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エンジェルメディア  作者: lou
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朝の当たり前

初めまして。lou(るー)です。

衝動的に書きたくなり初投稿になります。

物語を本格的に書くのは初めてですが精一杯頑張らせていただきます。

才能。

それは不確かなものであり,また人類が追い求める希望である。生まれながらにして適応対象があり,それを見つけ突き進められたものを天才という。

なんとも面白おかしい話だ。


【メディア】

生きていれば一度は聞く単語だろう。意味は手段や媒体といったものを持つ。この世界では異能を扱う為の媒体全てを指す。

普通の”才能”であれば媒体は手。または目。


【才能】

この世界では親からの遺伝が100%現れる。

努力の天才はおらず,ただいるのは天才から生まれた天才の子。凡人と天才の間に生まれる平凡でもなく天才でもない中途半端な子。

そんな才能。





今回はただ,ほんの朝の話をしよう。


本革のローファーを履き,高らかな足音を立てて西洋の大正ロマンを写しこんだような街を闊歩する。人気は少なく,そこを歩いているのはルカ・アインツィヒのみだとでも言えよう。


まぁ,それも当たり前。いまこの時間大多数の才能ある人々は仕事へと活力を出しその身を削っているのだから。言わば,労働者達。ルカが通っているこの場所もそんな労働者達が多く住み昼になりかけている今ここにいるわけもない。


いるとしたら夜間の仕事を終え,つかの間の休息を謳歌しているものか

今日という何でもない日を至高の一日,休日としているか才能がなく手に職を与えて貰えなかった奴らである。手に職を与えて貰えなかったものは例外無く家から追い出されるが為にそんなやつも見かけるわけが無い。

才能主義のこの世界だ。賃金も発生しないようなところで扱き使われるかそのへんで野垂れ死んで散るのがいい所だろう。


さて。そんな労働者達が汗水をたらして働く中ルカは一体何をしていよう。短く世間で言うウルフカット風に整えられた白髪を揺らし鮮やかで純粋に綺麗な赤い瞳は四方八方に視線を飛ばすことなくぼうっと行先を見据えている。格好はこの世界の学生のそれでこんな時間には浮いて仕方がない。

短い白い髪はチラチラと光を反射し所々白銀に見える。


『…あぁ,どっちだっけ…』


真っ直ぐと強く主張しない表情で道を進めば分かれ道に当然出会う。やはり人は居ない。

少し鼻に神経を集中させれば微かに肉と香辛料が焼けた匂いや,生臭い魚の匂いが漂ってくる。流石労働者の巣食う場所,いや。住宅街と呼んだ方が早いか。粗雑な家では無くチラホラ装飾が豪華めな家やこだわったような作り方をしている家もあるためここはただ住むための土地が集まった場所なのだろう。

考え方をかえれば少し嗅ごうとした程度で匂いが感じとれるほど近くに店があるからここに家があるのかもしれない。疲れきった体で長距離を帰りたくないのは誰だって同じことだ。

ポツリと力のない声で呟いてから変な思考をやめる。


『学校だから…この匂いの方じゃない…はず』


勘と嗅覚という不確かなものを頼りにルカは匂いが漂ってきていた方向とは逆方向に進む。功を奏したかやっと見慣れた場所に出てきたらしくルカの足取りからは僅かな迷いが消え気持ちばかり足早になる。

ローファーの足音がコツコツコツコツとどんどんと速くなり時折足幅が大きくなったり疲れからか速さに緩急が着く。


『ルカ。』


真っ直ぐと前ばかり見ていたからだろうか緩急が着いた足は予期せぬ声に止まる。ルカの名を呼んだものはルカが気付かぬうちに追い越した人物らしく後ろから声をかけていた。鋭利なガラスで刺すかのように嫌悪が入り交じった声であった。

