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第八十六話

「少し触るよ」

そう言って胸の呪紋に指で優しく触れる。


「うっん」

普段聞いたことないマーサの声にドキドキしてしまうが、煩悩を抑えて今は集中する時。


雷龍王が直接付けた呪紋は、人族が付ける呪紋とは格が違う。

この世界の神と同格とされる存在が付けたもの。神の呪いそのもの。

運が良いのは自分が雷龍王の加護を持っていること。

解呪を試してみる。

雷龍王の加護に反応して胸の呪紋が浮かび上がる。呪紋の1カ所が心臓に根付いていて離れない。

生命に直接繋がっている?無理に呪紋を剥がすとそのまま死ぬだろう。


『思ったより呪紋の根が深い。雷龍王の怒りの凄さがわかるわ』

自分の中にいる神が冷静に話す。

マーサは雷龍王の暗殺に失敗したが、きっと義母を怒らせる何かをしたのだろう。

華奢な体なのに何をしたのか今度聞いてみたい。


『生きている呪紋?命に寄生するタイプと思っていいわ』

加護の力で呪紋を解呪しようとするが、糸一本くらいで繋がっていて離れない。


「生きている呪紋か・・・」

自分の中で悪い考えが思いつく。

自分に寄生させたらどうなる?

加護を持っている自分は少なくとも雷龍王の庇護下、眷属扱いではないか?


『もしかしたら呪紋を自分に移そうとしてない?失敗したらマーサの代わりに囚われる。私も消えるかもしれない・・・』

自分の中の神が意気消沈している。

失敗のデメリットが大きすぎるのだ。


「強欲と呼ばれたからにはマーサの全ては貰う。それが呪紋であっても」

ゆっくりと浮かび上がった呪紋を自分の心臓に近づける。


「心配しなくていい。一蓮托生だから」

マーサに向けたものだったのか、自分の神に向けたものか分からない状況だったが呪紋から触手のようなウネウネしたものが出てきた。

自分の心臓を次の宿主として細部を観察するように絡みつく。

次の瞬間、マーサの心臓から呪紋が離れた。


「パーフェクトワールド(完璧な世界)」

自分の周囲の生命あるもの全ての時を止める。

呪紋が生き物なら時が止めれる。

賭けに勝った。


『使うなら相談しなさい。3秒よ』

焦る神の声が嬉しそうだ。

3秒で充分。

魔力念糸で心臓に巻き付いていた触手を剥がして、そのまま呪紋を玉状に凝縮する。

3秒経った頃には自分とマーサの前には呪紋を閉じ込めた玉が出現する。


「いけたか?」

驚愕の表情をしたマーサの顔を見たら上手くいったのだろう。


「胸の呪紋が消えている。解呪できないはずなのに」

マーサの意見は正しい。

加護の力を使っても、予想以上の雷龍王の怒りの呪いが強すぎて解呪は出来なかった。

解呪ではなく移す選択肢をした。


『今度から本当に相談しなさい。心臓に悪いわ』

神に心臓があるのか分からないが、全身ビリビリの刑が少し心地よい位なのは神からの感謝かもしれない。


「これでマーサは俺のもの。良いよね?」

ほっとして力が抜けてしまった。負担が強すぎたのか、体に力が入らない。

マーサに倒れ込んでしまう。


「私は貴方のものですよ」

耳元で嬉しそうなマーサの声を聞いてブラックアウトした。


皆さんこんにちは。明日から札幌に行く予定なので小説書いてました。

実は今回の話は3回書き直ししてます。1~2回目の話が薄すぎてボツにしました。

納得できる小説のために仕方ないのですが、毎回ごめんと言いながら消してます。

小説を書くことでストレス解消もしています。これからもよろしくお願いします。

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