ったら揺るがない頑固なところがあるのでそれ以上言い詰めることなく月祈はそっか。とだけ言い引き下がる。


『もー!…あ!そうだ。ルカ〜さっき弟くんが”失敗作”?って言ってたけどあれってなぁに?』


『ああ。あれはうちの”洗脳者”とか”創造物”の言い換え。お父様が語呂が悪いしそれでいいんじゃね?って。言いやすいし使ってるの。』


洗脳者や創造物というのは生物生成と洗脳の才能を持つものたちが作り出した魔物のようなものだ。才能は運動と同じように最初から全てができる万能なものでは無いので彼らの失敗作が生まれ捨てられることが多々ある。

それらが運が良いのか悪いのか捨てられた先で再起動してしまい徘徊するのが”洗脳者”や”創造物”だ。どちらも知能が極度に低く時たま才能がまだある者もいるがほとんどゾンビと変わりがない。

違うのはまだ”生きている”ことである。


『鹿もその失敗作とやらなのか?』


『…鹿は,思考するし自分の才能があるでしょ。それに…私はあいつらみたいにたくさん作れない。』


ルカの言葉にポツリと鹿が突拍子もないことをつぶやく。その言葉に月祈は慣れたように答える。

月祈の才能は”クローン””宇宙”の大きく2つであり彼女はこの世界のエリート中のエリート。”クローン”はその名の通りクローンを作り出すことだがそのクローンは自律的に思考し自身の才能を持っている。”宇宙”は銀河を模倣たものを攻撃防御補助に転用できたり自然を操ることが可能なもの。一言で言えばバカ強い。だが”失敗作”とは違い作り出し完全に独立するのでその辺のやつとは同じにできない。


『そーだそーだミナミちゃんと同じ強さの失敗作がいてたまるか!』


そう騒ぎ立てるミナミもエリート。才能は”水支配””マーキング”である。どちらも強力すぎるものではあるが”マーキング”は特に凄まじい。一度攻撃を与えたもの,知っているものを覚えそれに必中させる才能だ。説明を受けたルカもミナミの親でさえ原理はよく分からないが猫の匂いつけのようなものだとは言っている。

そんな能力がありバンバン使えるものと”失敗作”なんて言うその辺にゴロゴロ転がっている奴らが同じとなれば世界は崩壊まっしぐらだ。


『ま。今日は何処まで行くの?なんにも聞いてないけど。』


話をくるりと変えながらルカは彼女達を別視点から見つめ始める。

ミナミはルカに面白そうだからとくっつき月祈はルカをある意味の人よけとして使っている。どちらもルカを利用しているだけに過ぎないがルカも彼女達がいることで学園の中で立っていられる。エリートに囲まれる無能なんて竜に囲われた狼のように軽率に手を出せない。

互いにこう来て利用しあっていることは理解している。

だからこう呼ぶのだ。彼女らは



あたしの親友だ。

御閲覧ありがとうございます!


本日の新規の登場キャラです。


ナギ(アインツィヒの従者)24歳。契約した人間。

才能→物質生成


ミナミ・アイラット(ルカの親友)15歳。ハイエルフ。

才能→水支配,マーキング


四季月祈(ルカの親友)16歳。人間では無いらしい

才能→クローン,宇宙


鹿(月祈のクローン)年齢不明。クローン

才能→不明

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