ただその声は異性で嫌悪の声のはずなのにスッと耳に入ってくる。何故ならばその声は日頃浴びせられ名を呼ばれている声だからである。


『なんの用。弟。』


そうルカは振り返ることなく吐き捨てる。名を呼ぶではなく家族としての立場で声をかけた彼のことを指す。

此方も嫌悪がまじる。当たり前だ。露骨に嫌悪されれば誰だって嫌悪し返すものだ。それこそ聖人でもなければ許すことは出来ぬことであろう。


『何をそんなに急いでるんだ。お前は落とすものも何も無いだろ。』


吐き捨てられた言葉。微かに急がなくても良いなどという気配りの言葉に聞こえるのは気のせいだろう。

彼がルカの心配など気配りなどするわけが無い。


『お前には関係ないだろ。』


またルカも言葉を吐き捨てる。互いに交わされるお前という呼び名、それは圧倒的な嫌悪を示し彼らの良好とは言えない関係を示している。

ルカは吐き捨てる言葉と共に鋭い眼光を彼に向ける。関わるな,そう言いたげであり彼はその眼光に僅かにひるむが臆せず小さな舌打ちを打つ。


『ふん。』


舌打ちを耳にすればルカは鼻を笑うかのように鳴らす。馬鹿にしているようで彼を見下しているかのよう。

目に見えて才能のある彼。魔法だって,剣だって2個上のはずのルカより優れている。優れていると言われている。中等部1年と3年という差があるルカ達は確かに比べられ、才能で判断される社会であるが故にルカが虐げられる。だがだからといって家族間での力関係が変わる訳では無いが。


『これだから才能のあるやつは』


ポツリと口が自然と動くようにまでなった言葉をつぶやく。

ルカは才能が嫌いだ。才能で判断するものが嫌いだ。才能のない自分が嫌いだ。両親は必ずあると言い聞かせてくるが才能が開花するのが二,三歳。活発的に活動を始めみつかりはじめるものだ。彼もまた見つけにくい才能であったが強力であった。故に彼女はもっと期待された。されてしまったのだ。

才能才能才能才能。

ウザったらしい。


『は?』


ルカが吐き捨てた言葉に彼は悪態を着く。才能がなんだ才能なんてという姉が。才能のあるやつは。なんて才能を嫌うやつが才能で人を判断している。そんなの変だ。

普段から聞いていた言葉で同じ反応をし続けているのだから反射で出た言葉。反射で示す態度。

家族に対したものにしてはあまりにも粗雑で心から嫌いなものに向ける言葉にしてはあまりにも愛がこもった声である。


『なんでもない。』


そう言葉だけを見れば撤回しているかのような言葉を吐き捨てルカは歩を進める。同じ方向に進むのだ少しばかり来て欲しくないなぁ…なんて意地っ張りが故に起こされる言葉が浮かび上がってくる。

そんな不安も杞憂に彼はルカの進行方向と真反対へ進んでいく。彼が進む方向には別の道があるし流石姉弟同じことを考えていたのだろう。自身の足音の奥に僅かに聞こえてくる彼の足音が予想より速く遠ざかっていくのにルカは安心感を覚える。


ルカは進む。歩き馴染んだ道に見慣れた景色。そして

見慣れた豪勢な建物

白に統一され所々にはめ込まれたガラスは光を反射し瞳をつんざくよう。目が痛いほどに綺麗で何故こんなにも豪勢な建物に自分が向かっているのかが分からない。

あの建物へ向かう大半のものは才能が世間に認められている学生であるのだから胸を張って堂々としていられるだろう才能が認められるどころか見つけられてさえいないルカは向かっている理由がない。

