第九十五話
「さて甘いお菓子も食べたことだし、そろそろ運動するかのう」
紅茶のカップを置いた義母の目はギラギラしている。獲物を狙う目になっているのだ。
義母は昔から腕試しを好む。
城に籠もっていることがほとんどのため、運動という名の腕試し(ストレス解消)をしたがる。
問題は自分の装備が蟻の魔王との戦いでほとんどが使い物にならないこと。
ローレライは義母の運動の意味をあまり分かっていないようだ。
「蟻の魔王との戦いで装備がほとんど壊れてるんですが?」
装備の整っていない自分の防御力は、雷龍王からすれば紙切れに等しい。
「装備が無くとも何とか出来るじゃろ?」
うわあ・・・このパターンはガチンコでやる気だ。
「全力で来ても構わんぞ。あと加勢もOKじゃ」
義母のニタニタ顔がちょっとムカつく。
「怪我しても知りませんよ」
そう言って給仕しているマーサに声をかける。
生クリームたっぷりのパイが食べたいからすぐに用意しておくように頼む。
ローレライはやっと雷龍王の意図に気付いたようだ。
「ローレライは見物してて。母さまは子どもの成長を見たいだけだから」
椅子から立ち上がろうとするローレライを制止させ再度座らせる。
「少しでも傷つけたり、この位置から動かせたらスノウの勝ちにしようかの」
義母は明らかに自分を舐めている。龍王の皮膚(鱗)は生半可な武器じゃ傷をつけられない。
さらに自分の装備がほとんどないため、傷をつけることは出来ないと思っている。
さてどうするか。その位置から動かせたらいいんですよね。
「勝ったらご褒美ありますよね?」
「構わんぞ。好きな物を宝物庫から持っていけ」
最近宝物庫に入ってないから楽しみだ。
マーサが生クリームたっぷりのパイを持ってきてくれた。
スプーンで一口、うん・・・超甘い。
「さて、そろそろ始めます?」
義母に確認する。
「いつでも来るがよい」
雷龍王は手招きしている。
じゃあ驚かせてやりますか。
「パーフェクトワールド(完璧な世界)」
自分以外の世界は止まる。雷龍王も例外ではない。
雷龍王の座っている椅子を魔力念糸で持ち上げて、テーブルから離す。
離した後にすぐに解除する。時間をかければかけるほど魔力が湯水の如く流れてしまうから。
「えっ・・・」
義母の驚いた顔が楽しいことになっている。
「テーブルから離れてますけど、ご馳走様ですか?」
さっきのお返しとばかりにニタニタして仕返す。
「何をした?」
義母はかなり警戒している。
「秘密です。教えたら面白くないでしょう」
指を口元に持ってきて、ウインクする。
ローレライとマーサも何が起きているのか分かっていない。
時が止まった世界で、直接触って解除しない限りこの世界では動けない。
「ちょっとは成長したでしょう?母さまは生クリーム好きでしたっけ?」
スプーンに生クリームを盛る。
「甘い物は何でも好きじゃ。そこじゃない」
ツッコんで口が開いた瞬間に再度パーフェクトワールドを使用する。
口の中に生クリームを盛ったスプーンを魔力念糸で突っ込んで、戻した瞬間に解除する。
「この生クリーム甘いですよね」
口の中に生クリームが入っていると思わず、蒸せる義母。
何をされたかわからない。
目つきが息子を見る目から、明らかに敵視の目になっている。
ちょっとやり過ぎたようだ。
皆さんこんばんは。神戸からの疲れが取れてきました。
神戸は都会で楽しかったです。ドキドキしました。好きなことができる環境にいる上の子が羨ましいです。
自分もいつかは小説で食べて行けたら素敵なんだろうと思っています。
この小説が5万PV越えていました。読んで頂いた全ての方に感謝します。
また投稿したいと思います。よろしくお願いします。




