第85話 進化の代償
休眠状態のスノウは、ベッドの上でローレライに守られていた。
ここは二人だけの世界。
ローレライはスノウを独占できる、隣にいる幸せを噛みしめていた。
残念なことは、いまだに意識が戻らないことだ。
早く戻って来て欲しい、抱きしめて欲しい。
もう五日は過ぎた。そろそろ彼は戻ってくるかもしれない。
鑑定スキルを使って体調管理をしているが、休眠状態以外のバッドステータスは出てこない。
今日もまだ目覚めないのかしらと、スノウを見ると明らかな異常が起きていた。
スノウの体から、見たことがない鎖が全身に巻き付いている。
鎖に巻き付かれた場所は急激に痩せている。
鑑定結果。
虚弱状態、魔力による拘束、魔力の吸収……明らかに体のサイズが縮んできている。
この鎖は何?
鎖は獲物を捕食する植物の蔓のように絡まっている。
普通の休眠状態じゃない。
「何が起きているの?」
見たことがない状態、痩せてきた体に触れて回復魔法を使う。
マナポーションを飲んで、スノウに口移しをする。
体のサイズが一瞬元に戻るが、再度縮んでしまう。
虚弱の進行が止まらない。
「まずい、1人じゃ止められない」
この状態がどのくらい続くのかわからない。
守ると言ったのに、いつも気丈なローレライも愛する人の異常な状態に耐えることが出来ず泣き出してしまう。
「誰か、誰でもいいから助けて」
弱音を吐いてしまうくらい目に見えてスノウの虚弱が進んでいる。
このままだと干からびてミイラ化してしまう。
「スノウ、お腹減ったぁ」
精霊ソエルの間の抜けた声が聞こえる。
スノウの横に出てきたソエルの姿は、自分の知っている小さな幼い精霊の姿ではない。
魅力的な女性、上級精霊を越えた存在に感じる。
彼女も休眠状態だったのか。
いまは彼女に見とれている場合ではない。
「彼を助けるために手伝ってください!!」
ローレライの緊急事態を伝える声に、はっとして素のソエルに戻る。
「何が起きている?」
干からびていくスノウの異常状態を見て、すぐに回復魔法、魔力の委譲を始める。
「彼が休眠状態になると言うことで保護していました。さっきから急激に虚弱の状態になって、一人じゃもう止められなくて」
ローレライが取り乱し泣いている。
ソエルはスノウの命が危険に晒されていることに気付く。
「大丈夫、落ち着きなさい。私たち二人なら救えるわ」
ローレライとソエルの二人になったことで、スノウの進行が緩やかになった。
そして徐々に元の姿に戻っていく。
全身に巻き付いていた鎖も、スノウの体の中に少しずつ戻っていく。
「ローレライ、私の口に何か食べ物をちょうだい。少しの時間なら私一人でも耐えれるから。」
腹が減っては戦が出来ぬ。
休眠状態が終わって、寝起き状態なのに。
スノウに甘える予定だったのに。
彼が戻ってきたら、ずっとくっついて困らせてやろう。
進化しても、小悪魔なソエルは健在だった。
85話です。
皆さんこんにちは。用事を済ませて、やっとこの時間に投稿出来ました。
往復ですが、車の運転を約八時間くらいしてます。この後、お昼寝します。
明日の投稿はお休み予定です。次回は月曜日です。よろしくお願いします。