嗚呼。こんなにも

《英雄の娘》でいるのは枷になるのだ。


『何時間遅刻するおつもりで?…と。毎日言っているように思えますが?アインツィヒ息女。』


赤髪のツインテールを揺らし学生服を身につけない小さな女の子が彼女に近づく。赤髪の彼女は慣れたようにルカへ言葉を呆れたように吐く。

低い身長を誤魔化したいように足にはめられた高いヒールの靴に見た目と少しばかりちぐはぐな大人びた服の彼女。

アインツィヒ息女というのはルカのことでありアインツィヒはルカの両親が僅か2年にして作り上げた貴族の家だ。

爵位は子爵。

さほど高くは無いが現代の英雄である為に様々な方向に顔が利きおまけにお人好しな両親が助けた人たちからの御礼金もあり3世代は遊んで暮らせると言うほど。

そんな恵まれた家庭で何が枷か。

それは両親と姉弟である。両親は言わずもがな才能が有り余るほどあり弟でさえ全ては受け継がずとも少し変異した強力な才能をもちあわせている。

そんな家族だからだ。両親は気にしなくていいと言うがそれでも世間からの目が痛い。周りの貴族からの期待が重い。

才能がない、見つからない期間が長ければ長いほど期待も視線も強く重く痛くなる。


『別に構う必要ないでしょう。先生。』


息が詰まりそうになる。息女。そう呼ばれるだけでアインツィヒであるだけで止まりそうになる言葉を必死に押し出す。

大丈夫。ルカだ。まだルカで居られる。才能のない愚図で居られる。

それでいい。

先生と呼ぶルカの言葉。今目の前にいる赤髪の彼女は背丈に見合わぬ職を持つのである。

教師,それは成人したものが持つ職であるはずなのに見た目は実に10に満たない。

この世界ではよくあることだ。才能主義の世界,言い換えれば実力主義の世界なのだ。飛び級なんてしばしば。

それこそ国の長になるものが5つであったこともあったくらいだそもそも珍しいことなんてこの世界で少ない。そういう才能がある人がいると言えば全て完結だ。目の前の彼女でさえ錬金術の生物を生み出す才能があり天才。名前は…覚えていないがこいつも嫌いだ。


『関係ありますよ。貴女が出席しないと貴方のご両親から凄まじい圧を学園長が受けるのですから。ま。私関係ないのですけれども。

一校時くらい出席して下さいね。登校してきた事は褒められたことです。よく頑張りました。ルカさん。』


こいつだって好きで私に構っているのでは無い。そう分かっていながらも毎度の事ながら口癖かのように吐かれる決まった言葉に苛立ちを覚える。此処で襲えば勝てるだろうか。もっと酷く荒れていた時期はそんなことさえも考えた。

くるりと踵もスカートも翻して学園へ戻る彼女を視線の先に置きルカは思考し全く別,ひとつの疑問にたどり着く。

どうしてこんなにも褒められる行為に暖かさを感じるのだろうか。不思議でならない。

なんせ普段からずっと可愛い可愛いと褒められ伸ばされ続けた家だ。こんな日に一度の投げ出し掛けの言葉に何を見出すか。訳が分からない。


『はいはい。せんせ。』


此方にもう興味を失った彼女と思考を背に受けルカは気だるげに声を出す。


『ほんとに来ますよね?』


ルカの声に彼女は少し振り返ってルカに言葉を投げかける。最早お約束とまでも行きそうなくらい日に何度も言われる言葉。多い時は30分に1度ほど色々な人に言われた。合計10回だったか。

最後は既に言葉を予測できてさえいたしなんなら何回まで行くのか期待さえしていた。自分がどう思われているかしみじみ実感した日であった気がする。覚えていないが。


『行くってば。これ以上成績落としたら母様にドヤされる。』


午後の授業くらいでなければいくら両親の権力があろうとも既に崖っぷちな人生がより崖っぷちになってしまう。それだけは避けなくては母親に,あの温厚で故意に腕を切り落とされても怒らなさそうなくらい優しくて温厚で笑顔が素敵な母親に。

物理的な雷を落とされてしまう。この年で死にたくは無いので最低限で回避したい。


『あの方に怒られるってどれだけですか…』


ルカの言葉を聞いては時間が止まったように彼女は振り返ったまま固まる。大方普段のルカの母親の様子からは想像がつかなさすぎて何回かルカの母親を脳内で再生していたのだろう。

英雄になる戦いの時でさえ周りの人間にどれだけ場が張り詰めていようとも明るく接していたのだ。そりゃ怒るとこなんか想像出来っこない。殴るとこは想像つくが。


『…私のサボり魔のせいだね。私のせいじゃない。』


そんな冗談と共にルカは彼女について学園に入る。


この先の話はいつか機会があれば。

御閲覧ありがとうございます!

一応登場キャラ追加設定です。

ルカは15歳

リカ(ルカの弟)は13歳

ルリ(ルカ達の母)年齢不明。混血のフェンリル。獣人。

リオ(ルカ達の父)年齢不明。混血の吸血鬼


リリカンナ・ヴァルシュ

(赤髪の教師)年齢不明。純血の吸血鬼


です!


連載になる予定です!

以上!louよりお届けしました!

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